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多くの人が経験したことのある「うつ」には、脳の炎症が関わっているということについてご存知でしょうか?
当ブログでは令和の時代のセルフケアについて述べていますが、今回は脳の炎症がうつの症状を引き起こすということについてです。
うつの症状が起こってくる原因としては、からだや脳の疲労や、一般的に職場や学校などにおける心理社会的ストレスが挙げられることが多いですが、それ以外にも慢性炎症や、脳に起きている「炎症」を疑ってみることも、うつの症状を少しでもやわらげていくためには必要になってくるかもしれません。
では、その「炎症」とは何でしょうか?
「炎症」とは、生体が傷害を受けた際に起こる反応のことで、簡単に言えば、体内で起きる火事のようなものです。
その炎症とはからだにとっては異常事態であって、炎症が起きた体の部位は、腫れや痛み、発熱などが起こります。そしてそのからだで起きた炎症に対して、火消し役として対処するのは私たちの体内に備わっている免疫システムです。
たとえば、金子義保氏は『炎症は万病の元 生活習慣病の真実、医療の現実』のなかで、この炎症について以下のように述べています。
炎症には急性炎症と慢性炎症とがあります。急性炎症は、病原物質を排除して組織を元の状態に回復させる復旧型防御システムです。慢性炎症は組織の改変に伴うもので、適応型防御システムと考えられています。うまく適応できなければ組織や臓器の機能が失われ、生物固体はこの世から退場させられることになります。
(金子義保『炎症は万病の元 生活習慣病の真実、医療の現実』p62)
そして、この炎症とアルツハイマー病をはじめとした脳の疾患の関係性を指摘しているのは、以前取り上げた『「腸の力」であなたは変わる』の著者であるアメリカの神経科医のデイヴィッド・パールマター氏です。
デイヴィッド・パールマター氏が、『「いつものパン」があなたを殺す』のなかで以下のように述べていることは注目に値します。
脳疾患の原因は多くの症例において、たいがいは食事だ。脳の不具合の発生と進行にはいくつかの因子がかかわっているものの、だいたいの場合、炭水化物を食べすぎたとか、健康的な脂肪をほとんど口にしなかったという過ちのせいだ。
この事実を理解するには、あらゆる神経系の病気の中でもっとも恐るべきもの、つまりアルツハイマー病を考えることだ。そしてアルツハイマー病を、食事だけが引き金となる糖尿病の一種という視点で見てみることだ。質の悪い食事をとっている肥満や糖尿病になり得ることは誰もがわかっている。果たして脳も同じように壊れてしまうのか。
(デイヴィッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p43)
脳疾患も含めてすべての変性疾患を引き起こすのが「炎症」であることは、研究者たちにはかなり前から知られていた。そして研究者たちは、グルテン、さらに言えば高炭水化物の食事が脳に達する炎症反応の原因になっていることを見出しつつある。
ふだん、腸内ガス、膨満感、便秘、そして下痢などは比較的すぐに症状が現れるので、消化器系疾患や食物アレルギーには気づきやすい。ところが、脳はとくにわかりにくい器官だということだ。分子レベルではあなたが気づかないうちにずっと激しい攻撃に耐えているかもしれない。頭痛を治そうとしたり、明らかな神経系の問題に対処したりしないかぎり、脳で何が起こっているかはわからず、とうとう手遅れということになり得る。脳疾患に関して言えば、いったん認知症などの診断が下されると、そこからの方向転換は難しいのだ。
(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p53)
「脳の炎症」がパーキンソン病からさまざまな多発性硬化症、癲癇、自閉症、アルツハイマー病、うつ病にいたるまでのあらゆる病気とは、何ら関係がないと思ってしまいがちな理由の一つは、脳には体のほかの部分と違って、痛みを感じる受容体がないためだろう。つまり、脳の炎症を感じることができないのだ。
(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p60~61)
脳の炎症を引き起こすグルテンと糖質
では、脳が炎症を起こしてしまう原因は何でしょうか?
