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今回は心と身体へのアプローチがうつをやわらげるということについてです。
うつの予防対策としては、「脳」に対するアプローチが主流なのかもしれませんが、「心」というものを考えた場合、身体へのアプローチも必要になってくるように思います。
では身体と心はどのようにつながっているのでしょうか?
また、よくうつ病は「心の病」と言われますが、その「心」とはどこを指すのでしょうか?
うつの症状が起きてくる原因のひとつとして、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなど、気分に関係する神経伝達物質が不足していることから、「うつ」が起こってくるのは、「脳」に問題があるからだと考えられがちです。
しかし、その「脳」と神経系でつながっているのは「腸」なのです(「腸脳相関」)。
そのため、以前の記事では、うつの症状を改善し、心の健康を取り戻していくためには、腸内細菌の集まりである腸内フローラのバランスを整えることで腸内環境を改善することが大切だと述べてきました。
つまり、ここで何を述べたいのかといえば、「心の病」を治すための「心」とは、「脳」だけを指すのではないということです。
心と体のつながり「ファイナル・コモン・パスウェイ」とは?
そして、このことについて参考になる記述が、精神科医の最上悠氏の『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』のなかにありますので、少し長くなりますが、引用してみたいと思います。
みなさんのなかには、うつと聞くと、心の症状を思い浮かべる人が多いことでしょう。もちろん、落ち込んだり、不安感に襲われたり、悲観的になったりするのは、うつに多く見られる症状です。しかし、それだけでなく、うつは体にもさまざまな症状をもたらします。これは〝うつ〟という病名ゆえの誤解されやすいところなのですね。
(最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』p28)
心と体のつながりを科学的に説明するのが、〝ファイナル・コモン・パスウェイ(最終共通経路)〟という考え方です。
私たちの体には、情報伝達のネットワークがくまなく張りめぐらされていて、さまざまな情報が脳と体のあちこちを行きかっています。このネットワークはまるで全体が1本の道でつながっているかのように密接に連動しながら、さまざまな用途に使い回されているというのが、この考え方の要旨です。
そして、使い回しであるために、どこかの経路が酷使されると、そのしわ寄せは別のどこかにあらわれます。
たとえば、ひどく悩んだとき、自律神経のバランスが崩れて胃に穴が開いてしまったり、ストレスがたまったとき、免疫力が落ちて風邪やヘルペス疹を患いやすくなったりと、酷使したのは精神面でも、そのしわ寄せが体の不調となってあらわれたりするわけです。
反対に、体の病気があると、うつを患うリスクが高まることも知られています。
(最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』p39~40)
つまり、心の情報伝達ネットワークはまるで1本の道のようにつながっているから、なにかがあれば〝心・体・行動〟のどこにでも、どんな症状でも出る可能性があるのですね。
「心はどこにあるのか?」とは、昔から人類が問い続けてきたことですが、今、この情報伝達ネットワークに思いを馳せてみるならば、脳だけではなく、「頭のてっぺんからつま先まで、ぜんぶ心」ということができるのです。
(最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』p42)
「ファイナル・コモン・パスウェイ」とは「全身に張りめぐらされる情報伝達のネットワーク」。
要するに、「ファイナル・コモン・パスウェイ」とは「全身に張りめぐらされる情報伝達のネットワーク」であり、「思考・感覚から、運動機能、ホルモン系、免疫系まで、心身の働きに関するあらゆる情報がこの1本の道を行きかっている」のです。
そして、
「情報伝達ネットワークは、ひとつの情報システムを共有しているために、いずれかの経路が酷使されると、そのしわ寄せは、〝心・体・行動〟のどこにでも不調としてあらわれる」(最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』p41)
のです。
うつをやわらげていくためには身体とこころ全体のバランスを意識したアプローチが大切。
すなわち、
うつの症状をやわらげていくためには、あたま(脳)だけではなく、からだ全体に意識を向けることで、体と心のバランスを整えていくことが必要になってくる
と思われるのです。
では、そのために具体的にどのようなアプローチが有効なのかといえば、私自身が考えるのは、
食事・運動・瞑想
です。
食事・運動・瞑想の重要性については、以前、記事で書きましたが、まず、食事や食生活の改善は腸内環境を良くしたり、適度な糖質制限によって血糖値の乱高下を防いだり、脳の炎症を抑えたりするために必要です。
また、運動を行うことは、うつの症状がある時は億劫かもしれませんが、日頃からヨガなどのゆっくりとした運動を行うことは、心と体のバランスを調整するために効果的です。
さらに、こまめに1分間のマインドフルネス瞑想を行うなど、瞑想を実践する習慣をもつことは、これまで気づかなかった身体の感覚に気づいたり、自分以外の存在に触れたりするために大切です。
つまり、うつを少しでもやわらげていくために大切なことは、食事・運動・瞑想による、からだとこころの全体のバランスを意識したアプローチなのだと考えられるのです。
さらに食事・運動・瞑想の実践はストレス対策になり、そのことがうつの症状の軽減につながることも十分考えられます。