contents
今回は「うつ」を予防するための食事について述べていきたいと思います。
以前の記事で、うつをやわらげていくための食事について書き、食事によってうつを少しでもやわらげていくには、糖質、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、脂質などの栄養素をバランスよく摂取していくことに加え、以下の三つが大切だと述べました。
- 腸内フローラの改善・・・日頃から腸内細菌のバランスを整えるような食事をする。
- ゆるやかな糖質制限・・・なるべく白砂糖や精製デンプン、人工甘味料を減らし、糖質は血糖値の上昇がゆるやかな低GIの食品から摂る。
- 油の摂り方・・・サラダ油などに含まれるリノール酸を減らすことでDHA・EPAとのバランスをとる。
今回はこれら以外に、うつを予防していくために重要なことを挙げてみたいと思います。
うつを予防していくための食事のポイント
- 高GIの白砂糖や人工甘味料は控えるといっても、ブドウ糖はしっかりと摂る。
- 牛肉などからトリプトファンなどのアミノ酸をきちんと摂る。
- 厳格な食事制限をしないようにし、食べる事を楽しむ。
白砂糖や人工甘味料は控えるといっても、ブドウ糖はしっかりと摂る。
まず大切なのは、白砂糖や人工甘味料は控えるといっても、甘い物からブドウ糖はしっかりと摂る、ということです。ブドウ糖は何といっても脳の重要なエネルギー源です。
また、ブドウ糖をビタミンやミネラルと共に摂るようにすることは、細胞の代謝のためにも、欠かせません。
近年、脳はエネルギー源として、ブドウ糖だけではなく、肝臓で作られる「ケトン体」も利用することが分かっていますが、そうなるまでには厳しい糖質制限を課さなければなりません。
したがって、私自身はうつをやわらげていくためには、厳しい糖質制限ではなく、ゆるやかな糖質制限を実践することをオススメしています。
もし甘い物が好きな方は、高GIの白砂糖や人工甘味料を避けるかわりに、低GIのアカシアはちみつや、ミネラルが豊富な黒砂糖、ココナッツシュガーなど、天然の甘味料を利用することで、脳のエネルギー不足を避けてみてください。
なお、主食に関しては、市販のパンばかりを食べるよりも、雑穀ごはんやおそば(蕎麦)などが、栄養価的にはオススメです。
牛肉などからトリプトファンなどのアミノ酸をきちんと摂る。
うつを予防していくためには、日頃から野菜や果物、発酵食などを食べ、ビタミンB群やビタミンA、C、D、E、ミネラル、必須アミノ酸などの栄養素が不足しないようにすることが大切になってきますが、「うつ」の時こそ、あえて牛肉などのお肉を食べるようにすることも、必要になってくると思われます。
なぜならうつの時に不足している「セロトニン」が作られるためには、「トリプトファン」が必要だからです。
この「トリプトファン」について、たとえば、医学博士の高田明和氏は、『「うつ」にならない食生活』(角川書店)のなかで、
「セロトニンはトリプトファンというアミノ酸からできます。これは必須アミノ酸で、私たちの体で作ることはできません。しかもトリプトファンは肉に多く含まれ、植物性のタンパクに含まれる量は少ないのです。」
としており、さらに、
「肉の中のタンパクに含まれるフェニルアラニンやチロシンも必須アミノ酸で、私たちの体で作ることはできません。しかし、このアミノ酸から、やはりうつに効果のあるノルアドレナリンが作られ、さらにそれが快感をもたらすドーパミンを作るのです。」
と述べています。
したがって、毎日焼き肉を食べる事や牛肉の食べ過ぎを推奨するわけではありませんが、自分が「うつ」気味でなかなか元気がでないと感じた時は、完全菜食のヴィーガンを目指していないかぎり、積極的に牛肉などのお肉を美味しく頂くのも、高田氏が述べるように、「うつ」を予防するために効果的だと思うのです。
厳格な食事制限をしないようにし、食べる事を楽しむ。
最後は、「うつ」の時は厳格な食事制限をしないようにし、食べる事を楽しむようにすることも大切だということについてです。
近年、「~の食べ物はカラダによい」「~の食べ物は脳の健康によい」など、様々な健康情報が溢れていますが、「うつ」を予防するためには、あえて健康のことを気にしない、ということも時には必要だと思われます。
もちろん、だからといって、依存性が高くなるように製造されているファストフードやお菓子などの加工食品の暴飲暴食は避けるべきだと私自身は感じます。
ですが、たとえば食事制限に関して、医学博士の高田明和氏が先程ご紹介した『「うつ」にならない食生活』のなかで、
「現在日本は混沌とし、さらに将来への不安に満ちています」、「脳の健康を考え、ストレスに耐え、厳しい環境でもうつにならないようにすることこそ現在に求められていることだと思われます」
と述べ、さらに、
「私たちは生活習慣病にならないために生きているのではないのです。よりよく生きるために生活習慣病がない方がよいから、それを防ごうというのです。生活習慣病を防ぐために、元気を失い、ひきこもりになり、自殺するようになっては本末転倒と言えます。」(p20)
としている点は注目に値します。
つまり、動脈硬化やメタボになるリスクを恐れるあまり、必要以上に血糖値や悪玉コレステロールの値を気にして厳格な食事制限をしてしまうよりは、時々美味しいものを食べ、日頃の食生活や人生そのものを楽しんだほうが良いということです。
生活習慣病を気にするよりも、食生活を楽しむという意味では、この高田明和氏の『「うつ」にならない食生活』は、2002年に出版されており、多少内容が古い部分もありますが、今読んでも「うつ」を予防するために食事について考えさせるものがあります。
以上、ここまで「うつ」を予防するための食事について述べてきましたが、この記事でお伝えしたかったことは、「心」の状態を良くしていくためには毎日の「食事」を見直すことが重要、しかし、「食事」に気をつけてばかりいることがストレスになってしまえば、本末転倒だということです。
私たちの体のあらゆる働き、あらゆる細胞、組織の構成は絶え間なく食べ物の成分により維持されています。とくに脳はエネルギーのすべてをブドウ糖に頼っており、食べ物のなかのでんぷんとか砂糖のような炭水化物から作られるブドウ糖がその原料です。
脳の活動に必要な神経伝達物質の多くはアミノ酸から作られます。とくに感情とか本能行動に関する伝達物質のドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどは必須アミノ酸と言われるフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンから作られます。これらの必須アミノ酸は私たちの体内では作られず、食べ物のなかの肉などに供給を依存しています。
このために食べ物としてブドウ糖やアミノ酸を摂ることができないと、脳の機能が障害されたり、異常になったりします。当然うつ病になったりしますし、ボケを早めたりするのです。
(高田明和『「うつ」にならない食生活』p142)
うつの予防対策には、食事・運動・瞑想といった生活習慣が大切です。