デイヴィッド・パールマター氏が『「いつものパン」があなたを殺す』のなかで主に挙げているのは、たんぱく質の一種であるグルテンと糖質です。
グルテンとは「膠」を意味するラテン語で、タンパク質の混合物だ。粘着性のある物質として作用し、クラッカーや焼き菓子、ピザ生地などのパン製品をつくるときに粉をまとめる。
(中略)
多くのアメリカ人は小麦からこのグルテンを消費している。しかし、グルテンはライ麦、大麦、スペルト小麦、カムット小麦、ブルグア小麦などのさまざまな穀物にも含まれる。
(中略)どんなタンパク質でもアレルギーを引き起こすことがあるように、グルテンもアレルギー反応を生む可能性がある。
(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』 p78~79』)
また、デイヴィッド・パールマター氏は「グルテン過敏症」について以下のように述べています。
さまざまな苦痛の種を抱えて私のところにやってくる患者には、共通する特徴がある。
グルテン過敏症だ。
つまり、グルテンは現代における「毒物」であり、その研究のために脳の不調や疾患について幅広い状況に注目して調べ直さなければならない。その共通点がわかれば、たった一つの処方箋、つまり食事からグルテンを除くことによって、数々の病気の治療が可能になる。
(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』 p76~77』)
あなたは、セリアック病をわずらう人と同じようにグルテンに過敏ではないかもしれないが、神経学的観点から考えると、私たちはみな、グルテンに過敏であろうことがよくわかる。
神経系や脳という人目に触れない奥深い領域で起きているので、多くの人はただそれに気づかないだけだ。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p94)
思い出してほしいのは、実際にあらゆる不調や疾患の核心にあるのは「炎症」だということだ。炎症反応を引き起こすものを体内に取り入れると、さまざまな健康上のリスクにさらされる。これは頭痛や頭がモヤモヤするなどの慢性的な深いからうつ病やアルツハイマー病のような深刻な病気にいたるまでを指す。
さらにいまや、グルテン過敏症と、何千年にもわたって医者たちも理解不能だった脳疾患(統合失調症、癲癇、双極性障害、うつ病、さらに最近の自閉症やADHDなど)との結びつきは証明されている。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p94)
さらに氏は、「炭水化物は、たとえグルテンを含まないものであっても、過剰に摂取すると、グルテンたっぷりの食事と同じくらいダメージを受けてしまう」と述べ、「炭水化物」の摂り過ぎも問題視しており、けっして「グルテン」だけが悪役ではないとしています。
そして、普段の食事を変化させることが、心の健康を取り戻す可能性につながるということを、『「いつものパン」があなたを殺す』のなかではっきりと示しています。
私は、飲食物からグルテンを一切摂らず、炭水化物の代わりに脂肪を摂ることで生活や健康状態を一変させた人たちの研究もしている。
このたった一つの食事の変化によって、うつ病が改善し、慢性疲労が回復し、二型糖尿病が快方に向かい、強迫的な行動に出なくなり、頭のモヤモヤから双極性障害(躁うつ病)にいたるまで多くの症状が治癒するのを目の当たりにしてきた。
(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p110)
うつを少しでもやわらげていくために大切なことは?
うつを少しでもやわらげていくためには、では具体的に食事をどのように変えていけば良いのでしょうか?
食事に関して大切になってくるのは、以前の記事で取り上げた「ゆるやかな糖質制限」と「腸内環境の改善」だと思われます。
そして、うつの症状を少しでもやわらげていくためには、これまで述べてきた「脳」に起きている「炎症」をはじめとして、日頃の食事が脳や心に与える影響についても、ひとつの視点として考えていかなければならないように感じます。
また精神科医の最上悠氏は心理ストレスが脳の炎症を引き起こすと述べていますので、ストレス対策のために、まずは1分間でもよいので日頃からマインドフルネス瞑想などの瞑想をとりいれることも、脳の炎症をやわらげることにつながっていくと思われます。
なお、脳の炎症を抑えるための生活習慣についてはこちらの記事をご覧ください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
うつの予防対策には、食事・運動・瞑想といった生活習慣が大切です。