日々、マインドフルネスを実践することによって、いつもの「運が悪い」を変える生き方、始めてみませんか?
以前の記事で、運が悪い時は、無理にプラス思考やポジティブ思考をしないほうがよいということについて述べましたが、このことに関して、「マインドフルネス」だけではなく、「コントロール戦略に否定的」である「ACT」を取り上げました。
「運が悪い」「ツイてない」と感じた時、「ネガティブはいけないぞ、ポジティブにならなきゃ!!」とネガティブ感情を否定したり、無理に抑えつけようとしたり、避けようとしたりしてしまいますが、そうではなく、まずは「受け容れる」ことが大切なのです。
ちなみにACTの専門家である医師・心理療法士のラス・ハリス氏は、『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』(岩下 慶一 訳)のなかで、「コントロール戦略」とは、
「不快な感情を追い払ったり、それを避けたり逃げたりすること」
であるとし、
「闘争戦略」……「望ましくない思考や感情をねじふせようとする」
「逃走戦略」……「それらを避け、逃げようとする」
という二つに分類しています。
そして、
コントロール戦略は、過剰に、あるいは不適切に使用したり、効果が出ない状況や、長い間で生活の質を損なうような使い方をするとすぐに問題を引き起こす。
と述べているのですが、「ACTでは、嫌な思考や感情を変えたり避けたり、追い払おうせずに、それを受け入れることを目指す」というのです。
また不運な出来事に遭遇した際に問題となるのは、「私はいつもツイてない・運が悪い」という思考にとらわれてしまうことですが、ここでその状況を変えるために注目なのは、ACTの「脱フュージョン」(defusion)と呼ばれる技法です。
ラス・ハリス氏は、「脱フュージョンはコントロール戦略とは正反対のもの、つまりアクセプタンス(受容)の戦略だ」とし、
アクセプタンスとは、不快な思考や感情を好きになることではない。ただそれらと格闘するのをやめるだけだ。変化や逃避、除去に無駄なエネルギーを使うのをやめれば、もっと有効なことに使用できる。
とも述べています(注1)。
ここでいう「脱フュージョン」とは、ラス・ハリス氏によれば、ACTの六つの行動原則のうちの一つであり、「思考との新たな関係を築くことにより、それが及ぼす衝撃や影響を弱めることができる」といいます。また、
- 「脱フュージョンの目的は、不快な思考を取り除くことではなく、そのあるがままの姿――単なる言葉の羅列であることに気づき、それと格闘するのを止めることだ」
- 「脱フュージョンの真の目的は、役に立たない思考プロセスからあなたを解き放つことだ。そうすればあなたは意識をもっと重要なものに向けることができる」
とも述べています。
脱フュージョンの目的は、不快な思考を取り除くことではなく、そのあるがままの姿――単なる言葉の羅列であることに気づき、それと格闘するのを止めることだ。思考は時にすぐ収まり、時にしつこく留まる。あなたが最初から思考を追い払えると思っているなら、失望とイライラを引き寄せているようなものだ。
ラス・ハリス『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』 岩下 慶一 訳 70頁
これらのテクニックが気分を良くしてくれるとは思ってはいけない。厄介な思考を脱フュージョンすると、多くの場合気分は良くなる。しかしそれはあくまで副産物であって目的ではない。脱フュージョンの真の目的は、役に立たない思考プロセスからあなたを解き放つことだ。そうすればあなたは意識をもっと重要なものに向けることができる。
同 70頁
この「脱フュージョン」とは、分かりやすく言えば、自分を苦しませるようなやっかいな思考が起きたとしても、そこから距離を置き、巻き込まれずに観察することだと言えます(そしてそのために「心に感謝する」「十回の深呼吸法」などのテクニックを利用します)。
しかしながら「私たちは多くの場合、自分の思考を疑いのない真実として受け止め、全力で注目しなければならない」と思っているものですが、
「思考を、今ここで本当に起こった現実のように感じる」
「思考を真実であると信じ込む」
「思考を真剣に捉え、最大限の注意を向ける」
など、思考へのこのような反応を、心理学の専門用語で「フュージョン」(融合)と呼ぶと、氏は同書のなかで説明しています。
ひとつの出来事に対して、運が「悪い」と判断してしまうのは自分自身のメンタルや心構えの問題でもあるのですが、
- 「運が悪い私はいつも貧乏くじばかりを引いている」
- 「こういう不運な日はろくなことがない」
- 「今日はツイてないから何をやっても失敗する」
などと不運な出来事に遭遇するたびに考えてしまい、そのことが真実であると思い込み、そういった思考にとらわれてしまうことで余計にエネルギーを消耗してしまう……ACTのいう「フュージョン」とは大ざっぱに言えばそのようなことを指します。
そして、「アクセプタンス(受容)の戦略である」、ACTの「脱フュージョン」は、「私は運が悪い」と思い込んでそのことを真実と見なす「フュージョン」の状態から脱け出すために、大変役立つテクニックなのです。
なお、自分で「運が悪い」と思い込むと、そのことによってますます「不運」な出来事を招き寄せてしまうというのは私自身の経験ですが(確証バイアス)、そのような「運が悪い」と考えてしまう状況を変えるために、ACTの「脱フュージョン」という技法は注目に値するのです。
注1
コントロール戦略は、過剰に、あるいは不適切に使用したり、効果が出ない状況や、長い間で生活の質を損なうような使い方をするとすぐに問題を引き起こす。脱フュージョンはコントロール戦略とは正反対のもの、つまりアクセプタンス(受容)の戦略だ。ACTでは、嫌な思考や感情を変えたり避けたり、追い払おうせずに、それを受け入れることを目指す。アクセプタンスとは、不快な思考や感情を好きになることではない。ただそれらと格闘するのをやめるだけだ。変化や逃避、除去に無駄なエネルギーを使うのをやめれば、もっと有効なことに使用できる。
ラス・ハリス『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』 岩下 慶一 訳 73頁
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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