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日頃のネガティブ思考には、親の「不適切養育」による「発達性トラウマ」が関わっている可能性があるということについてはご存知でしょうか?
前回の記事では、ストレスに負けないメンタルが免疫力の低下を防ぐということについて述べました。
ところで、不安や後悔など、慢性的なストレスによってあれこれと考えすぎてしまうと、脳はそのことで余計にエネルギーを消耗してしまい、結果的に免疫機能をきちんと働かせるためのエネルギー(≒ ATP)が足りなくなり、そのことで免疫力の低下につながってしまいます。
ではなぜ、不安であれ後悔であれ、ポジティブな記憶はすぐに忘れ、ネガティブな思考ばかりに苛まれてしまうのでしょうか?
そもそも、「ネガティビティ・バイアス」という心理学用語があるように、一般的に人はポジティブな情報よりもネガティブな情報の方に注意を向けやすく、なおかつ記憶にも残りやすいと言われています。
その理由の一つとしてよく挙げられるのは、狩猟採取時代においては、脳が身の回りに潜む様々な危険を簡単に忘れることなく、ネガティブな情報をいつまでも記憶していることが、(自然災害や感染症など)危険と脅威に満ちた環境の中で生き延びるために有利に働いたという説です。
つまり生き延びるために脳が進化していった名残(なごり)で、家族旅行や学校行事など、過去の出来事を想い起した時、楽しかったことよりも、恥をかいた記憶やつらい思いをした記憶の方が優先的に思い出されるというわけなのです。
ほかにも、親や教師や上司にほめられた記憶はなかなか思い出せず、反対にこっぴどく叱られたことはいつまでも憶えているものですし、働いている間は、99%はきちんと業務をこなしているのに、1%のミスの方ばかりを気にしてしまうのもよくあることです(私自身がそうでした💦)。
「不適切養育」による「発達性トラウマ」も慢性ストレスの原因になる。
しかし、ネガティブな情報の方がポジティブなものよりも優先されるというのは脳の性質であり、個人の性格というよりは進化の過程で人類に共通していることだとしても、どういうわけか他の人よりも日常生活のなかでストレスを感じやすく、ストレスを長期化させやすい場合があるのも確かだと思われます。
それはなぜでしょうか?
その理由の一つとして考えられるのは、親の「不適切養育」などによる「発達性トラウマ」の問題です。
このことについては私自身、実は思い当たるふしがあるのですが、この「発達性トラウマ」について、『その生きづらさ、発達性トラウマ?』のなかで著者の花丘ちぐさ氏は、以下のように述べています。
発達性トラウマとは、子どもの成長過程で起きてくるトラウマのことです。専門的には、幼少期の慢性的トラウマによって生じる心身の不具合のことを「発達性トラウマ障害」と呼びます。発達性トラウマについては、不適切養育や、虐待が原因になることもありますし、自身の病気、事故、医療処置、家族の病気や事故、自身や家族の長期にわたる入院や、家族に特別な世話を必要とする人がいるなど何らかの理由によって、親からの十分な愛情を受けられなかった、など、さまざまな原因が考えられます。
花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』 11頁
また「不適切養育」については、
不適切養育とは、文字どおり、不適切な子どもの育て方です。子どもにとっては、おっぱいを飲ませてもらったり、お風呂に入れてもらったり、おしめを変えてもらうなどのお世話をしてもらうこと、「安全である」と感じさせてくれるやさしい働きかけがあること、成長の過程で、適切なお手本を示してもらうことなどがとても大切です。そうしたことが適切に行われていなかった場合、不適切養育となるおそれがあります。
とし、さらに、以下のように述べられていることは傾聴に値します。
不適切養育では、殴る蹴るなどの暴力やレイプなどの性的加害行為を行うわけではありません。しかし、毎日毎日家の中で否定的な働きかけが行なわれることによって、いつのまにか自己肯定感が低くなり、自責の念を抱き、人とうまくやっていくことができなくなっていくのです。
花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』 48頁
一方で、殴る蹴るなどのようなはっきりとした虐待行為はなかったとしても、子どもの価値を下げるような暴言や精神的な暴力が継続的に行われると、子どもは心に傷を負うことが明らかになってきました。
同

『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』 花丘ちぐさ 著 春秋社
「不適切養育」とは「日常のなかで繰り返される子どもへの不適切な関わりあいのこと」。
「不適切養育」とはすなわち、「日常のなかで繰り返される子どもへの不適切な関わりあいのこと」であるのですが、花丘ちぐさ氏によれば、このような不適切養育によって発達性トラウマを抱えてしまうと、片頭痛やストレス性皮膚炎、目まいや耳鳴り、喘息、高血圧や低血圧、アレルギーなど、様々な健康の問題も生じてくるといいます。
また感覚が過敏であったり、けがをしやすかったり、トラブルに巻き込まれたりすることもあるといいます(1)。
ちなみに「愛着障害」や「発達障害」「コミュ障」などと他人から安易にレッテルを貼られたり(もしくは自分で判断したり)、生きづらさや原因不明の体調不良を抱えたりしている場合も、実は発達性トラウマが関係しているかもしれないと思われますし、「自分は駄目なヤツだ」と自己肯定感が低かったり、失敗するたびに罪悪感にとらわれやすかったりする場合も、幼少期の不適切養育が関係している可能性は十分考えられます。
すなわち、普段からどういうわけか他人よりもストレスを感じやすく、落ち着くことが出来ずにイライラしやすい・カッとなりやすいなど、自分の心をうまくコントロールすることが難しいという場合は、「不適切養育」による「発達性トラウマ」が原因としてあるのかもしれない、ということをこの記事ではお伝えしたいのです。
注釈
1 『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』 花丘ちぐさ 著 春秋社
不適切養育によって発達性トラウマを抱えてしまった人たちは、さまざまな健康の問題を抱えます。たとえば、片頭痛、ストレス性皮膚炎、めまい、耳鳴り、喘息、高血圧、低血圧、過敏性腸症候群、腰痛、関節痛、免疫性疾患、婦人科系疾患などがあります。また、アレルギーや、触覚、聴覚、視覚などが過敏になる感覚過敏などを持つ傾向性もあります。さらに、いつも神経系が過剰に警戒モードに入っているにもかかわらず、肝心なときには凍りついてしまうため、けがをしやすかったり、とっさのときに言い返せなかったり、「ノー」と言えずに搾取されてしまったり、トラブルに巻き込まれたりすることもあります。(95頁)
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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