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心と体の ↓ シフトチェンジ
腸脳力(長沼敬憲『心と体を変える “底力” は “腸” にある 腸脳力』p9を参考に作成)
今回は腸が心の起源であるワケについて、長沼敬憲氏の『心と体を変える “底力” は “腸” にある 腸脳力』を取りあげながら考えてみたいと思います。
前回の記事では、内臓(おなか)を温めることがうつをやわらげるということについて述べました。
では、なぜ内臓(おなか)を温めることがうつをやわらげることにつながるのかといえば、腸をはじめとした内臓こそが、心の起源だからです。
近年は「腸脳相関」「脳腸相関」といったように、腸は心や脳と深い関係にあるとして、注目されるようになりましたが、そもそも日本人は「腹が立つ」「腹黒い」「腹のうちを探る」など、感情を表現する際に、「腹」という言葉を使ってきました。
このことは日本人は昔から己のうちに芽生えた感情を内臓の感覚から読み取っていた証拠であるように思いますが、「心」という、簡単に定義できず、目に見えないものも、「腹」「腸」「内臓」といった存在と無縁ではありません。
しかし近年は、からだをあまり使わず、計算など頭ばかりを使う社会へと変化してきたせいか、だんだん「心」が位置するのも「腹」ではなく「頭」のほうへシフトしてきたように感じます。
このあたりのことに関して、『ミトコンドリア“腸”健康法』などの著作もあるサイエンス・ライターの長沼敬憲氏は、『心と体を変える “底力” は “腸” にある 腸脳力』において、
「私たちは腸から生まれた。脳は決して「根源」ではない」
と述べていることは注目に値します。
また、
生物の系統発生から言うと、心臓と肺は魚の呼吸器官である「鰓」に起源を持っているといいます。そして、この鰓は腸から分化したものです。
進化の系統樹をたどっていくと、私たち人間の直接の祖先にあたる初期の脊椎動物は、口から肛門へと続く一本の消化管、つまり腸だけで成り立っていたことがわかります。この段階ではまだ脳はありません。
腸から心臓や肺のような内臓臓器が生まれ、腸壁の神経と体壁の神経が束ねられるようにして脳が生まれたと考えられています。
心臓に心があるというなら、当然、その根源である腸にも心がある、すなわち「腸が心の起源である」ということになってきます。
(長沼敬憲『心と体を変える “底力” は “腸” にある 腸脳力』p129)
としています。
「腸」をしっかりと健康にすることでこころとからだのバランスを整えていく。
さらに、
- 「まず自分が生物であること、その生物が腸を母体にして生きていること」
- 「考えることの母体は脳に、感じることの母体は腸にある」
と述べ、
「考える前にまず感じてみよう。感じたら、そのまま素直に動いてみよう。―こうした生き方にシフトしていくことが、目の前の閉塞感を突き破り、より大きな力を手に入れるきっかけにもなるでしょう」
としているのです。
すなわち、心を元気にするために大切なのは、「頭」ばかりではなく、「腸」をしっかりと健康にすることで、土台を安定させ、そのことによって、こころとからだのバランスを整えていくことだと思われるのです。
そして、うつの症状を少しでもやわらげていくことに関して言えば、「頭」だけで考えず、「身体感覚」に根差した生き方を目指してみることが、必要になってくるように思います。
そのためには、マインドフルネス瞑想やゆっくりとした運動などをうまく生活に取り入れることが大切になってくるのですが、なかなかやる気が起きないつらい冬場や寒い日などは、暖房器具で心の起源である内臓(おなか)をじっくりと温めるようにするだけでも、気持ちが変わったり、うつの症状はやわらいだりするきっかけになります。