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そもそも「健康」とは何なのでしょうか?
今回は『癒す心、治る力 自発的治癒とはなにか』(アンドルー・ワイル 著 上野圭一 訳 角川文庫)を、これからの健康とは何か、ということについて考えるために、ご紹介したいと思います。
統合医学の第一人者として知られるアンドルー・ワイル博士によって書かれた、『癒す心、治る力 自発的治癒とはなにか』(上野圭一 訳 角川文庫)は、コロナ禍もしくはアフターコロナの健康と医療のあり方を考えるうえでは、必読だと感じます。
世の中には、様々な健康情報が溢れ、医師や専門家の主張もそれぞれくい違っています。
そのため、何が正しいのか、もしくは誤っているのか、ということを、個人で正確に判断するのは非常に難しく、もし何らかの病気によって自分が苦しんでいる場合は、特定の健康情報によって救いの手が差し伸べられるというよりも、むしろ何を信じていいか分からず、困惑することのほうが多いのかもしれません。
この「困惑する」ということは新型コロナウイルスが蔓延している今現在も、実感している方は多いのではないでしょうか?
しかし、人の体には、治ろうとする力が最初から備わっていると思われるため、何らかの疾患に悩んでいる場合、様々な薬やサプリメントを試すなど、あれこれと策を講じるよりも、己のなかの自然治癒力を妨げないように、生活習慣自体を工夫してみるほうが、本当の意味での「治癒」への近道なのかもしれない、と個人的に思うことがあります。
実際のところ、万人に共通する「健康」というものはどこにもないように感じるのですが、アンドルー・ワイル博士は、『癒す心、治る力』のなかで、「健康」に関して、
健康とは、完全にバランスがとれた状態のことである。そのとき、すべてのシステムは円滑にはたらき、エネルギーが無理なく循環している。それは自然な状態であり、なんの努力もしていない状態である。したがって、からだはバランスを崩したとき、自然な状態にもどろうとする。健康な状態にもどろうとするその勢いは人為的に活かすことが可能であり、また活かすべきである。それを治療という。
(アンドルー・ワイル『癒す心、治る力』 上野圭一 訳 p64)
と述べています。
治癒系とは何か?
また、「治療」ではなく「治癒」というものに関しては、
「治癒の原動力は、生きものとしてのわれわれの、本然の力そのものから生じるのである」
としており、さらに、以下のようにも述べています。
治癒系は、臨床医学という視点からはみえない。またはみるのがむずかしい。しかし、別の観点に立てば、その存在はあまりにもあきらかである。進化における必然性という一点だけを考えてみても、生き物は病気やけがをもたらす力に対抗するための、自己修復メカニズムをもっていなければならないことがわかる。われわれ人間は、種としての長い歴史の大部分を、近代医学も代替医学もなにもなしに、そもそも医師という存在なしにやってきた。種の生存そのもののなかに治癒システムの存在が組み込まれているのである。
(アンドルー・ワイル『癒す心、治る力』 上野圭一 訳 p118)
治療がほどこされようと否と、すべての治癒に共通する最終原因は治癒系にある。それは強調しておきたい。ある治療が効くとき、それは生まれながらに備わっている治癒メカニズムを活性化させることによって効くのだ。治療は――薬剤や手術もふくめてーー治癒を促進し、治癒の障害物をとり除くが、治療と治癒とは同じものではない。治療は外からほどこされ、治癒は内から起こってくる。だからといって、治療を拒否して治癒を待つのは愚かな態度かもしれない。
(アンドルー・ワイル『癒す心、治る力』 上野圭一 訳 p184)
そして、「治癒系を阻害する八大要因」として、ワイル博士は以下を挙げていますが、このあたり、自然治癒力を甦らせるための生活習慣を考えるうえで大変参考になります。
- ①エネルギー不足
- ②循環不全
- ③浅い呼吸
- ④防衛障害
- ⑤有害物質
- ⑥老化
- ⑦心理的要因
- ⑧精神的・霊的問題
健康のためにどう行動するかが大切。
以上ここまで、アンドルー・ワイル博士の『癒す心、治る力』をささやかながらご紹介していきましたが、後半部では、自発的治癒を助けるための食材やハーブ、呼吸法、心の持ち方、代替療法などが紹介されていますので、関心がある方は、本書をじっくりと読んでみると様々な発見があると思います。
ところで、本書では、治療が困難な病気にかかった方々の、奇跡的な治癒へと至った数々の事実がワイル博士によって報告されており、自発的治癒の可能性というものについて肯定的に語られているのですが、しかしだからといって現代医療や西洋医学を完全に否定しているわけではありません。
現代医学のありかたを批判している記述もいくつか見受けられますが、現代医学にも外傷の治療など得意分野があるため、病気になった際に代替療法だけに頼ろうとするのではなく、
「病気になったときは、健康を回復するためにどうすべきか、どんな行動をとるべきかをきめなければならない。その一連の行動をきめるのは自分の責任である」
とワイル博士は述べています。
また、「もっとも重要な判断のポイントは、医師などの専門家に診てもらうことが心身の治癒系を助けることになるか、それともさまたげることになるのかの一点である」としているあたり、読者はしっかりと心に刻んでおく必要があるのかもしれません。
「受容、屈服、降伏――なんと呼ぼうとーー、そのようなこころの転換が、治癒の扉をあけるマスターキーなのかもしれない。」
(アンドルー・ワイル『癒す心、治る力』)
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