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忙しい日々のなかで、人生の意味や目的について考えることはありますか?
今回は、『人生に意味はあるか』(諸富祥彦 著 講談社現代新書)を取り上げながら、「人生の本当の意味と目的とは何か」ということに少しふれてみたいと思います。
前回の記事では、心理カウンセラーであり、『孤独であるためのレッスン』などの著作がある諸富祥彦氏の『〈むなしさ〉の心理学 なぜ満たされないのか』を紹介しながら、人生における満たされない<むなしさ>を解消するためのヒントについて考えてみました。
そして、私たちは<いのちの働き>によって生かされているということに気づくことが、満たされない<むなしさ>を解消するきっかけになるのではないか、と述べてみました。
今回取り上げる『人生に意味はあるか』(講談社現代新書)のなかでは、諸富氏は「人は何のために生きるのか」「人生のほんとうの意味と目的は何か」の答えとして、以下の三つを挙げています。
- 「〝人生のほんとうの意味と目的〟をどこまでも探し求め続けるため。最後まで求めぬくため。」
- 「その極限において、究極のリアリティである〝いのちのはたらき〟に目覚めるため。そして、この私も、ほかならないその〝はたらき〟がとった一つの形であることに――〝いのちが私している〟という真理に――目覚めて生きるため。」
- 「今あなたが置かれている状況からの日々の問いかけに応え、あなたの人生に与えられた使命を果たし、〝未完のシナリオ〟を完成させていくため。」
諸富祥彦氏は「人生の意味や目的」についての答えとして、このように述べているのですが、本書は「いのちのはたらき」といった抽象的な話にも触れているため、「人生の意味や目的」を考えるうえでは腑に落ちないという方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、もし上に提示したこれらの答えに興味が湧いた方は、実際に本書『人生に意味はあるのか』を手にとってみていただきたいと思います。
「人生に意味や目的はあるのか?」という問いに答えを出すのは難しい。
実際のところ、「人生に意味や目的はあるのか?」という問いは、思い悩む当人にとっては非常に答えを出すのが難しい問題と思われます。
なぜ答えを出すのが難しいのかといえば、その理由は、どのようなことに「人生の意味や目的」を見出すかは、人それぞれ違ってくるからです。
つまり、本から影響を受けたり、ネットで検索したり、他人からアドバイスやヒントをもらったりしたとしても、自分にとっての「人生の意味や目的」は他人のそれとは違うのであり、そのことを見出せるのは、最終的には自分自身なのだということなのです。
何のために、生きるか。
人はなぜこの世に生まれ、そして何のために生きていくのか。
この問いは、老若男女を問わず、これまで無数の人々が幾度となくつぶやき、そして途方に暮れてきた問いです。昨日も、今日も、そして明日も、どこかで誰かが、この問いをつぶやいていることでしょう。
人はみな、いずれ死ぬ。
気づいたときにはこの世に産み落とされ、そして生き、さまざまな苦しみや喜びを経験して、その末にいやおうなく命を奪われていく。自分の意志とはかかわりなしに……。
自分がどこから来て、どこに行くのか。それすら知らされないまま、どう生きるべきかを考えながら、生きていくよう定められた存在。それが人間。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p7~8)
人生に意味はあるのか?
諸富祥彦氏の『人生に意味はあるか』は、「人生には意味や目的があるのか?」という、簡単には答えが出ない問いについて悩んでいる方は、一度読んでみても損はないと思います。
なぜなら、著者の諸富氏は、この本について、「この本に紹介されたさまざまな考えを、あくまで参考にしながらも鵜呑みにはせず、「自分の人生の意味と目的を自分で探求していく道」を歩んでいただきたいと思います」と述べているからです。
科学的知識と異なり、人生の真理には、ある種の体験を経なくてはなかなか理解できないことがあります。
したがって私は、「どんな答えに行き着くか」よりも、「どう探し求めるか」「どれほど本気で答えを探し求めるか」のほうが、より重要であると思います。人生の真理は、あくまで自分の体験を通して得たものしか、自分のものにはならないからです。
読者の方には、この本に紹介されたさまざまな考えを、あくまで参考にしながらも鵜呑みにはせず、「自分の人生の意味と目的を自分で探求していく道」を歩んでいただきたいと思います。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p11~12)
諸富祥彦氏は「人生に意味はあるか?」という問いの答えを見つけるヒントを、本書において、宗教や文学、哲学、スピリチュアリティ、トランスパーソナル心理学やフランクルの思想などから探り出そうとしています。
そして、第7章に「私の答え」として、「いのちが、私している」<いのちのはたらき>について述べています。
<いのちの働き>とは?
