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今回は『病気が教えてくれる、病気の治し方 スピリチュアル対症療法』という本を、病気とは何かを考えるためにご紹介したいと思います。
『病気が教えてくれる、病気の治し方 スピリチュアル対症療法』(トアヴァルト デトレフゼン、リューディガー ダールケ 著 シドラ房子 訳 柏書房)は、病気とは何か、ということを考えるために有益な一冊だといえます。
病気とは何か、ということの答えを単純に示すのは難しいかもしれませんし、自分が重い病気にかかって苦しい思いをすると、病気をなるべく早く遠ざけようとすることで、病気のつらい症状から解放されたくなるものです。
ところが、健康に対して、「病気」を悪い物や敵だと見なしているうちは、本当の「健康」から遠ざかってしまうということを、この本は、教えてくれるのです。
(ちなみに副題に「スピリチュアル対症療法」とありますが、神様にお願いしたり、宇宙エネルギーと共振したりすれば、どんな病気でも治すことができるといったような内容が書かれているわけではありません)。
では、本書『病気が教えてくれる、病気の治し方』は、病気とは何か、ということを考えるために、どのようなことを教えてくれるのでしょうか?
本書には「病気とは両極性であり、治癒とは両極性の克服である」とありますが、基本的には、心の領域における「調和」が乱れ、健康か病気か、といったように、どこか偏りが生じた際に、病気が生じてくる、というのが、本書の、病気についての捉え方だと思われます。
たとえば本書には、病気についての、以下のようなくだりがあります。
病気とは、意識内の調和が乱れていることを示す状態である。心の均衡がなくなると、症状となって体にあらわれる。症状とは、それまでの生の営みを中断させて注意を喚起する、いわばシグナルであり、メッセンジャーである。メッセンジャーとして症状は、心の内部の均衡がくずれたことを警告してくれる。(中略)
病人の意識ではかならずなにかが欠けている。なにも欠けていなければ健康である。欠けたものがあれば、健康ではない、つまり病気である。病気とは、症状として体にあらわれたものである。意識のなかに欠けているものを、症状として体にもっていると言えばわかりやすいだろう。
(トアヴァルト デトレフゼン、リューディガー ダールケ『病気が教えてくれる、病気の治し方』 シドラ房子 訳 p16)
病気の症状とは心のバランスが崩れていることを知らせるメッセンジャー。
引用文を読んだだけでは、あまりピンとこないかもしれませんが、病気の症状とは、体の内部に忍び込んだウイルスや有害物質によって起こるというよりも、心のバランスがどこか崩れているということを教えてくれるメッセンジャーであるわけです。
つまり、自分の心のなかに、精神的な葛藤や解決が難しい問題が生じていたり、物事を独断と偏見で眺めていたり、怖れによって見たくないものから目を背けたり、自らが背負うべき責任を回避したりしていると、何らかの症状が病気として現れてくるのです。
そういう意味で、本書『病気が教えてくれる、病気の治し方』の特徴は、病気は、細菌やウイルス、有害物質など、外因的なものによって単に生じるものではなく、むしろ精神的な領域と深く関係しているものだと、捉えていることだといえます。
影は人を病気にするが、影と出会うことで健康になる。これが、病気と健康を理解するポイントだ。症状はすべて、物質化した影である。つまり、意識のなかで体験したくないものを症状で体験するのである。症状は、体を経由して人間をふたたび完全にする。これは相互補完性の原則だ。意識のなかで特定の性質を拒むと、その性質は体におりて症状として出てくる。そのため、けっきょくその性質を体験して実現することになる。このようにして症状は人を健康にするのである。(トアヴァルト デトレフゼン、リューディガー ダールケ『病気が教えてくれる、病気の治し方』 シドラ房子 訳 p50)
症状を認めることが病気の克服への第一歩。
したがって、本書『病気が教えてくれる、病気の治し方』による病気を克服し、病気を治癒に向かわせるためのヒントは、病気の症状から目を背けるのではなく、症状ときちんと向き合ったり、症状を受け容れたり認めたりすることにあると言えそうです。
症状のなかに自分に欠けている性質を見つけたら、症状を好きになればいい。自分にないものを実現してくれるのだから。症状が早く消えることばかりを願っているようでは、コンセプトを正しく理解したとはいえない。症状は影の性質を実現する。ここがポイントだ。症状を認めれば、症状は必要なくなる。症状にあらわれた性質を理解すれば、症状は消えるのだ。これは見ることによってのみ可能になる。
(トアヴァルト デトレフゼン、リューディガー ダールケ『病気が教えてくれる、病気の治し方』 シドラ房子 訳 p300)
以上ここまで、『病気が教えてくれる、病気の治し方 スピリチュアル対症療法』という本を、病気とは何かを考えるためにご紹介してきました。
本書は、内容は少し難しめかもしれませんが、生活習慣病や慢性疾患、膠原病などに悩まされている方が増え続けている近年において、病気になることを単純に悪いことだと捉えないようにするためのヒントや、病気についての「気づき」がたくさんつまっている一冊だといえます。
また、心と体は密接につながっており、心の領域へのアプローチが病気を治癒に向かわせてくれるということも存分に教えてくれます。
さらに、第二部においては、「病気の症状と解釈」として、
- 感染症
- 消化
- 頭痛
- 皮膚
- 腎臓
- 心臓と血液循環
- 運動器官と神経
- 事故
- がん
などが、挙げられています。
この第二部では、様々な病気の症状と、精神的な問題・心の葛藤がどのように関係しているか、具体的に解説されており、大変興味深い内容になっています。そのため、ご自身の症状と本書に書かれている内容を照らし合わせてみると、何らかの思い当たることがもしかしたら心に浮かんでくるかもしれません。