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今回は、『そのオリーブオイルは偽物です 値段が高くても本物はごくわずか』(多田俊哉 著 小学館)という本をこれからの健康を考えるために取り上げたいと思います。
オリーブオイルは、近年、体に良いオイルとして人気があり、特にエキストラバージンオリーブオイルは、便秘の解消に効果的だとされるオレイン酸だけではなく、細胞の老化を防ぐ役割を果たすポリフェノール類が豊富に含まれているとされています。
ですが、日本オリーブオイルソムリエ協会理事長である多田俊哉氏による『そのオリーブオイルは偽物です 値段が高くても本物はごくわずか』を読むと、日本においてはエキストラバージンオリーブオイルのほとんどは輸入品であり、しかも約8割は偽装されたオリーブオイルだということが分かってきます。
多田俊哉氏は、『そのオリーブオイルは偽物です』の中で、オリーブオイルの国際規格は「国際オリーブ理事会(IOC)」が定めており、一番搾りのオリーブオイルは品質が高い順から、
1、エキストラバージン・オリーブオイル(遊離酸度がオレイン酸換算で0.8%以下。風味欠陥無し)
2、バージン・オリーブオイル (遊離酸度がオレイン酸換算で2.0%以下。若干の風味欠陥)
3、オーディナリーバージン・オリーブオイル (遊離酸度がオレイン酸換算で3.3%以下。風味欠陥有り)
4、ランパンテ・バージンオリーブオイル (遊離酸度がオレイン酸換算で3.3%越え。風味欠陥有り)
となっていると述べています。
これらは「バージン・オリーブオイル」と呼ばれており、中でも「エキストラバージン・オリーブオイル 」は最高級のオリーブオイルです。
日本のオリーブオイルのほとんどは偽物である可能性が高い。
しかし、多田俊哉氏の『そのオリーブオイルは偽物です』によれば、「国際オリーブ理事会(IOC)」が定めた規格は、現在のオリーブオイルの市場において、
「IOCが業界の健全化や透明化に取り組むための品質規格を制定しても、それを遂行し運用する側である加盟各国の政府や官僚たちが闇の勢力に取り込まれ、規格基準を運用するための制度整備が叶わなくなってしまった」
という理由から、偽装オリーブオイルを強く規制できる力を持っていないとされています。
また多田氏によれば「日本では、オリーブオイルに関しての法規制はかなり緩く、現在のところラベルにどんなことを書いても書きたい放題、直ちに品質偽装に問われることはない」そうで、「唯一の例外は、認証制度の法体系が存在する「有機」表示のみ」だと言います。
つまり、日本で販売されているエキストラバージンオリーブオイルは、ほとんど法的規制がなされていない中で販売されている偽装オリーブオイルである可能性が高いのです。
その偽装オリーブオイルとは具体的には、「オリーブオイルにひまわり油、ピーナッツオイル、大豆油、低級オリーブオイルなどの安い油を混ぜる」、「低級のバージン」や「食用に適さない精製オイル」などが「エキストラバージンと偽装表示して販売されている」、「収穫後日数がたち、発酵・腐敗したオリーブの実を搾ってできた欠陥オイル」「発酵による酸味やカビ臭さ、エグ味がある」といったような質の悪い油だと言います。
そしてその偽装オリーブオイルを平気で販売しているのは、儲けのみを目的にしている「農業マフィア」と呼ばれるような人たちのようです。
偽物ではなく本物のエキストラバージンオリーブオイルを選ぶには?
では偽物ではなく本物のオリーブオイルを選ぶにはどうすれば良いのでしょうか?
本物のエキストラバージンオリーブオイルはたったの数滴で料理の様相を魔法のようにがらりと変えてしまうといいますが、多田俊哉氏は『そのオリーブオイルは偽物です』のなかで、
☆生産者の顔が見えるものを選ぶようにすること
☆厳正厳格な審査が行なわれているオリーブオイルのコンテストを参考にすること
この2点がオリーブオイルの初心者でも本物のエキストラバージンオリーブオイルを購入するために大切だと述べています。
店に並んでいるのは品質偽装オイルばかりで、素晴らしい品質のエキストラバージンって本当に実在するの? といぶかる声が聞こえてきそうですが、はっきり申し上げましょう! 本当に素晴らしい品質のエキストラバージンオリーブオイルは、実際に少なからず存在します!
しかしながらその割合は多くないことは言うまでもありません。作られるオリーブオイルがすべて最高品質となればこんなに良いことはありませんし、もしそうならば品質偽装もこれほど一般化することはなかったわけですから。
(多田俊哉『そのオリーブオイルは偽物です』p110~111)
多くの生産者は、毎年異なる気候変動の中で、それでも安定した一定の品質と風味を作り出して消費者に提供しようと苦労を重ね、素晴らしい製品を消費者に送り出してくれているのです。そして、その素晴らしい品質に出会えるのは、1年に1度だけ。同じものには二度と出会えません。毎年変わる風味に驚き、過ぎた夏の思い出とともにその風味を楽しむ。それこそがオリーブオイルの楽しみなのです。
(多田俊哉『そのオリーブオイルは偽物です』p110~120)
本物のオリーブオイルを選ぶためには生産者の顔が見えることが大切。
また、本物の「エキストラバージンオリーブオイル」を手に取るために、価格はそれほど関係ないと多田氏は述べています。
本物のエキストラバージンオリーブオイルの価格の相場は500mlでだいたい5000円前後のものが多いですが、非常に高い値段で販売されているからといって、そのエキストラバージンオリーブオイルが本物であるという確証はないのだと言います。
つまり、本物のオリーブオイルを選ぶためには生産者の顔が見えることが大切なのです。
どんな状況でもひたすら品質を追求して、素晴らしい風味のオリーブオイルを作り続ける良心の生産者は少なからず存在します。それを見わけるポイントは、農園名であったり生産者名であったり、あるいはブランド名であったりしますが、これらが特定できれば、間違いのない美味しいオリーブオイルを買い続けることができます。
ちょうどワインや日本酒を選ぶときのように「銘柄」がオリーブオイルでも重要なポイントになると思っていただければよいでしょう。
(多田俊哉『そのオリーブオイルは偽物です』p126~127)
さらに多田俊哉氏は「銘柄に詳しくなれる簡単な方法」として、「世界各地で開かれるオリーブオイル品評会の結果発表をチェックすること」を挙げていますが、多田俊哉氏が理事長を務めている日本オリーブオイルソムリエ協会主催による「OLIVE JAPAN」は、多田氏も本書のなかで述べているように「日本流の厳格で公平公正な審査」を行っているため、「OLIVE JAPAN」の審査結果を参考にして本物のオリーブオイルを選んでみることはお勧めです。