人生100年時代、お金をかけずに健康長寿を目指してみませんか?
当ブログでは真の健康と幸福について考えていますが、今回は、ストレスとアンチエイジングと慢性炎症の関係についてです。
人生100年時代といわれるようになった昨今、お金をかけずに健康長寿を実現するためには、「ストレス」との向き合い方が大切になってきます。
では、そもそも「ストレス」とは一体何なのでしょうか?
ストレスとは分かりやすくいえば、外側からかけられた圧力によって、私たちの生体にひずみやゆがみが与えられることですが、誰もがよく口にしたり、聞いたりするこの「ストレス」という言葉は、実はカナダのハンス・セリエという科学者が1930年代に提唱した「ストレス学説」から来ています。
ちなみに、体がストレスを感じると、自律神経系からノルアドレナリンやアセチルコリンといった神経伝達物質が放出されたり、副腎皮質や副腎髄質からコルチゾールやアドレナリンが分泌されたりして、ストレス反応に対処しようとします。
このことは「闘争か逃走か」という、ストレスに対する生体の適応現象です(ストレス応答)。
そして「視床下部―下垂体―副腎」の反応によってコルチゾールが分泌されるストレスシステムは「HPA系」と呼ばれています。
この「HPA系」について精神科医のアンデシュ・ハンセン氏は、「HPA系というのはたった1つの器官でできているのではなく、身体と脳にある3つの部分が互いにコミュニケーションを取っているシステム」であると述べています(注1)。
ストレスを感じる度にストレスホルモンである「コルチゾール(コルチコイドの一種)」が分泌されますが、このコルチゾールには体内のエネルギーを同動員したり、炎症反応を鎮めたりする役割があります。
そのため「コルチゾール」が分泌されることは悪いことではないのですが、長期的なストレスによって過剰に分泌されると、コルチゾールは海馬などの脳の神経細胞に(細胞死をもたらすといった)悪影響を与えてしまう可能性が生じてきます。
したがって問題となるのは、何がストレスの引き金になるのかは人それぞれですが、お金や人間関係についての悩み事が絶えなかったり、自分の将来に対して不安を感じることが多かったり、もしくは過去に負った心の傷を癒せないでいたりすると、脳は常に危険を察知し、「HPA系」のストレスシステムが働き続けてしまうことです。
また騒音や悪臭、有害化学物質といった環境問題が「脅威」として身近に存在し、いつまでも気持ちが休まらないでいることも長期的なストレスの要因になります。
そしてこのような長引くストレスは「老化」と関係する「慢性炎症」を引き起こす原因になるといわれています。
「慢性炎症」については他の記事で詳しく述べましたが、「炎症」とは、細菌やウイルスに感染した時や怪我をした際に起こる生体の反応のことで、一般的に「火事」に例えられるような、体にとっての異常事態のことです。
炎症が起きた体の部位では、腫れや痛み、発熱などが起こります。そしてそのからだで起きた炎症に対して、火消し役として対処するのは私たちの体内に備わっている免疫システムです。
そして時間の経過とともに治まる炎症は「急性炎症」と呼ばれています。
一方、同じ部分がだらだらと炎症を起こし続けている「慢性炎症」というものがあります。
この「慢性炎症」が起こる要因は、ストレスや睡眠不足、座りっぱなしの生活、加工食品や環境汚染物質など、現代のライフスタイルであると言われています。
そしてこの慢性的な炎症反応が実は老化を引き起こすと考えられているのです。
このことについて医学博士の熊沢義雄氏は、『ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい』のなかで、
「老化細胞による慢性炎症」は、「酸化や糖化、病原細菌などによる刺激で起こる炎症ではなく、細胞そのものの老化によって起こる炎症」であるとしています。
また「老化細胞は、普通の細胞のように死なずにからだの中で長時間存在し続け、周囲に炎症性サイトカインなどを分泌してしまう」うえ、「加齢とともに体内に蓄積していき、老化はもちろん、さまざまな病気を引き起こす原因になっていると考えられています」と述べています。
ではなぜ細胞が老化するのかといえば、その要因としては、加齢以外には「ストレス」が挙げられます(注2)。
ちなみにここでいう「ストレス」とは主に、自分では自覚できない、フリーラジカルによって体の中がサビついてしまう「酸化ストレス」のことを指します。
ストレス → 慢性炎症 → 老化
つまり、自然に年を重ねていくことで老化細胞が増えていくことは仕方がないことですが、ストレスが多いことによって、シワやシミ、白髪が増えるなど、通常よりも早く老け込んでしまうことは十分考えられます。
すなわち加齢以外で無駄に老化してしまうことを防ぐためには、例えば「運動」や「瞑想」などによって、日頃のストレスをケアすることが必要になってくるのです。
また、「ストレス」というとネガティブな印象を抱きがちですが、あえて、逆境ともいうべきストレスに立ち向かい、生き延びようとすることも、健康長寿とアンチエイジングの秘訣なのです。
注1 『ストレス脳』 アンデシュ・ハンセン 著 久山葉子 訳 新潮新書
私たちの身体の中で最も中心的なストレスシステムはHPA系と呼ばれ、その存在は生物の歴史を何千万年も遡ることができる。HPA系を備えているという点では、人間も背骨をもつあらゆる動物――サル、イヌ、ネコ、ネズミ、トカゲ、そしてなんと魚まで――と同じなのだ。
HPA系というのはたった1つの器官でできているのではなく、身体と脳にある3つの部分が互いにコミュニケーションを取っているシステムだ。まず視床下部(H=hypothalamus)が脳の下部にある分泌器、下垂体(P=pituitary gland)へとシグナルを送り、さらに下垂体から副腎(A=adrenal glands)にシグナルが送られる。すると副腎がコルチゾールというホルモンを放出する。コルチゾールの役割はエネルギーを動員することだ。例えば朝はコルチゾールのレベルが上がるのだが、それはベッドから起き上がるためにエネルギーが必要だからだ。しかしコルチゾールはストレスを感じている時にもレベルが上がる。ストレスを受けるとHからPそしてAへシグナルが送られ、コルチゾールのレベルが上がるのだ。と言うと単純に聴こえるかもしれないが、実際のHPA系は非常に複雑だ。フィードバックのループがいくつもあり、自分で自分にブレーキをかけることもできる。というのも、コルチゾールのレベルが上がると視床下部と下垂体の活動が抑えられる。コルチゾールはつまり自分自身にブレーキをかけ、ストレスホルモンとしても抗ストレスホルモンとしても機能する。これが車であれば、同じペダルがアクセルとブレーキ両方の役割を果たすようなものだ。アクセルを踏みすぎると今度はブレーキがかかるというわけだ。
(167‐168頁)
注2 『ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい』 熊沢義雄 著 青春出版社
細胞は、一定の分裂増殖を繰り返したあとで分裂を停止しますが、近年、こうした細胞を「老化細胞」と呼び、老化細胞の蓄積が人の老化の主な原因と考える「細胞老化説」が提唱されるようになってきました。
この老化細胞は、普通の細胞のように死なずにからだの中で長時間存在し続け、周囲に炎症性サイトカインなどを分泌してしまうのです。
老化細胞は加齢とともに体内に蓄積していき、老化はもちろん、さまざまな病気を引き起こす原因になっていると考えられています。
最終的には、この老化細胞も死を迎えるのですが、その際、大量のサイトカインなど内容物を流出させてしまうため、まわりの細胞に悪影響を及ぼし、さらに炎症が広がることになるのです。
(100‐101頁)
『お金をかけずに健康長寿 アンチエイジングの鍵は「ストレス」が握っている。』
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