腸内環境

『「腸の力」であなたは変わる』で現代病予防。

「腸の力」であなたは変わる

今回はデイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ氏の『「腸の力」であなたは変わる』(白澤卓二訳 三笠書房)を現代病予防のために取り上げたいと思います。

近年、100種類・100兆個以上の腸内細菌の集まりである「腸内フローラ」のバランスを整えることは、肥満など生活習慣病をはじめとして、うつやアトピー、自己免疫疾患、炎症性腸疾患など様々な病気を予防したり、症状を改善したりするのに効果的だということが分かってきました。

このことに関して、デイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ氏の『「腸の力」であなたは変わる』(白澤卓二訳 三笠書房)を読んでみると、そこには「腸内フローラ」を改善することが現代病の予防と症状の緩和につながることの「真実」が書かれているように感じられます。

 

 私たちの腸に住む細菌は免疫機能、解毒、炎症、栄養の吸収、炭水化物や脂肪をどのように利用するかなど、さまざまな生理行動に作用している。これらすべてのプロセスは、アレルギー、ぜん息、ADHD、がん、糖尿病、認知症などにも強く影響する。

『「腸の力」であなたは変わる』 p17

 

私たちの体には腸管だけではなく、顔や皮膚、口腔など、からだの隅々に見えない微生物が常在菌として生息しています。その常在菌と遺伝子、ヒトとの相互作用は「マイクロバイオーム」と呼ばれていますが、この「マイクロバイオーム」についてデイビッド・パールマター氏は以下のように述べています。

 

 マイクロバイオームは気分や性欲、代謝、免疫、さらには認知力や意識の明瞭さにまで影響する。また、太っているか、やせているか、精力的か無気力かを決めるのにもひと役買う。
簡単にいえば、感情的にも身体的にも、われわれの健康に関することはすべてマイクロバイオームの状態で決まるということだ。
そしておそらく、体の他のどの部分よりも、脳ほど腸内細菌の変化に敏感なものはないだろう。

『「腸の力」であなたは変わる』 p17~18

 

さらに腸内フローラやマイクロバイオームを健康にすることは、 以下のような症状に効果をあげるとしています。

 

  • ADHD(注意欠如・多動性障害)
  • ぜん息
  • 自閉症
  • アレルギーと食べ物への過剰反応
  • 慢性疲労
  • 気分障害(うつ病、不安障害を含む)
  • 糖尿病
  • 慢性の便秘または下痢
  • セリアック病、過敏性腸症候群、クローン病を含む腸疾患
  • にきびや湿疹などの皮膚のトラブル
  • 口臭、歯周病、歯のトラブル

( 『「腸の力」であなたは変わる』 p19~20より一部抜粋)

 

また腸内フローラの働きについては、

 

  • 栄養の消化と吸収を助ける。
  • 悪性の細菌(有害菌)、有害ウイルスや有害寄生虫などの侵入者に対して、自然のバリアを構築する。泳げるように毛髪状の糸を持つ細菌もいる。この糸は「鞭毛」と呼ばれ、胃に入ってきた致命的なロタウイルスの侵攻を防いでいる。
  • 「解毒器」として機能する。腸内の細菌は感染症の防止と、腸内に侵入する多くの毒素に対する防衛線の役割をになう。腸内細菌は食物とともに体内に入ってくる多くの毒素を中和するので、第二の肝臓ともいえる。拡大して解釈すれば、腸内の善玉菌を死滅させてしまうと、肝臓の負担を増やすことになる。
  • 免疫系の反応にいい影響を与える。意外なことに、腸は体内で最大の免疫系器官である。さらに腸内細菌は特定の免疫細胞をコントロールして、体が自分の組織を攻撃する自己免疫を防ぐことで、免疫系統を助ける。

( 『「腸の力」であなたは変わる』 p35~36より一部抜粋)

 

などを挙げています。

 

