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「日々の生活がなんとなく、生きづらい」「生きていることが苦しい」。そう感じるとき、私たちはその原因を心の中に探そうとします。考えすぎているのかもしれない。自分に自信がないからかもしれない。もっと前向きにならなければいけないのかもしれない。人間関係がうまくいかないから、仕事が忙しいから、将来が不安だから……。そうやって、生きづらさの理由を頭の中だけで理解しようとします。
もちろん、人生の悩みには、環境や人間関係、仕事、お金、過去の経験など、さまざまな要因があります。だから、「呼吸を変えれば人生の問題がすべて解決する」という話ではありません。けれど、ここで一度、少し違う方向から自分を見てみてもいいのではないでしょうか。
「この生きづらさは、心だけの問題なのだろうか?」
たとえば、イライラしているとき。緊張しているとき。不安で落ち着かないとき。あるいは、理由もよく分からないまま疲れているとき。そんなとき、自分の「呼吸」に意識を向けてみるのです。すると、いつの間にか呼吸が浅くなっていたり、速くなっていたり、肩や胸に力が入っていたりすることがあります。
つまり私たちは、「心が苦しいから呼吸が変わる」だけではなく、「呼吸や身体の状態が変わることで、心の状態にも影響が及ぶ」という双方向の関係の中で生きています。ここに、生きづらさを考えるうえで、とても大切な入口があります。それが、「息」です。
「生きづらい」とき、実は「息」も苦しくなっている
「生きる」と「息をする」という二つの言葉は、まったく別のものに見えるかもしれません。しかし、私は自分自身の経験から、「生きやすい」とは「息がしやすい」ことでもあり、「生きづらい」とは「息がしづらい」ことでもあるのではないか、と考えています。
これは単なる言葉遊びではありません。私たちは、緊張すると呼吸が変わります。ストレスを感じると、身体は危機に備える状態になります。心拍数が上がり、筋肉が緊張し、呼吸が浅く速くなる。このような変化は「ストレス反応」によるものです。
イライラ、緊張、疲れやすさ。その背後にあるもの
そして問題は、その状態が一時的なものではなく、日常の中で何度も繰り返されることです。仕事のメールを確認する。SNSを見る。人からの評価を気にする。将来のことを考える。うまくいかなかった過去を思い出す。「もし失敗したらどうしよう」と先のことを考える。目の前に猛獣がいるわけではないのに、身体の中では「何かに備えなければ」という反応が起こることがあります。
私はこの点を「脳が未来の危険を予測する」という観点から捉えています。脳は過去の経験をもとに、次に何が起こるのかを予測し、その予測に基づいて身体を準備させる。だから、まだ起こっていない未来について考えているだけでも、身体が緊張することがあるのです。
そう考えると、「なぜ私はこんなに疲れているのだろう」「どうしてこんなにイライラしてしまうのだろう」と、自分の性格だけを責めなくてもよくなります。もしかすると、あなたは怠けているのではなく、弱いのでもなく、ただ長いあいだ「警報」が鳴り続けている身体で生活してきたのかもしれません。
「もっと前向きに」ではなく、まず身体を休ませる

だからこそ、生きづらさを感じたときに必要なのは、いつも「もっと前向きに考えること」だけではありません。「考え方を変えよう」とする前に、身体を少し休ませてあげる。その最も身近な方法の一つが、呼吸なのです。
呼吸には不思議なところがあります。心臓や消化器官の働きを、私たちは普段、直接「今からこう動いて」と意識的に操作することはできません。一方で、呼吸は無意識に行われながら、意識して変えることもできます。私はこの「意識的に介入できる」という呼吸の特徴を重視しています。
だから、心が落ち着かないときに、「落ち着かなければ」と心を直接コントロールしようとしなくてもいい。まず、息を吐く。少しゆっくり吐いてみる。肩の力を抜く。鼻から静かに呼吸する。そして、呼吸のリズムを穏やかにしていく。それだけでも、「今、自分は緊張しているんだな」と身体の状態に気づくことができます。
「深呼吸=たくさん吸う」ではない
大切なのは、無理に「深呼吸」をしようとしないことです。深呼吸というと、大きく息を吸い込むことをイメージする人が少なくありません。しかし本書では、むしろ「ゆっくり吐くこと」を重視しています。最初から理想的な呼吸を目指す必要もありません。まずは自分の呼吸に気づき、少しずつゆっくりにしていく。そのくらいのところから始めてもいいのです。
たとえば、仕事中にイライラしていることに気づいたら、「私はなぜこんなことで腹を立てているんだ」と自分を責める代わりに、一度だけ息をゆっくり吐いてみる。人前に出る直前に緊張しているなら、「緊張してはいけない」と考えるのではなく、自分の呼吸を感じてみる。夜、頭の中で明日のことを何度も考えてしまうなら、未来を無理やり考えないようにするのではなく、今ここで呼吸している身体に注意を戻してみる。この小さな方向転換が、生きづらさとの付き合い方を変えていく可能性があります。
心を変える前に、身体に「余白」をつくる

「自分はメンタルが弱い」「心をどうにかしなければ」と頑張り続けてきた人ほど、一度くらい、心ではなく身体から始めてみてもいいのではないでしょうか。
生きづらさを感じたとき、私たちはつい「自分を変えよう」とします。しかし、ときには自分を変える前に、自分の身体に戻ってくることのほうが大切なのかもしれません。
息を吐く。そして、次の息が自然に入ってくるのを待つ。その繰り返しの中で、「ああ、自分は今ここにいる」と気づく。
呼吸はあまりにも当たり前すぎるため、普段はその価値に気づきません。でも、一日に何度も繰り返している呼吸は、私たちが「今、生きている」ということを絶えず教えてくれています。
「生きづらさをなくす」のではなく、「自分を助ける」
だから私は、生きづらさを感じている人に、「もっと頑張ってください」と言う代わりに、まず「少し息をゆっくりにしてみませんか」と伝えたいのです。
人生の問題が、それだけで消えるわけではありません。けれど、問題に向き合う自分自身の状態が少し変われば、同じ世界の見え方が変わることがあります。
呼吸は、そのためのとても小さな入口です。そして、その入口は、特別な才能を必要としません。高価な道具も、難しい知識も、完璧な技術も必要ありません。ただ、自分が今どんな呼吸をしているのかに気づく。そして、ほんの少しだけ、ゆっくり吐いてみる。
それは、「生きづらさをなくす魔法」ではありません。もっと現実的で、もっと身近なものです。
生きづらさを感じている自分を、身体の側から少し助けてあげるための入口。
その入口が、「息」です。

「心」からではなく、「息」から始めてみる
「心をどうにかしなければ」と頑張り続けてきた人ほど、一度くらい、心ではなく身体から始めてみてもいい。
まず「息」をゆっくりにする。
そこから、自分との関係を少しずつ変えていく。
私はそのための実践を、先日お知らせした新しい電子書籍にまとめました。
難しい呼吸法を覚えるための本ではありません。忙しさや人間関係、将来への不安のなかで、いつの間にか浅くなってしまった「息」にもう一度気づき、自分自身に戻ってくるための本です。
生きづらさを感じているとき、心だけを変えようとしなくてもいい。
まずは、息から。
「生きづらさを感じている人に、呼吸という身体側からの入口を渡す。」
この本を、そんな小さな入口として手に取っていただけたらと思います。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪

























