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今回は前回に引き続き、『糖尿病は〝砂糖〟で治す! 甘いものに目がないのは正しかった』(﨑谷博征 著 鉱脈社)という本をご紹介しながら、でんぷんと糖質制限の問題について考えてみたいと思います。
前回の記事でも述べましたが、パレオドクターである﨑谷博征医師の『糖尿病は〝砂糖〟で治す!』は糖尿病のことだけではなく、「健康の場」という視点から砂糖(ブドウ糖・果糖)によるエネルギー代謝の重要性について述べている一冊です。
糖尿病の原因は砂糖ではないという記述も興味深いのですが、実際に通読してみると、糖類をカットし、タンパク質や脂肪をエネルギー源にする糖質制限健康法の問題点や、近頃のケトン体ブームなどについても考えさせられます。
また、「糖」を摂取する場合、ご飯やパン(でんぷん質)ではなく、なぜブドウ糖と果糖のバランスが良い砂糖やハチミツ、果物でなければいけないのかもわかってきます。
ちなみにストレスを感じた際、「甘い物」が欲しくなりますが、この「甘い物」とはブドウ糖と果糖で構成された砂糖やハチミツ、フルーツのことであって、決して人工甘味料や異性化糖のことではありません。
特に果糖に関しては、摂り過ぎると痛風の原因になるなど、巷の健康本を読んでいると悪者扱いされていることが多い印象ですが、本書のなかで﨑谷博征医師は、
- 「果糖(フルクトース)は、糖よりも熱産生、二酸化炭素(CO₂)産生が高いことが分かっています。さらに糖よりも糖代謝を促進し、脂肪の酸化・燃焼(=シックネス・フィールドでの代謝)を防ぎます。つまり、糖よりエネルギー代謝を高める物質なのです。」
- 「果糖(フルクトース)は、酸化ストレスに対する耐性を高める」
としています。
一方、デンプン質に対しては、
・反応性低血糖を引き起こす(インシュリンの大量分泌)
・小腸をすり抜けて、小動脈を詰まらせる(パーソープション)
・エンドトキシン(内毒素)を増やして、肥満や炎症反応を引き起こす
(﨑谷博征『糖尿病は〝砂糖〟で治す!』p160)
としており、糖質摂取源としては推奨していません。
したがって、本書の内容を糖質制限に活かす場合、ご飯やパンといった炭水化物・穀物ではなく、十分な量の糖類(ブドウ糖と果糖)を砂糖やハチミツ、フルーツなどから摂るようにすることが大切になるのです。
『糖尿病は〝砂糖〟で治す!』で、糖質制限やケトン食ダイエットを見直してみる。
また、﨑谷医師は「病気の場(sickness field:シックネス・フィールド)では、糖は不完全燃焼に終わってしまうか、あるいは糖以外の脂質(脂肪酸)、タンパク質(アミノ酸)を燃料としています。」としている通り、巷の糖質制限健康法の、糖質の摂取を控える代わりに、タンパク質と脂肪をエネルギー源にするという考えは認めていません。
そのあたりの詳しい理由について気になる方は、本書を『糖尿病は〝砂糖〟で治す!』を実際に読んでみていただきたいと思いますが、本書の内容は、近年、流行している糖質制限やケトン食ダイエットを見直すのにも有益であると思います。
ちなみに本書では理想的な糖質の供給源として、砂糖(スクロース)、ハチミツ、フルーツ、フルーツのピューレ、アガベシロップが挙げられています。
現実的には、これらの食品だけから、糖質を摂取するというのは難しいように感じますが、1日の糖質の必要量をこれらの食品から摂取するのは無理だとしても、プーファ(多価不飽和脂肪酸)を減らしつつ、デンプン質を含む穀物を例えば1~2食分減らし、代わりに、砂糖やハチミツ、フルーツなどから糖類(ブドウ糖と果糖)を摂るようにすることはこれからの糖質制限として可能であるように思います。