そのほか、腸内フローラには「体内ではたらく重要な酵素や物質、ビタミンや神経伝達物質を含む「脳に必要な物質」を生成して放出する」、「内分泌腺(ホルモン)のシステムへはたらきかけ、ストレスをとりのぞく力をつける」、「良質の眠りをうながす」、「さまざまな慢性疾患につながる「炎症」が伝わる経路を制御する」といった働きもあると言います。

 

反対に腸内フローラやマイクロバイオームの働きを低下させる要因についても、デイビッド・パールマター氏は『「腸の力」であなたは変わる』のなかで挙げています。

それは「腸内の細菌群を殺したり、その構成を悪化させたりするような物質に接触すること。環境化学物質から食べ物(砂糖、グルテン)、水(塩素など)、抗生物質のような薬品などに至るまで、すべてが含まれる」、「善玉菌の栄養を不足させ、悪玉菌が好む状態にすること」、そして「ストレス」という「3つの敵」です。

 

体内の「炎症」は多くの現代病の原因

体内の「炎症」は多くの現代病の原因

また、腸内フローラが悪化してしまうと、体内に「炎症」がひき起こされやすくなり、そのことが現代病(特に脳と関係しているアルツハイマー病、自閉症、ADHDなど)を引き起こしている原因になっているとデイビッド・パールマター氏は述べています。

 

 炎症とは体の回復反応の重要なはたらきで、免疫活動を傷口や感染箇所に集めるためのものだ。
だが炎症が長引き、体内に深く残れば病気を発症する。実際にそれは、肥満、糖尿病、がん、うつ病、自閉症、ぜん息、関節炎、冠動脈疾患、多発性硬化症、さらにはパーキンソン病、アルツハイマー病などさまざまな症状に見られる。

『「腸の力」であなたは変わる』 p68

 

そしてこの炎症を引き起こす原因として主に挙げられているのは、「「リーキー・ガット(腸管からの漏れ」と呼ばれる腸の透過性の問題」や「グルテン」などです。

さらに「炎症に火をつける犯人」としては「リポ多糖類=LPS」を挙げています。

この「 LPS(リポ多糖類)」とは「脂質と糖質の合成物で、ある種の細菌の外壁になる主要な構成要素」であり、「腸内細菌が胆嚢から分泌される胆汁酸塩によって消化されてしまわないように守っている」そうなのですが、「このLPSが動物の血流に入ると、激しい炎症反応を起こすことが以前からわかっている」と言います。

 

リーキガットは炎症がひき起こされてしまう原因のひとつ

デイビッド・パールマター氏はこのLPSが 「リーキー・ガット(腸管からの漏れ)」 によって体内に侵入し、「体内の炎症経路に火をつける」ことを指摘しています。

そしてこの炎症がひき起こされてしまう原因のひとつに、以前の記事で取り上げた「リーキー・ガット症候群」を挙げています。

 

 「 リーキー・ガット(腸管からの漏れ)」 と呼ばれる腸内の透過性の問題を聞いたことがあるかもしれない。それは、この一〇~一五A(オングストローム)の長さの、密着結合の能力の問題のことを指す(オングストロームとは非常に小さい単位であり、典型的なウイルスや細菌よりもはるかに小さい)。

もし、このゲートキーパー機能(出入り口の見張り)が正常に作動していなければ、「通していいもの(栄養)」と「阻止すべきもの(危険な可能性のあるもの)」を正しく監視できず、漏れてはいけないものが漏れだしてしまう。

これまで述べたように、炎症が増えることで体は浸食されやすくなり、さまざまな病気を引き起こしやすくなることがわかっている。

関節炎リウマチ、食物アレルギー、ぜん息、湿疹、セリアック病、炎症性腸疾患、HIV、嚢胞性繊維症、糖尿病、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、などだ。

『「腸の力」であなたは変わる』 p78~79

 

また、デイビッド・パールマター氏によれば、この「リーキーガット」は脳に対しても問題を引き起こすことがあると言います。

 

