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今回は生食と加熱食の割合は6対4が良い理由についてです。
テレビのCMやインターネット広告などで、「酵素」が含まれた健康食品が体に良いと宣伝されていますが、代謝のために働く酵素は、必要に応じて、体内でその都度つくられるので、食べ物から補充することはできません。
このあたりのことについては、前々回の記事「「酵素」は毎日の健康を目指していくために大切。」でも述べましたが、しかし、かといって、果物や野菜、発酵食品やハチミツなどに含まれている食物酵素が、健康のためにまったく役に立たないのかといえば、そうではないように思います。
このことに関して、たとえば、酵素栄養学の祖であるエドワード・ハウエル博士は、「自然はすべての生の食べ物のなかに、人間が消化しやすいように、最終的には人間の体外でも分解できるように、正しく、バランスのとれた大量の食物酵素を入れてくれている」と述べています。
そして、大根や山芋や生姜、りんごやパイナップルやバナナといった野菜や果物には消化酵素が豊富に含まれていますし、納豆や味噌、ぬか漬けなど、日本が誇る伝統食の発酵食品にも消化を助けてくれる酵素が含まれています。
これらの食物酵素が含まれた食材はどれも、体内に摂り入れた際、消化管に負担をかけないよう、あらかじめ消化されやすいようになっているのです。
ところが酵素は熱に弱い性質があり、48℃を超えると次第に壊れ始めていくため、加熱食や加工食品には食物酵素は含まれていません。
また、手軽で便利な加工食品には、食品添加物や人工甘味料、トランス脂肪酸など、体内の酸化や糖化、慢性炎症などに関係してくるものが含まれている場合が多いことは、留意しておく必要があるように思います。
生食だけではなく加熱食も摂ったほうがよい理由とは?
もちろん、この記事では、火を通した加熱食自体が体に悪いと述べたいわけではありません。
食材によっては、加熱することにより、細菌の繁殖を防いだり、栄養価が高くなったり、消化しやすくなったりする、といったメリットもあるため、決して、加熱食の代わりに、食物酵素が含まれた生の食材だけを摂るようにすることを勧めているわけではないのです。
このことに関しては、たとえば日本における酵素栄養学の第一人者である鶴見隆史氏も、『「酵素」の謎 なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』のなかで、生食と加熱食の割合は6対4が良いとしています。
その理由としては、現代においては生野菜や果物の栄養価は農薬やビニールハウスなどの影響で下がっており、酵素も少なくなっているため、生の野菜や果物だけでは栄養学的に満たされず、免疫力もつかないことを挙げています。
また、肉や魚、卵などの動物食にはアミノ酸やビタミンB12など、植物性の食品だけでは補いきれない栄養素が含まれていることも、その理由のひとつです。
さらに、極端な食事設定をしてしまうと、そのことがストレスになり、病気や消化不良の原因を引き起こすことになりかねないとしています。
そのほか、大根やしいたけなど加熱したり干したりしたほうが栄養価が高まる食材もあるため、加熱によって酵素の力が失われたとしても、生の野菜と併用することで、栄養面と消化面の両方を十分なものにすることが出来ると述べています。
日本人は刺身など、加熱しない方法で食事を摂る文化を持っている。
それに加え、日本人は特に納豆や味噌、漬物や刺身など、加熱しない方法で食事を摂る文化を持っており、そのことが長寿を支えてきたとも鶴見氏は述べています。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売されている手軽で便利な加工食品を、忙しいことを理由につい頼ってしまいがちになりますが、これからの健康に留意するならば、体に消化の負担をそれほどかけない食物酵素が含まれた非加熱の食材も、「6:4」を目標にバランスをとるようにして、毎日の食生活に採り入れていく必要があると感じます。
ただし、いきなり「生食6」「加熱食4」というのはハードルが高いので、まずは「生食4」「加熱食6」を目標にして、食事に果物や発酵食品など、食物酵素が含まれた非加熱の食品を取り入れてみてはいかがでしょうか?