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「肥満」であることに悩み、もっと痩せたいと思って、これまでいろいろなダイエットを試したけれど、結局うまくいかなかった、という方はいらっしゃいませんか?
今回は、ダイエットの成功の鍵は、腸内細菌のうちの<痩せ菌>を増やすことである、ということについてです。
世の中にあるたくさんのダイエット方法にチャレンジしてみては、失敗したという経験をお持ちの方は多いと思いますが、それもそのはず、実は、ダイエットの成功の鍵は「腸内細菌」が握っているのです。
ダイエットの成功の鍵は「腸内細菌」が握っているとは、具体的には、ダイエットは腸内細菌の痩せ菌を増やしてデブ菌を減らすことが効果的であるということです。
なぜなら、『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』(白揚社)などの書籍を読んでも分かる通り、ダイエットを成功させるために大切なことは、単に食べ物のカロリーに気をつけたり、運動量を増やしたりするのではなく、自分の腸にどのような腸内細菌が生息しているかであるということが、近年判明してきているからです。
ちなみに、この記事「ダイエットの成功の鍵は腸内細菌」のポイントは以下の通りです。
- ダイエットを成功させる確かな方法があるとしたら、それは腸内細菌の痩せ菌を増やしてデブ菌を減らすこと。
- 痩せ菌を増やすには食物繊維が特に重要。
- ヤセ菌ダイエットを成功させるためには、野菜や果物を中心に、地道に食生活や生活習慣を改善していくことが大切。
ダイエットを本当に成功させたいならば、腸内細菌に着目。
ダイエットを本当に成功させたいならば、カロリー制限にこだわるのではなく、私たちの腸内に生息する微生物である腸内細菌に着目することが必要です。
では、なぜ腸内細菌が重要なのでしょうか?
実は、痩せやすい体質や、太りやすい体質というのは、腸に生息する様々な腸内細菌の集まりである<腸内フローラ>が深く関係しているのです。
腸内細菌は食べ物の消化や吸収、代謝などに関わっていますが、例えば、肥満の人は「フィルミクテス(ファーミキューテス)門」の腸内細菌が多く、痩せている人は、「バクテロイデス門」や「ビフィドバクテリウム」、「アッカーマンシア属」の腸内細菌が多いとされています。
特に前者はデブ菌、後者はヤセ菌と呼ばれていたりしますが、同じ食事を摂ったとしても、デブ菌が多いと、食べ物の余分なエネルギーが再吸収されるに対し、痩せ菌が多いと余分なエネルギーはスルーされるのです。
つまり、特定の食べ物にはダイエット効果があると宣伝されたとしても、自分の腸内にどのような腸内細菌が生息しているかで、効果が違ってくるため、たとえ誰かがその食べ物を食べてダイエットに成功したとしても、自分が痩せられるとは限らないのです。
ダイエット成功の鍵は腸内細菌の痩せ菌を増やしてデブ菌を減らすこと。
すなわち、ダイエットは腸内細菌に注目することも重要なのです。
このことに関して、医学博士で寄生虫学が専門の藤田紘一郎氏は、
「長い間、私たちの常識ではカロリー神話が中心で、体重の増減は摂取カロリーで決まると考えられてきました。しかし、腸内細菌の働きが明らかになるにつれて、摂取カロリーだけでダイエットの成否が決まるわけではないことがわかってきました」
と述べています(参考『腸内細菌が家出する日』)。
また、藤田氏によれば、人工甘味料や食品添加物、抗生物質を体内に取り入れることによって腸内細菌叢(腸内フローラ)が変化することも、肥満の発症と関係していることが、海外の大学の研究で判明したそうです。
そして『ヤセたければ、腸内「デブ菌」を減らしなさい!』のなかで、
「デブ菌が腸内で優勢になると、わずかな食べ物からも大量のエネルギーを吸収する体になってしまいます。」
と述べています。
さらに冒頭でも挙げた『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』(熊谷玲美訳 白揚社)の著者であるティム・スペクター氏も、ダイエットと腸内細菌の関係について以下のように述べています。
カロリー摂取量が減っても、私たちの体は進化によるプログラムに従って、その状態に適応するだけのようだ。つまり、制限だらけの単調な食事制限をしても、脂肪を減らすまいという体からの信号がそれを無効にしてしまうらしいのである。それに加えて、しばらく肥満の状態を経験すると生物学的変化がいくつも起こり、食べ物に対する脳の報酬メカニズムや脂肪の蓄積が、維持されたり強化されたりするようになる。ダイエットのほとんどが失敗してしまうのは、こうした理由による。
(ティム・スペクター『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』 熊谷玲美訳 白揚社 p16)
現代の食生活を理解するうえで、多くの場合、微生物はきわめて重要だ。微生物は魅力的な新しい研究分野であり、体と食べ物の制限についての理解を根本から変えつつある。私たちは視野の狭い考え方にとらわれて、栄養や体重をエネルギーの摂取と消費という単純な現象とみなしてきたせいで、これまで腸内細菌を考慮してこなかった。しかしこのことが、ダイエットが不成功に終わり、栄養に関するアドバイスが役立たなかった主な理由だとしたらどうだろう?
