日々、出口が見えないコロナ禍でこころが苦しい・息苦しい・虚しいと感じることはありませんか?
そのような場合、ブッダの教えに関心を持ち、学んでみることは、おうち時間の使い方としてはたいへん有意義であるように思われます。
このように述べると、「仏教」という「宗教」を信じることを勧めているように思われるかもしれませんが、ブッダに関心を持ち、その教えを実践することは、一神教の神様をやみくもに信じたり、ただお経を唱えたり仏像を拝んだりすることとは違います。
なぜならブッダ(お釈迦さま)は、心の悩み苦しみから抜け出す方法について、科学者のごとく合理的に述べているからであり、ブッダの教えについて真剣に学ぶことは、心の成長につながるからです。
ブッダとは、苦しみの矢が刺さった患者の治療にあたる医者のような存在なのです。
また、ブッダの教えは、現代の脳科学や心理学の発見にも通じますので、ブッダの教えを学ぶことは、長い人生を生きていくうえで必ず役立ちます。
そして、ブッダ(お釈迦さま)の教えについて初めて勉強してみたいという方にオススメなのは、『ブッダが説いたこと』(ワールポラ・ラーフラ 著 今枝 由郎 訳 岩波文庫)という一冊です。
この本は、仏教史や上座部仏教と大乗仏教の違いなどを学ぶためではなく、ブッダが説いたこととは、一体どういうことなのかをとりあえず知るために最適です。
私は本書で、ブッダの教えの中で中心的、基本的とされるものをすべて論じた。それらは、四聖諦、八正道、五集合要素、カルマ、再生、「条件付けられた生起」、無我、正しい注意である。
と「まえがき」にありますが、個人的には、ブッダの教えについて書かれているこのような良書が、安価で手に取りやすい岩波文庫で読めるということは、非常にありがたいことであると感じられます。
ちなみに『ブッダが説いたこと』の目次は、以下のとおりです。
第1章 仏教的な心のあり方
第2章 第一聖諦―ドゥッカの本質
第3章 第二聖諦―ドゥッカの生起
第4章 第三聖諦―ドゥッカの消滅
第5章 第四聖諦―ドゥッカの消滅に至る道
第6章 無我(アナッタ)
第7章 心の修養(バーヴァナー)
第8章 ブッダの教えと現代
ブッダを、一般的な意味での「宗教の開祖」と呼ぶことができるとすれば、彼は「自分は単なる人間以上の者である」と主張しなかった唯一の開祖である。他の開祖たちは、神あるいはその化身、さもなければ神からの啓示を受けた存在である〔か、そうであると主張している〕。ブッダは、一人の人間であったばかりではなく、神あるいは人間以外の力からの啓示を受けたとは主張しなかった。彼は、自らが理解し、到達し、達成したものはすべて、人間の努力と知性によるものであると主張した。
(『ブッダが説いたこと』 ワールポラ・ラーフラ 著 今枝 由郎 訳 25頁)
人間は、そして人間だけが、ブッダ「目覚めた人」になれる。人間は誰でも、決意と努力次第でブッダになる可能性を秘めている。ブッダとは、「卓越した人間」と呼ぶことができる。ブッダは完璧な「人間性」を実現したがゆえに、後世に至って一般的には「超人」と見なされるようになった。
(同)
ところで、「仏教」と聞くと、何となく仏像を拝んだり、お経を読んだりすることなどをイメージしてしまいますが、そのようなイメージが先行してしまう場合は、そのような仏教へのステレオタイプなイメージを取り払って、まずは「四聖諦」や「八正道」といったブッダの基本的な教えだけに関心を持ってみると良いと思います。
というのは、ブッダの教えとは、きわめて実用的であり、難しいことを頭であれこれと考えるよりも先に、自分に刺さった苦しみの矢を抜くことが大切だからです。
仏教は宗教なのか、それとも哲学なのか、としばしば問われてきた。仏教をどう定義しようと、大した問題ではない。仏教をどのように呼ぼうとも、仏教であることに変わりはない。名称はどうでもいいものである。私たちがブッダの教えに付けている「仏教」という名称も、重要なものではなく、本質的なものではない。
(『ブッダが説いたこと』 ワールポラ・ラーフラ 著 今枝 由郎 訳 34頁)
まず最初にはっきりと言えることは、仏教は悲観主義でも楽観主義でもなく、しいていえば、生命を、そして世界をあるがままに捉える現実主義である。仏教はものごとを客観的に眺め、分析し、理解する。仏教は誤って人びとに人生は楽園であると思い込ませたり、ありとあらゆる想像上の不安や罪の意識をかき立てて、恐がらせたり苦悶させたりしない。仏教は人間と世界のあるがままを正確に、客観的に説き、完全な自由、平安、静逸、幸福への道を示すものである。
(『ブッダが説いたこと』 ワールポラ・ラーフラ 著 今枝 由郎 訳 57頁)
今回は、『ブッダが説いたこと』(ワールポラ・ラーフラ 著 今枝 由郎 訳 岩波文庫)という本を、ブッダ(お釈迦さま)の基本的な教えを知るための一冊として紹介してみました。
気になる方は、『ブッダが説いたこと』を、有意義な時間を過ごすために手に取ってみてはいかがでしょうか?
なお、ブッダの教えを手軽に知り、実践することが出来る本としては他に『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』(草薙龍瞬 著 KADOKAWA)』があります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます(^^♪