ストレスで「イライラしやすい」と「発達性トラウマ」との関係とは? 『その生きづらさ、発達性トラウマ?』を読む2

トラウマ

ストレスで「イライラしやすい」と「発達性トラウマ」との関係とは? 『その生きづらさ、発達性トラウマ?』を読む2

『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』

普段から他人よりもどういうわけかイライラしやすいというにお悩みではありませんか?

この記事では、発達性トラウマによる生きづらさや慢性的なストレスによる体調不良を少しずつ解消していくためには、「腹側迷走神経系」の存在、そして「安心安全」が鍵となるということについて述べています。

 

前回の記事で述べたように、「不適切養育」による「発達性トラウマ」を抱えてしまうと、健康に何らかの問題が生じてきます。

しかし花丘ちぐさ氏の『その生きづらさ、発達性トラウマ?』によれば、その背景には、「神経系」、より専門的に言えば「ニューロセプション」(神経受容)の問題があるといいます。

この「ニューロセプション」とは、「周囲の環境や相手の様子などを無意識のうちに評価し、その状態に合うように生理的状態を調整しているとされる」考え方で、ポリヴェーガル理論の生みの親であるステファン・ポージェス博士によって提唱されたといいます。(参考 花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』)

より分かりやすくいえば、私たちが「つねに周囲の状況が安全か否かを感じ取り、判断している」仕組みのことで、危険や脅威を察知した時に、闘うか逃げるか(もしくは凍り付くか交流するか)、など「考え」を通さずにとっさに選択する、無意識下の判断・反応のことであると考えられます。

 

慢性ストレスによる体調不良を少しずつ解消していくための鍵となるのは「腹側迷走神経系」。

慢性ストレスによる体調不良を少しずつ解消していくための鍵となるのは「腹側迷走神経系」。

花丘ちぐさ氏は『その生きづらさ、発達性トラウマ?』のなかで、「不適切養育や、その他の要因で発達性トラウマが生じると、子どもの神経系が変化してしまう」と述べています。

「赤ちゃんは、お母さんから穏やかに見つめられたり、やさしい声を聞いたり、気持ちよくタッチしてもらったりしながら成長」すると、「腹側迷走神経系がより発達していき、人の気持ちを汲んだり、人の顔色や声の調子からその人の様子を理解し、お互いに気持ちよく感じられるようにふるまう習慣が身について」いくといいます。

 

しかし、「もし赤ちゃんがこのときにお母さんから適切な対応をしてもらえなかったとしたら、赤ちゃんは、自分は「安全ではない」と感じ」、「自分に何か害を与える人がいるのではないかと感じて防衛的になります」としています(1)。

そして早期から不適切養育を受けると、心身を大切にする方法がわからず、健康行動がとりにくくなることが知られているといいます(2)。

 

また花丘氏が、

不適切養育を受けると、心は愛情飢餓で苦しく、つらさでいっぱいになります。こうした焦燥感や自責の念、激しい怒りなどを抱えていると、仲間からやさしい言葉をかけてもらっても、居心地が悪く感じたり、イライラしたりします。

とし、

仲間からやさしい言葉をかけてもらっても、居心地が悪く感じたり、イライラしたりします。仲間と暖かい交流をすることによって穏やかに自分の心を調整していくことができません。腹側迷走神経系が十分に発達していないために、自分の中にオーケストラの指揮者がいない状態ですから、自分の状態を自分で調整することができないのです。

とも述べていることは傾聴に値します。

 

そして、

「腹側迷走神経系が十分に発達していないために、自分の中にオーケストラの指揮者がいない状態ですから、自分の状態を自分で調整することができない」

とあるように、心身の健康を維持していくうえで問題になってくるのは、副交感神経のうちの「腹側迷走神経系が十分に発達していない」ことなのです。

そのため、発達性トラウマによる生きづらさや慢性的なストレスによる体調不良を少しずつ解消していくためには、「腹側迷走神経系」の存在、そして「安心安全」が鍵となるのです。

 

『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』

『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』

 

注釈

1 『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』 花丘ちぐさ 著 春秋社

 不適切養育や、その他の要因で発達性トラウマが生じると、子どもの神経系が変化してしまうことがわかっています。赤ちゃんは、お母さんから穏やかに見つめられたり、やさしい声を聞いたり、気持ちよくタッチしてもらったりしながら成長します。このときに赤ちゃんは本能的に「安全である」と感じます。自分は歓迎され安全に過ごしていくことができるという、よいイメージを持つことができます。そうすると、腹側迷走神経系がより発達していき、人の気持ちを汲んだり、人の顔色や声の調子からその人の様子を理解し、お互いに気持ちよく感じられるようにふるまう習慣が身についていきます。自分も相手に心地よくなるような「合図」を出し、相手がそのような「合図」を出してくれているときは、喜んで受け取ります。そして、お互いに心地よくなるようなやり取りをすることができるようになるのです。安定したニューロセプションの機能が身につくと言ってもよいでしょう。

しかし、もし赤ちゃんがこのときにお母さんから適切な対応をしてもらえなかったとしたら、赤ちゃんは、自分は「安全ではない」と感じます。そうすると赤ちゃんの神経系は、安全を確認するために、つねに周囲に脅威を探すようになります。自分に何か害を与える人がいるのではないかと感じて防衛的になります。つまり、危険ばかりを探してしまうニューロセプションになってしまうのです。こうなってしまうと相手の気持ちを察したり、相手に気持ちよい思いをしてもらうためにどのような言動をとったらよいのかということを、学ぶことができません。そのような状態で成長すれば、人とうまくやっていくことが難しくなります。(85‐86頁)

 

2 前掲書

 早期から不適切養育を受けると、健康行動がとりにくくなるということも知られています。つまり、自分の身体を大切にするためにはどうしたらいいのかを教わる機会がないのです。そもそも健康行動のお手本を見せてもらっていないので、心身を大切にする方法がわかりません。家庭内に問題のある態度でアルコールを乱用している人がいたり、性的な逸脱があったり、心身への加害行為があったりすると、そこには健全なお手本がありません。自分を大切にするという発想すらないかもしれません。(100頁)

 

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪

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