(ティム・スペクター『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』 熊谷玲美訳 白揚社 p23)
食物繊維はヤセ菌を増やしてダイエットを成功させるために大切。
毎日どのような食べ物を食べているかで、私たちの腸内細菌叢(腸内フローラ)は個別に決まってきますが、では、どのようにしてヤセ菌と呼ばれる腸内細菌を増やしていけば良いのでしょうか?
最も簡単で有効な方法は、腸内細菌のエサである「食物繊維」が多く含まれた野菜や果物、海藻類などの食材を普段から多く摂るようにすることで腸内細菌のバランスを整えることです。
近年、日本人の食物繊維の摂取量は低下してきているといわれていますが、食物繊維をたくさん摂るようにすると、腸内フローラを構成する腸内細菌のうち、ヤセ菌である「バクテロイデス門」の腸内細菌が優勢になるため、太りにくい体質が作られやすくなると言われています。
また食物繊維が豊富な食品を多く食べることによって、バクテロイデス門などの腸内細菌が発酵を起こすと、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる脂肪酸が作り出されるようになります。
先ほどの藤田紘一郎氏も「どうも「やせ菌」というのは1種類に特定できるものではなく、食物繊維を消化して短鎖脂肪酸をつくっている菌が「やせ菌」となっているように思われます」と述べていますが、「短鎖脂肪酸」には、脂肪の蓄積を減らし、代謝を活発にして肥満を防いだり、糖尿病を直接的に改善する「インクレチン」を増やしたりする効果があるといいます(参考 『ヤセたければ、腸内「デブ菌」を減らしなさい!』)。
したがって、食物繊維が豊富な食材を摂ることで腸内細菌のバランスを整えて腸内環境を改善していくことが、ダイエットや肥満の解消のために大切だと考えられるのです。
大切なのは痩せ菌を増やすための生活習慣・食生活。
ちなみに食物繊維は水に溶けやすい水溶性のものと、水に溶けにくい不溶性のものがありますが、腸内細菌のエサになることで短鎖脂肪酸が作られやすいのは、水溶性の食物繊維だとされています。
しかしセルロースなどの不溶性の食物繊維も、腸内をキレイにしたり、便通を促したりする働きがあり、デトックスに役立つので、水溶性だけにこだわらず、どちらもバランスよく摂っていくことが大切です。
以上、ここまでダイエットは腸内細菌の痩せ菌を増やしてデブ菌を減らすことが効果的であることについて述べてきましたが、2、3日、食物繊維を多く摂ったからといって、すぐに痩せられるわけではありません。
また食物繊維をやせ薬だと勘違いして、過剰に摂り過ぎるのも避ける必要がありますし、普段から肉食中心で食物繊維をあまり摂っていない方は、腸内細菌が驚かないように、少しずつ慣らすようにして、食物繊維の摂取量を増やすことが重要です。
ですが、食物繊維が豊富な野菜や果物、キノコ類、海藻類などをたっぷり摂る食生活を地道に続けていけば、腸内細菌叢(腸内フローラ)は変化していき、腸のなかの痩せ菌も増えていくことは確かだと思われます。
そのため、ダイエットを本当に成功させるためには、ヤセ菌ダイエットは効果がないからといって途中であきらめず、長い目で見ることが大切なのです。
すなわち、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスに関しては、自分の意志ですぐに変化させることは難しいため、大切なのは日頃の食習慣なのであり、痩せ菌を増やしていくために、野菜や果物、海藻類、発酵食品などを中心に、食物繊維をバランスよく摂るようにする生活習慣が大事なのです。
加工食品やファストフードの摂りすぎには注意が必要。
一方、肥満と関係してくるデブ菌が好むのは脂肪や糖質が多い高カロリー食だとされていますし、食品添加物の一部は、腸内細菌の数や種類を減らすとされていますので、人工甘味料や乳化剤といった食品添加物が多く使われている加工食品やファストフードには注意が必要です。
また時々「ゆる断食」や「半日断食」といった断食(ファスティング)を行ってみることも、ダイエットだけではなく、腸内細菌のバランスを整え、腸内環境を良くするのに効果的です。
以上今回の記事では、ダイエットの成功の鍵はヤセ菌を増やすことが大切であるということについて述べてみました。
ダイエット効果の全てを腸内細菌のバランスに還元するつもりはありませんが、「太り過ぎ」や「肥満」であることに悩みを抱えている方は、運動だけではなく、腸内環境に着目して、食事の改善を行ってみてはいかがでしょうか?
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。