いつもの「運が悪い」「ツイてない」を変える生き方、始めてみませんか?
以前の記事で「運」とはあくまで偶然でランダムであるということについて述べましたが、今回はこの「運」の「悪い」以外の側面に気づくとはどういうことかについて考えてみたいと思います。
日常生活においては、過去に選択したことの結果として「運が悪かった」と考えてしまいます。
たとえば急いでいる時に、いつも通る広い「A」の道ではなく、狭いけれど近道である「B」のほうを選んだことで、運悪く事故に遭ってしまったとしたら、たとえ遠回りでも「B」ではなくいつもの「A」のほうを選んでおけば良かった~、となります。
このことに関して、バーバラ・ブラッチュリー教授は、『運を味方にする 「偶然」の科学』のなかで、
「状況が違っていたら、まったく違う結果がでていただろうと想像する」
という「反実仮想」を取り上げ、心理学者の研究に触れつつ、「ある出来事のなかに変わりやすい点を見つけると、私たちは反事実の結果と事実の結果を比較する」と述べています。
そして、
反実仮想はつねに、物事が起こったあとにおこなう解釈だ。なにか出来事が起こるたびに、私たちは違う結果を想像する。〝ありえたこと、あったかもしれないこと、あったはずのこと〟を考えるのだ。
と述べています(注1)。
この「反実仮想」とは、分かりやすく言えば、「もし~していたら……だっただろうに」といったように、私たちは普段からよくする、ある出来事が起きた後の想像のことをいいます。
そして、この「反実仮想」は、その方向性において、「上方比較」と「下方比較」の二つに分類されるといいます。
「上方比較」……「実際よりいいことが起こったところ」を想像する」 → こうではなく~だったら良かったのに。 ⇒ 運が悪かった。
「下方比較」……「もっと悪い結果になっていたかもしれない」 → そうならなくて良かった。 ⇒ 運が良かった。
すなわち「運が悪い」とは、何か自分自身にとって不都合な出来事が生じた際に、
「もしあの時~していなければ、もっとひどいことになっていたかもしれない」
ではなく、
「あの時~していたら、こんなことにはならずに済んだのに」
と考えてしまうことだと言えます
たとえば、待ち合わせに遅れそうな時に、移動手段として、電車、地下鉄、バス、タクシーのどれを選ぶか迷い、タクシーを選んだけれど、渋滞に巻き込まれ、結局遅刻してしまったとします。
そして結果的に「運が悪かった」と思ったとします。
すなわち、ここでいう「運が悪い」とは、もしタクシーではなく電車や地下鉄を選んでいたら、「遅刻しなかったかもしれない」と考えてしまい、過去の選択を後悔してしまうことなのです。
反対に、普段から自分は「運が良い」と考えている人であれば、もしバスを選んでいたらもっと遅れていたかもしれないし、電車や地下鉄を選んだとしても、何らかのトラブルに巻き込まれ、結局遅刻してしまったかもしれないと思うかもしれないのです。
ちなみに雨や雪の日に自転車に乗っていて、道路で滑ってしまい、体勢を整えようとしてひどい捻挫をしてしまった場合、骨折をしなくて良かった、頭を打たなくて良かったと想像することは下方比較です。
一方、もしあの時、自転車ではなく徒歩やバスで移動したら、こんなことにはならずに済んだのに、と想像することは上方比較です。
このあたりは少し紛らわしいですが、実際の結果よりもネガティブなことを想像すること(下方比較)がポジティブであり、反対に実際の結果よりもポジティブなことを想像すること(上方比較)が、ネガティブなのです。
「運が悪いなあ」「ツイてないな……」と感じた時に、「もしあの時~していれば良かった」ではなく、「あの時~していなければ、もっとひどい結果になっていたかもしれない」と普段から想像できるようになれば、いつもの「運が悪い」は変わっていきます。
もし事故や盗難などの災難に遭っても「運が悪い」とは言い切れず、最悪の事態をまぬがれ、この程度で済んでラッキーだったかもしれないのです。
そしてそのように考えられるために大切なのはやはり「気づき」、運の「悪い」だけではない側面に気づくという、気づきのチカラを日々のマインドフルネス瞑想実践によって養うことなのです。
運がいいかどうかという認識は、反実仮想の方向性でも変わってくる。現実とは違うネガティブな結果を想像するのであれば、災難を避けられた現実に対して下方比較をしたことになり、「自分は運がよかった」と感じる。そして、反実仮想の内容がネガティブになればなるほど、「自分はすごく運がよかった」と思える。「まったく、あんな結果になっていたら、大変なことになっていたな!」と想像するのだ。
その反対に、実際には起こらなかったポジティブな結果を想像して上方比較をした場合は、「自分は運が悪かった」と感じる。そして、反実仮想の内容がポジティブになればなるほど、「自分はすごく運が悪かった」と思うのだ。
バーバラ・ブラッチュリー『運を味方にする 「偶然」の科学』 栗木さつき 訳 95頁
注1 バーバラ・ブラッチュリー『運を味方にする 「偶然」の科学』 栗木さつき 訳
心理学者の研究によれば、私たちは変わりやすい状況の条件に目を向ける。つまり、状況が違っていたら、まったく違う結果がでていただろうと想像するのだ。ある出来事のなかに変わりやすい点を見つけると、私たちは反事実の結果と事実の結果を比較する。
(中略)
反実仮想はつねに、物事が起こったあとにおこなう解釈だ。なにか出来事が起こるたびに、私たちは違う結果を想像する。〝ありえたこと、あったかもしれないこと、あったはずのこと〟を考えるのだ。過去を振り返り、反実仮想と実際に起こったことを比較すると、良かれ悪しかれ、そこでは運が作用したと判断する。反実仮想をおこなうのは、たいていネガティブな出来事が起こった場合だ。そして「ふつうならこんなことが起こるのに」と、事実とは違う結果を想像する。
92-93頁
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