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近頃、なんだか疲れやすく、どういうわけかメンタルが不調で落ち込みやすいと感じられるならば、「スマホ脳」を疑ってみるとよいかもしれません。
そういうわけで今回は『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン 著 久山葉子 訳 新潮新書)を取り上げたいと思います。
じつは私自身はスマホを持っていないのですが、インターネットが普及してから、ひとつのことに集中できず、読書をしていてもPCやiPadでググりたい衝動に駆られるなど、他のことに気を取られ、注意力が散漫になっていることが多いです。
そして、この『スマホ脳』を読んで、近くに常時接続のデジタル機器を置いておくと、誰もが集中力を維持できない<スマホ脳>に陥ってしまう可能性があるのだと感じました。
ポケットの中のスマホが持つデジタルな魔力を、脳は無意識のレベルで感知し、「スマホを無視すること」に知能の処理能力を使ってしまうようだ。その結果、本来の集中力を発揮できなくなる。よく考えてみると、それほどおかしなことではない。ドーパミンが、何が大事で何に集中すべきかを脳に語りかけるのだから。日に何百回とドーパミンを放出させるスマホ、あなたはそれが気になって仕方がない。
(アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』 久山葉子 訳 94頁)
常にデジタルな邪魔が入ることで、気を散らされることにますます脆弱になるようなのだ。それがこの数年、これだけ大勢の人が、インターネットを使っていないときでも集中できない理由ではないだろうか。私自身も、本を集中して読むことが難しくなった。スマホをサイレントモードにするぐらいでは効果がなく、集中したければ別室に置いておかなくてはいけない。そこまでしても、10年前と同じように本にのめりこむのは難しい。(96頁)
多くの人に同じような経験があるはずだ。気を散らされる存在が当たり前になると、それが存在しないときでも強い欲求を感じるようになる。現代社会では集中力は貴重品になってしまったのだ。(97頁)
スマホはうつの原因なのか?
また『スマホ脳』は、「うつ」や「不眠」といった心の不調とスマホの使用の関係を疑ってみるためには(根拠もしっかりしており)十分な内容であるという感想をもちました。
この本の著者であるアンデシュ・ハンセン氏は、スウェーデン生まれの精神科医であるため、この『スマホ脳』においては、スマートフォンの長期使用とメンタルヘルスの関係について多くが言及されています。
たとえば、
「極端なスマホの使用が、ストレスと不安を引き起こす。だが、何よりも影響を受けているのが睡眠だ。ここ数年、精神科医として患者を診る中で気づいたのは、よく眠れない人が増えていることだ」
と述べられています。
また「スマホのせいでうつになるとは100%断定できない」としたうえで、
私自身はこう考える。過剰なスマホの使用は、うつの危険因子のひとつだと。睡眠不足、座りっぱなしのライフスタイル、社会的な孤立、そしてアルコールの薬物や乱用も、やはりうつになる危険性を高める。スマホが及ぼす最大の影響はむしろ「時間を奪うこと」で、うつから身を守るための運動や人づき合い、睡眠を充分に取る時間がなくなることかもしれない。
(アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』 久山葉子 訳 117頁)
としています。
私自身も、スマホが「うつ」の直接の原因であるとは考えにくいのですが、スマホに時間を費やすことによって「うつから身を守るための運動や人づき合い、睡眠を充分に取る時間がなくなること」が、結果的に「うつ」を引き起こしてしまうことは十分に考えられると思うのです。
精神科を受診する若者が急増した2010年から2016年。その時期に若者の生活に起きた最大の変化、それはスマホからインターネットにアクセスできるようになったことだ。それまでほぼ存在しなかったものに、1日平均4時間を費やすまでになった。若者、いや大人にとっても、これほど休息で大規模な行動の変化は近代になかった。おそらく人類史上一度もなかった。
すでに述べたように、スマホの過剰使用で若者の精神状態が悪くなるメカニズムは複数考えられる。ストレスを引き起こして精神状態を悪化させていることもあれば、若者の自尊心を壊してしまうこともある。フェイスブックの親指マークやインスタグラムのハートによって、常に他人と自分を比較し、1秒ごとに何百人という同年代の若者に批判される。そして、自分がヒエラルキーの最下層にいるように感じてしまう。
さらに問題なのは、それ以外のことをする時間、特に心の不調をガードする活動の時間を奪ってしまうことだ。毎日スクリーンの前で4時間も過ごしていると、子供や若者は遊んだり「本当の」社会的接触を持ったりする暇がなくなる。運動やしっかり睡眠を取る時間もない。大半の人にとってはたいした問題ではないかもしれないが、精神的に脆い人や、スマホやSNSを使いすぎる人にとっては、それがコップから水が溢れる最後の一滴になる可能性がある。
(アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』 久山葉子 訳 194‐195頁)
スマホに費やす時間を、運動・睡眠、瞑想にあてる。
すぐにスマホを捨て、スマホがなかった頃のような生活に戻るようにするといったような、極端な考え方では、スマホ依存の問題が解決されることはないように思います。
それよりもスマホを利用することのメリットだけではなくデメリットも視野に入れ、スマホと適正な距離を保つようにする、そしてスマホから離れたことによってできた空白を、運動や睡眠、瞑想のための時間にするなど、これまでの付き合い方を見直すことが必要なのではないでしょうか。
そういう意味で、本書の「おわりに」著者が書いていることはたいへん印象的でした。
身体を動かすことで集中力が高まり、ストレスへの耐性がつき、記憶も強化されるのはわかっている。研究結果がそう示しているからだ。「祖先が今の私たちよりも身体をよく動かしていたから」ではなく。スマホを使い過ぎると気が散り、よく眠れなくなり、ストレスを感じる。それも研究で結果が出ているからわかることだ。「祖先はスマホを持っていなかったから」ではなく。なぜ人間がこんなふうに機能するのか。進化の観点で考えると、それがわかってくる。そして、人間の本質に深い洞察を与えてくれる。
すでに気づいたかもしれないが、これは答えばかりを集めた本ではない。問いを提起する本でもあるのだ。史上最大の行動変容の中で、人間が自分自身に問いかけなければいけないこと。ましてや、変化のスピードが増しているこの時代なのだから。
(243頁)
「どんな運動も脳に良い」
また、この『スマホ脳』の最後には、
- 「毎日1~2時間、スマホをオフに」
- 「スマホを寝室に置かない」
- 「どんな運動も脳に良い」
など、著者からの「デジタル時代のアドバイス」が示されています。
とくに「どんな運動も脳に良い」ということに関しては、
「脳から見れば、ただ散歩するだけでも驚くほどの効果がある。とにかく大事なのは運動をすること。それで心拍数が上がればなおよい」
「最大限にストレスレベルを下げ、集中力を高めたければ週に3回45分、できれば息が切れて汗もかくまで運動するといい」
と著者のアンデシュ・ハンセン氏は述べています。
ちなみに私自身も、ブログの更新や電子書籍の執筆作業で頭が疲れた時は、ウォーキングや軽いジョギングといった有酸素運動とマインドフルネスを組み合わせて、体を動かすことで脳を適度に休めるようにしています。
以上、今回は話題の新書、『スマホ脳』を取り上げました。
スマホを眺め続けて脳が疲れたら、30分程度のウォーキングを行うなど、体を動かすようにしてみてはいかがでしょうか?
このような適度な運動の実践は「うつ」や「肥満」、「認知症」などの予防対策にもつながると思われます。
ちなみに他の記事では、スマホ脳の問題はドーパミンの放出であるということについて述べていますので、よろしければご参照ください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます(^^♪
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