 リーキーガットの弊害はまだまだある。最新の研究では腸の状態の低下による炎症の発生は「漏れやすい脳」につながる可能性があるとわかってきたからだ。(略)

脳には、悪いものを遮断する高度に強化された関門がある。これを「血液脳関門」と呼ぶ。

この関門は脳に危険をもたらす恐れのあるものは、すべて入らないように遮断する壁だと長く考えられてきた。

しかし細菌、血液脳関門の完全性を脅かす多くの物質があり、問題を引き起こす恐れがあるさまざまな分子、たとえば通常は遮断されるべきタンパク質やウイルス、細菌でさえも中に入れてしまうことが明らかになった。

環境により、毒性を持ちうる侵入者から身を守る、脳の力が徐々に低下するのだ。

『「腸の力」であなたは変わる』 p80

 

氏は「リーキーガット」は関節炎リウマチ、食物アレルギー、ぜん息、湿疹、セリアック病、炎症性腸疾患、糖尿病といった病気を引き起こす原因になるとしていますが、さらに「リポ多糖類=LPS」 などが腸管からの漏れによって体内に侵入し、脳にも悪影響を与えるとしているのです。

そのため、「リーキーガット」とうつ病や自閉症、ADHD、アルツハイマー病といった病気との関連性も本書のなかで指摘しています。

 

「グルテン」もリーキーガットを引き起こす

さらに、この「リーキーガット」が起こる原因として、小麦や大麦に含まれるタンパク質の「グルテン」や消化不良などを『「いつものパン」があなたを殺す』のなかで挙げています。

それに加えて、小麦や大麦、ライ麦などに含まれているたんぱく質「グルテン」についても、

 

 グルテンの「ベトベト」は、栄養素の分解と吸収を阻害する。それが食べ物の消化不良につながり、免疫系に警鐘を鳴らし、やがて小腸の壁を攻撃する結果となる。
グルテンに過敏な人は、腹痛、吐き気、下痢、便秘、腸の不調を訴える。だがこうした消化器系のトラブルの症状が表に出ない人も多い。それでも体のどこかに静かな攻撃を受けているのだ。

『「腸の力」であなたは変わる』 p227

 

と、腸内環境に対する悪影響を述べています。

そのため、様々な現代病を予防するためには、これから「リーキーガット」や「グルテン」に注意していくことが必要になってくると思われます。

 

今日から始める腸内フローラ改善

 今日から始める腸内フローラ改善

デイビッド・パールマター氏が『「腸の力」であなたは変わる』のなかで述べていることは、私たちの腸内フローラやマイクロバイオームは、栄養バランスの乱れやグルテンの過剰摂取などによって変化し、多くの現代病をひき起こしやすくしているということだと思われます。

また一般的に腸内フローラの構成は新生児の時に決まるとされているため、腸内フローラやマイクロバイオームの健康という観点からすれば、 抗生物質の乱用や不必要な帝王切開は避けるべきだと考えられています。

 

では、それらの要因によって一度バランスが乱れてしまって腸内フローラは、これから良い方向に変化することはないのでしょうか?

デイビッド・パールマター氏はこのことに関しては悲観する必要がないとして、以下のように述べています。

 

 マイクロバイオームは私たちの環境に応じて絶えず変化していく。

呼吸する空気、触れる相手、服用する薬、接触する汚れや細菌、摂取する食物、さらには思考にまで応じて変化する。

自然分娩で生まれ、六ヵ月以上、母乳を与えられて育ったとしても、現在マイクロバイオームが健康だということではない。

同様に、帝王切開で生まれ、人工栄養で育っても、健康管理を続け、イキイキと人生を謳歌している人もいる。どちらもありえるのだ。

( 『「腸の力」であなたは変わる』 p306)

 

さらに「食べ物」によっても腸内フローラは変えられるとしています。そして「基本のカギ」として

  1. プロバイオティクス
  2. プレバイオティクス
  3. 発酵食品
  4. 低炭水化物
  5. グルテンフリー
  6. 体にいい脂肪

を挙げています。

 

気持ちのいい腸内環境をつくる6つのカギとは?

