いつもの「ツイてない」「運が悪い」を変える生き方、始めてみませんか?
前回の記事では、「運」は「生き延びる」ことと関係しており、現代においては、「運がいい」とは「金運」を意味することが多いと述べました。
「運がいい」とは「金運」を意味することが多いその理由とは、言うまでもなく、資本主義社会においては、お金がある程度あったほうが、全くないよりも、長く生き残れる確率が高くなると考えられるからです。
だからこそ多くの人々はお金がないことに頭を悩ませ、関心が「今」という瞬間ではなく「お金」や「儲け話」に向くのではないかと私自身は推測しているのですが、生き延びようとすることには、「脳」が関係しているのです。
そのため、もし「運が悪い」を変える、あるいは運を良くしたいのならば、開運グッズを買ったり、「困った時の神頼み」をしたりするよりも、脳の使い方を変える、もしくは脳を鍛えることのほうが確実で有効かもしれないのです。
このことに関して、たとえば精神科医のアンデシュ・ハンセン氏は『ストレス脳』のなかで、脳が最優先するのは「幸福」になることではなく「生き延びること」であると述べています。
また「私たちは狩猟採集民ではない」が、「しかし進化には途方もない時間がかかるので、あなたの身体と脳は今でも自分は狩猟採集民だと信じている」と述べており、さらに、
「あなたの身体と脳は、1~2万年やそこらではたいして変わっていないのだから」、「人間について知っておかなくてはならないのは、私たちがいかに変わっていないかという点だ」
としています。
そして、脳は世界をあるがままに解釈させてくれないのは、
「それもよりも重要で視野の狭い任務――つまり生き延びること――があるからだ。だから生き延びるための視点でしか世界を見せてくれない」
と述べ、さらに、
「それが私たちの感情における最大の鞭、「不安」へとつながっていく」
と述べています。
ここで「不安」という言葉が出てきますが、アンデシュ・ハンセン氏は同書のなかで、「不安とは、不快感や何かがおかしいという気分を強烈に感じること」であるとし、さらに、
不安を的確に表現すると「事前のストレス」だろう。上司から怒られるとストレスを感じて当然だが、「どうしよう、もし上司に怒られたら」と思うのが不安だ。どちらも脳と身体で同じ反応が起きているが、異なるのはそうなる可能性のある脅威や不安にストレスが引き起こされる点だ。不安には人の数だけ種類があるが、どの不安も基本的には脳が「何かがおかしい」と伝えてきて、それによってストレスのシステムが起動される。
とも説明しています。
「どの不安も基本的には脳が「何かがおかしい」と伝えてきて、それによってストレスのシステムが起動される」理由としては、
安全な生活を送っているはずなのに強い不安を感じてしまう大きな原因としては、脳の警報が、ティーンエイジャーになる前に半数が死んでいた世界に設定されているせいだと考えられる。危険がありそうな場所だけでなく、ありえないような場所にも危険を見出すことで生き延びられる確率が上がったのだ。
とし、さらに、
つまり、不安に苛まれるのはおかしなことではない。おかしいのはむしろ、不安を感じない人がいることだ。腕が強ければ重い物を持ち上げられるし、脚が強ければ速く走ることができるが、脳が強ければストレスや苦難や孤独の影響を受けずにすむわけではなく、生き延びるためにベストを尽くせるのだ。
とも述べています(注1)。
台風が近づいている時に搭乗予定の飛行機がきちんと飛ぶか、自分の不注意から大きな失敗をやらかした時、機嫌次第で言動がころころ変わる上司や教師や親にこっぴどく叱られないかなど、予測できない不確実な状況に置かれたら誰でも不安になるものです(少なくとも私は)。
そもそも「不安」になることは、あらかじめ危険を察知するという点において自然なことであり、また生き延びるために必要なことでもあり、決して「良い」「悪い」でくくれることではないのですが、「運」という観点からは、「不安」な状態が続くことが、余計な「不運」な出来事を引き寄せてしまうことは確かにあるように思います。
というのは、前述したように「運」とは自分でコントロール出来ない、もしくは予測出来ない「ランダムネス」に関わっており、いわゆる「不安」も「不運」も状況をコントロール出来ないことに関係しているからです。
そしてそのことがいわゆる闘争か逃走かという「ストレス反応」を引き起こし、また、不確実な状況をコントロール出来なかったがゆえに、何か大切な物を失ったり、不利益を被ったりした結果、私たちは「運が悪かった」と思うことがあるのです。
ちなみに、「さまざまな状況に脅威や危険を見いだしやすい」、「ほかの人よりも不安感の強い」特性不安の人に関して、バーバラ・ブラッチュリー教授は『運を味方にする 「偶然」の科学』のなかで、神経科学者のソニア・ビショップ氏の研究にふれ、
「特性不安が強い人は、背外側前頭前野の活動が不活発で、なにか気が散ることが起こると、目の前の課題から注意をそらしやすかったのだ」
と述べています。そして、
もし、幸運であるためには注意力を効率よく采配しなければならないのなら、ビショップの研究結果によれば、幸運な人は不運な人よりも不安感を覚えていないうえ、前頭前野の注意制御システムをうまく活用できることになる。
としています。
注1 『ストレス脳』 アンデシュ・ハンセン 著 久山葉子 訳 新潮新書
安全な生活を送っているはずなのに強い不安を感じてしまう大きな原因としては、脳の警報が、ティーンエイジャーになる前に半数が死んでいた世界に設定されているせいだと考えられる。危険がありそうな場所だけでなく、ありえないような場所にも危険を見出すことで生き延びられる確率が上がったのだ。あなたや私はそんなふうに生き延びてきた人の子孫であり、強い不安を感じる傾向は約50%が遺伝子によるものだから、多くの人が世界を実際よりも危険に感じていることになる。
つまり、不安に苛まれるのはおかしなことではない。おかしいのはむしろ、不安を感じない人がいることだ。腕が強ければ重い物を持ち上げられるし、脚が強ければ速く走ることができるが、脳が強ければストレスや苦難や孤独の影響を受けずにすむわけではなく、生き延びるためにベストを尽くせるのだ。脳は心配という感情を湧かせることによって、私たちを引きこもらせたり世界を危険に感じさせたりする。そのせいで脳が機能不全に陥っているとか病気だとか思うなら、「脳の最も重要な任務は生き延びること」だというのを忘れてしまっている。祖先が不安を感じやすくなければ、あなたも私も存在していない――皆がそのことをわかっていればいいのにと思う。
(アンデシュ・ハンセン『ストレス脳』 久山葉子 訳 55頁)
お忙しい中ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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