植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』で旅するように変幻自在な生き方。

植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』で、旅するように変幻自在な生き方。

きみと地球を幸せにする方法

令和の時代の真の幸福実現のために、今回は、植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』(集英社)という一冊をご紹介したいと思います。

 

「これから一般的には常識と思われていない考え方が、今後の社会を生き抜くうえでもっとも必要とされるということを、さまざまな例を通して考えてみたいと思っています」

とはじめに書かれている、宗教人類学者の植島啓司氏による、『きみと地球を幸せにする方法』は、2015年に集英社から知のトレッキング叢書として出版された一冊ですが、贈与やシェア、ネオテニー(幼形成熟)、旅などについて書かれていることが、これからの社会や経済、幸福な生き方を考えるうえで、非常に面白く、興味深いです。

 

「ぼくは一年のうち二〇〇日は旅をして過ごしています。居所不明になるのが好きで、でも、ちょっとでもおもしろそうな集まりがあるとすぐにどこからか駆けつけてきます。」

という、植島啓司氏の本は、これまで『偶然のチカラ』(集英社新書)や『運は実力を越える』(角川新書)などを読んだことがありましたが、非日常と偶然に魂を賭ける植島啓司氏の考え方から学ぶことは多いですし、近頃は、氏の生き方そのものにも、私自身、どこか共感するようになってきました。

 

特に、この『きみと地球を幸せにする方法』においては、「第一章 贈与する人々」で、

「「もらう」側の僧たちはほとんど無表情で、「あげる」側の人々は感謝の気持ちでいっぱいになる」

といった、ラオスにおける托鉢(たくはつ)のような、「「もらうよりあげる」社会がいくらでもある」ことを知らされたことが印象的でした。

 

 托鉢を目に見えるもの(物資・食料)と目に見えないもの(心の安寧)の交換という応報システムとしてとらえることもできるが、それよりも「もらう」より「あげる」ことを第一義に考える社会があると考えたほうが、ぼくらには納得しやすい。というのも、仏教では、「自分がやった善行がそのまま自分に返ってくる」というような短絡した考え方をしないからである。むしろ、善行が災いとなって戻ってくることだってある。そんなことすべてを織り込み済みのまま、ぼくらの社会は動いてきたのである。

(「第一章 贈与する人々」 植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』 p30~31)

 

植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』

さらに、植島啓司氏は、本書『きみと地球を幸せにする方法』のなかで、

「これからは従来とは異なり、できるだけ何も持たず、分かち合い、自由に、みんなと友好的な関係を持つことが理想的な生き方となるのではないか」(p24)

としたうえで、以下を列挙しています。

 

「交換」に対しては「贈与」
「財産」に対しては「シェア」
「拒絶」に対しては「歓待」
「必然」に対しては「偶然」
「成熟」に対しては「未成熟」「幼形成熟」
「自己」に対しては「他者」
「攻撃」に対しては「親和」
「税金」に対しては「寄付」
「理性」に対しては「感情」
「憎悪」に対しては「祈り」

 

そして、「交換」「財産」「成熟」「憎悪」など、

「上の欄の言葉は現在のわれわれの社会を通底している考え方である。」

のに対し、「贈与」「シェア」「未成熟」「祈り」といった

「下の欄の言葉は、どちらかというと日本人にはなじみ深いものであって、われわれの社会を何百年、何千年にわたって支えてきた原理ともなっている。」

としていることは、これからの日本人の幸福を考えるうえで注目に値します。

 

旅をしている時のように臨機応変、変幻自在で柔軟な生き方が毎日を幸せに生きるコツ。

旅をしている時のように臨機応変、変幻自在で柔軟な生き方が毎日を幸せに生きるコツ。

もちろん、高度経済成長期の以前(昭和から平成)だったら、この本で述べられていることは、多くの日本人にとっては、絵に描いた餅であり、机上の空論だったかもしれません。

しかし、地震や津波、台風など、多くの自然災害に見舞われることで、日々の生活の根底(地盤や土台)が簡単にゆらぐ昨今においては、贈与やシェアなど、この『きみと地球を幸せにする方法』に書かれていることが当たり前でスタンダードになっていくことこそ、幸福度が低いとされているこれからの日本社会が「出口なし」の状況にならないようにするための、解決の糸口であるように感じられます。

 

 なにも首尾一貫していることだけが賞賛されることではない。あらゆる場所や境遇においてそれなりの生き方ができるということのほうがすばらしい。あるときには厳密な仕事ぶりを示し、あるときには酔っぱらって浮かれ、あるときにはその姿が見えないほど節制してつつましく暮らし、あるときには女に溺れて快楽に身を焦がす。そんな生き方ができる人間こそあらゆる排他性や自己中心主義をまぬがれるのではなかろうか。いくら矛盾があったとしても、そんなことはどうにでもなることだ。どんな状況下でも自分に固執するというのはおそらく間違っていると思う。

(植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』 p166)

 

そして、植島啓司氏が書いているように、一貫した自己や合理性にこだわらず、その場その場でスタイルを変える、旅をしている時のように臨機応変、変幻自在で柔軟な生き方が、価値観が目まぐるしく変化する時代において、毎日を幸せに生きるコツなのだとも思うのです。

 

 そもそも旅をするということは、自分自身、日常から離れて「弱者」になるということを意味している。そこではつねに「あれをしてもいいのか、これをしてはいけないのか」と考えざるを得ない状況だ。相手に「身を委ねるか」または「支配するか」、降りかかる困難と「戦うか」または「逃げるか」。そこでは、自分の国や社会にいれば何も考えずにすむ厄介ごとが次々と降りかかってくる。いつも相異なる二つの基準のなかで生きること、折り合いをつけること、それはわれわれの精神にとってもっとも本質的な働きと結びついているのかもしれない。生きることは決まったレールの上を進むことではない。しかも、あれかこれかではない。あれもこれもだ。多様性の受容。

(「第四章 歓待する人々」 植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』 p159)

 

理想の地球像は、人工集約的な都市と野生のジャングルとの対比から生まれることになる。国家の壁はいつの間にか消滅していって、無数の共同体が結び合って社会を運営していく。それが可能になれば、人間中心主義の呪縛は解かれ、地球は再生し、いっぱいの緑に包まれた美しい地球が息を吹き返すことになるだろう。そんな未来をぼくは夢見ている。

(「第四章 歓待する人々」植島啓司『きみと地球を幸せにする方法』 p183)

 

 

 

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