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日常生活の中でつい「イラっ」ときた時、感情のコントロールに役立つ「再評価」という手法についてご存知ですか?
前回の記事では、「リフレーミング」について述べてみましたが、ストレスを減らしたり、感情をコントロールしたりするために有効な手法としてはほかに「再評価」というものがあります。
「再評価(Reappraisal)」は、心理学における感情調整(Emotion Regulation)の手法の一つで、出来事や状況を異なる視点から捉え直し、感情反応を変えることを指します。
単なるポジティブ思考とは異なり、状況の本質を見直すことで、より適応的な感情調整を行うことが特徴であるとされています。
1. 再評価の基本メカニズム
私たちは出来事に対して自動的に感情を抱くことがあります。しかし、その感情は「出来事そのもの」ではなく、「自分の解釈(評価)」に基づいています。
例えば、
- 「会議で自分の意見が否定された」
- → 「自分はダメだ」と解釈すると→ 落ち込む
- → 「建設的な議論の一部だ」と解釈すると→ 冷静に対応できる
例
「電車が混雑していて不快だ」 → 「多くの人が安全に移動している」
「プレゼンの前に緊張しているから失敗する」 → 「この緊張が良い結果を生む」
このように、出来事の捉え方を変えることで、感情の質や強度を変化させるのが「再評価」です。
2. リフレーミングとの違い
再評価は「リフレーミング」と非常に似ていますが、焦点が異なります。
再評価(Reappraisal) | リフレーミング(Reframing) | |
---|---|---|
目的 | 感情の調整・制御 | 物事の解釈を変える |
対象 | 感情を引き起こす認知プロセス | 出来事の意味や状況の枠組み |
適用場面 | ストレス、不安、怒りのコントロール | 日常の考え方や価値観の変化 |
例 | 「緊張=悪い」→「緊張=集中力を高める力」 | 「失敗=ダメなこと」→「失敗=学びの機会」 |
3. 再評価の種類
再評価には主に2つのアプローチがあります。
① 認知的再評価(Cognitive Reappraisal)
出来事の意味を変えることで、感情の強度を調整する方法です。
例:
- 「大勢の前で話すのが怖い」
→ 「これは自分を成長させるチャンスだ」と考え直す - 「ミスをして怒られた」
→ 「上司は自分に期待しているからこそ指摘している」と捉える
このように、状況の本質は変えずに、意味づけを変えることで、感情を和らげたり、前向きに受け止めたりできます。
② 価値観ベースの再評価(Value-Based Reappraisal)
自分の価値観に基づいて解釈を変えることで、感情の影響を弱める方法です。
例:
- 「仕事でのミスが許せない」
→ 「完璧主義よりも、挑戦することの方が価値がある」と考え直す - 「批判されるのが怖い」
→ 「自分の信じる価値を貫くことが大切」と考え直す
この価値観に基づいた再評価は、長期的な感情の安定やストレス耐性の向上に役立つと言われています。
4. 再評価の効果
再評価は、感情を適切に調整する効果的な方法であり、心理学の研究でも多くのメリットが示されています。
① ストレス軽減
- 出来事をより適応的に解釈することで、ストレスの影響を軽減できる
- 例:「忙しい=大変」ではなく、「やるべきことが明確になっている」と捉える
② ネガティブ感情の抑制
- 怒りや不安、悲しみなどの感情をコントロールしやすくなる。
- 例:「失敗した=恥ずかしい」ではなく、「新しい方法を試せる」と考える。
③ ポジティブ感情の向上
- 再評価を使うことで、ポジティブな感情を増やせる。
- 例:「プレゼンが怖い」→「自分の意見を伝えられる機会」と再評価。
④ メンタルヘルスの向上
- うつ症状や不安症の改善に役立つ。
- 認知行動療法(CBT)では、再評価を活用して「認知の歪み」を修正する。
5. 再評価の実践方法
ステップ①:自分の感情を認識する
まず、今の感情を言語化する。「今、私は〇〇と感じている」と自分に問いかける。
→ 例:「私は今、不安を感じている」
ステップ②:出来事の評価を見直す
その感情が生まれた原因を分析し、別の視点を探す。
→ 例:「この不安は、失敗を避けたいから生まれている」
ステップ③:新しい意味づけを考える
ポジティブな解釈や別の観点から再評価する。
→ 例:「不安があるということは、私は本気でこのプレゼンに取り組んでいる証拠だ」
ステップ④:行動に反映させる
再評価した考え方を行動に落とし込む。
→ 例:「不安を活かして、さらに準備を徹底しよう」
6. 再評価のトレーニング方法
再評価を習慣化するには、以下の方法が効果的です。
「別の視点」を意識する
- 物事を多角的に考えるクセをつける(例:「他の人ならどう考えるか?」)
日記や記録をつける
- 今日感じた感情」と「別の解釈」を書き出す(例:「不安→準備のサイン」)
ポジティブな言葉を使う
- 「面倒くさい」→「挑戦しがいがある」など、言葉を変える
マインドフルネスを取り入れる
- 今の感情に気づき、冷静に評価し直す習慣をつける
今回の記事では、出来事の意味を捉え直し、感情を調整する手法である「再評価(Reappraisal)」について述べてみました。
- 認知的再評価 → 出来事の意味を変える
- 価値観ベースの再評価 → 自分の価値観に基づいて解釈を変える
再評価のメリットとしては、
- 感情のコントロールがしやすくなる
- ストレスが軽減される
- ポジティブな思考が増える
- メンタルヘルスの改善に役立つ
などが挙げられますので、精神的なストレスを感じた時に、ネガティブ感情に振り回されるのではなく、「感情を自分で調整する力」を「再評価」によって身につけてみてはいかがでしょうか?
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。