contents
今回は、酵素と腸内細菌の関係についてです。
以前の記事で、酵素は毎日の健康維持のために大切だと述べましたが、実は酵素は、腸に生息する腸内細菌と深い関わりがあります。
人間の小腸や大腸には、乳酸菌やビフィズス菌といった腸内細菌が無数に生息しています。特に大腸には「腸内フローラ」と呼ばれるほど腸内細菌が群生していることが、近年よくテレビや書籍などで話題にされるようになりました。
その大腸は腸内細菌の主戦場であり、主にヒト特有の善玉菌であるビフィズス菌が活躍しています。
また、腸内細菌の総数はこれまで100種類・100兆個とされてきましたが、近頃は1000種・1000兆個にものぼると言われています。
しかし腸が健康的に働くには、善玉菌と呼ばれる菌だけではなく、「悪玉菌」と「日和見菌」がバランスよく存在していなければならないのです。
そのような腸内細菌の働きは、酵素を作り出すことをはじめ、病原菌の排除や有害・発がん物質の分解・排泄、ビタミンの合成やホルモンの産生など多岐にわたっています。
他にも、快楽物質であるドーパミンを脳へ送ったり、免疫力を活性化したりする働きもあるため、腸内の環境を整えることは健康維持のため非常に重要になってくるのです。
- 免疫機能の維持・免疫活性
- 食べ物の消化と分解
- 代謝
- 便の形成
- ビタミン類やホルモンの合成
- 必須アミノ酸の合成
- 有害物質の解毒
- 酵素の分泌
- 腸の蠕動(ぜんどう)運動の促進
腸内細菌は人間の腸内に棲みつき、共生している。
そして、これらの腸内細菌は微生物として人間の腸内に棲みつき、共生しているのです。
このことに関して、酵素研究の第一人者である鶴見隆史氏は、
私たちは、彼らの宿主であり、そして私たちが摂取した栄養分の一部を腸内細菌はおもな栄養源として、分解・合成などの発酵活動をして増殖し、同時にさまざまな代謝物を産出しているのです。その代謝物を、今度は私たち宿主がエネルギー源や体の構成要素として利用しているわけです。
(鶴見隆史『「酵素」の謎―なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』)
と述べています。
つまり、腸内細菌の分解・合成の働きには善玉菌が分泌する酵素が深く関わっているのです。
そして、人間には消化できないとされてきた「セルロース」(食物繊維)がある程度分解・発酵出来ることが分かってきたのも、実は善玉菌である腸内細菌が分泌する酵素の働きによるのだそうです。
ちなみに鶴見氏は、酵素は「潜在酵素(体内酵素)」と「体外酵素(食物酵素)」に分類されますが、このような酵素を分泌する働きをもつ腸内細菌は、人間の臓器ではなく共生物であるため、体外酵素として捉えられるとしています。
つまり、腸内細菌のバランスも整えることも、結果的に体内の酵素を増やすことと関係してくるのです。
以上ここまで、酵素と腸内細菌の関係について述べてきましたが、腸内環境が悪化し、腸内細菌のバランスが崩れれば、食べ物の消化力・吸収率が低下してしまうことは十分考えられます。
しかし、日頃から腸内環境を気づかい、もし腸内細菌のバランスが整えば、その分、腸内細菌が酵素を分泌し、消化力や栄養素の吸収率がアップすることが期待できるのです。
そのため、体内の酵素を増やすために大切なのは、普段から、食物繊維や発酵食品などを食生活に適度に採り入れるようにし、腸内環境を良くしていくことだと思われます。