<いのちの働き>に出会ったという諸富氏の経験については、氏は、「中学三年生の春から、おおよそ七年もの間、「人生の意味」を求め、いくら求めてもそれが求められずに苦しんで」いたといいます。
しかし大学三年の時に、疲れ果てた氏は、観念してその問いを放り投げてしまったというのですが、力尽き、「問いを投げ出した」ことで、「なぜか倒れることも崩れ落ちることもなく、立つことができている自分の姿」を見たと述べています。
この時に出会ったのが、気づかないだけで前からずっとあった、<いのちの働き>と呼ばれるものです。
私はこれまで気づかずにきたけれど、この何かはずっと前からそこに与えられていた。私を生かし、私をあらしめ、私を成り立たしめてきた。つまりこの何かこそ、私の真実の主体なのだ。そして今、この何かがそれ自体で立っている。だからその結果、私も立っていられるのだ。
この「何か」は「働きそのもの」である。あえて名前を付ければ<いのちの働き>とでも呼ぶよりほかない何かである。私の底の<いのちの働き>。(略)
つまり私は、<いのちの働き>に生かされている。
(諸富祥彦『〈むなしさ〉の心理学』p185~186)
この瞬間に、私ははじめてこの「はたらき」が、うずを巻いて現成したのを見たけれど、実はそれは、ずっと前からそこにあった。あったどころか、私が生まれてからこの方、いつもずっと、私を成り立たしめてくれた当のものであったのです。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p198)
私はそれまで、自分がどう生きるべきかと悩むのに忙しくて、それに気づかずにきたけれど、このはたらきは、実は、ずっと前からつねにすでに与えられており、私を生かし、私をあらしめ、私を成り立たしめてきていた、ということ。つまりこの「はたらき」こそ私の真実の主体であり、この「はたらき」がそれ自体ではたらいているからこそ、それによって、私も立っていられるのだということ。むしろ「私」は、このはたらきの一つの形にすぎない、ということ。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p198~199)
そして、『人生に意味はあるか』の著者である諸富祥彦氏は、この<いのちの働き>に目覚めることで、思い悩む必要がなくなり、「悩みそれ自体が消え去っていった」と述べています。
もちろん、だからといって、人生の意味に悩む多くの方が、悩みが消え去るほどの<いのちの働き>を、日常生活において経験するとは限らないと思います。
人生の意味や目的を解決するヒントは<いのちの働き>について考えてみること
ですが、諸富氏のいう「いのちのはたらき」を最初から否定するのではなく、この<いのちの働き>について考えてみること、あるいは何らかの体験を通じて感じてみることは、人生の意味や目的を解決するヒントになるのではないか、と私自身は思います。
また、「人生の意味や目的」は、頭のなかで合理的に考え抜いて導き出すだけではなく、もしかしたら自分という存在の外側からやってくるのかもしれない、もしくは、気づかないだけですでに今・ここにあるのかもしれない、という視点を持ってみることも大切ではないでしょうか?
この「はたらき」は、天然自然。意味無意味を超えた「いのちのはたらき」です。その意味でそれは、超・意味です。またそれは、意味があるとかないとかいう観念的な意味づけに先立って、ずっと前からそこではたらいていたものです。その意味でそれは、前・意味であり、脱・意味であると言うこともできるでしょう。
この「はたらきそのもの」について語るとき、忘れてはならないのは、その「つねに、そしてすでに」という性質です。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p198)
ここでひとつお断りしておきたいのは、この記事の内容は、<いのちの働き>に目覚めることで、特定の宗教を信じたり、スピリチュアリティに根差した生き方を押しつけたり、何かのセラピーやワークへの参加を勧めたりするものではない、ということです。
ただ、頭のなかでいろいろ考えすぎるのを止め、代わりにゆっくりとした運動や、呼吸法、マインドフルネス瞑想などを行うことで、<からだ>や、そのからだを生かしている<いのち>を感じる時間をもつようにしてみることは、生きることのむなしさを解消したり、これまでとは違ったことに人生の意味を見出したりするきっかけになるのかもしれません。
このことはあくまでひとつの提案ですが、頭で考えるだけではなく、普段から五感を活かし、<いのちの働き>と呼ばれるような何かを感じるようにしてみることも、人生をより豊かなものにするために必要であるような気がします。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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