腸の力であなたは変わる

デイビッド・パールマター氏は 「最新の研究にもとづく、健康なマイクロバイオームをつくり、維持するための六つの基本的なカギ」として、以下の6つを挙げています。

 

  1. 「プレバイオティクス」が豊富な食品を選ぶ
  2. 炭水化物を減らし、良質の脂肪をとる
  3. ワイン、紅茶、コーヒー、チョコレートを楽しむ
  4. 水道水は濾過して飲む
  5. 季節ごとに断食する

 

また腸内フローラを改善するための方法として代表的な「プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など、体にとって良い働きをする菌が含まれた食品)」については、

 

  • 生菌入りヨーグルト
  • ケフィア
  • キムチ
  • ザウアークラウト
  • ピクルス
  • 紅茶キノコのお茶(コンブチャ)
  • テンペ
  • 発酵調味料
  • 発酵した肉、魚、卵

 

といった食べ物が良いとしています(ただし、店頭で買う場合は、食品添加物などに気を付ける必要があると注意を促しています)。

 

さらに「プレバイオティクス(食物繊維など善玉菌のエサになる成分が含まれた食品)」に関しては、

  • 生のニンニク
  • 生の西洋ネギ
  • 生のタマネギ
  • 調理したタマネギ
  • 生のアスパラガス
  • アカシアガム(アラビアゴム)
  • 生のチコリの根
  • 生のキクイモ
  • 生のタンポポの歯

といった食材が「天然のプレバイオティクスを多く含んでいる」と述べています。

 

加えて、「ワイン、紅茶、コーヒー、チョコレートを楽しむ」ことに関しては、

 

 ワイン、コーヒー、チョコレートは適量を、紅茶はお好きなだけ楽しんでいただきたい。

これらには腸内細菌の健康を支える最高の「天然薬」が含まれているのだ。

植物は、外敵などの攻撃から身を守るために、抗酸化物質のポリフェノールの一種、フラボノールを生成する。

これは人間の食べ物にもっとも豊富に含まれる、強力な抗酸化物質だ。

心血管疾患、骨粗しょう症、がん、糖尿病、または神経変性疾患の予防における、ポリフェノールは詳細な研究が進められている。

食事にポリフェノールを加えると、酸化ストレスのマーカーが大幅に減少し、神経疾患のリスクが低下するという複数の研究結果がある。

食物から摂取できるおもなポリフェノール源は、果物や野菜と、コーヒー、赤ワイン、紅茶などの植物由来の飲料、それにチョコレートだ。

『「腸の力」であなたは変わる』 p295

としています。

 

そのほか、「腸内細菌と一緒にはたらくことで、健康でバランスのとれた腸内フローラの維持に役立ってくれる」栄養成分・サプリメントとして、

  • DHA
  • ターメリック
  • ココナッツオイル
  • アルファリポ酸
  • ビタミンD

を、また、腸内フローラやマイクロバイオームを悪化させるものとしては、グルテンや果糖(異性化糖・人工甘味料)のほか、

  • 抗生物質
  • ピル
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
  • 遺伝子組み換え食品
  • 環境化学物質

を挙げている点は興味深いといえます。

 

以上、ここまでデイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ氏による『「腸の力」であなたは変わる』を取り上げてきました。

この本の内容を全て日本人の腸内環境に当てはめるのは難しいかもしれませんが、本書は、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善していくことが様々な現代病を予防したり、症状を緩和したりすることにつながるという可能性を示唆しているように思います。

また、デイビッド・パールマター博士がコメントを寄せている『すべての不調をなくしたければ除菌はやめなさい』(ジョシュ・アックス 著 藤田紘一郎 監訳 文響社)という一冊と併読するのもオススメです。

 

 

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