「腸」と「脳」には、深い関係があることはご存知でしょうか?
今回は『腸と脳 体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』(エムラン・メイヤー 著 高橋洋 訳 紀伊国屋書店)を、腸を元気にする腸活のためのオススメ本として、取り上げたいと思います。
2016年は「腸内フローラ」がホットな話題であったこともあって、
- 『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』(アランナ・コリン 著 矢野真千子 訳 河出書房新社)
- 『土と内臓 微生物がつくる世界』(デイビッド・モンゴメリー+アン・ビクレー 著 片岡夏実 訳 築地書館)
- 『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』(ジャスティン・ソネンバーグ、エリカ・ソネンバーグ 著 早川書房)
など、腸内細菌や微生物に関する興味深い本が各出版社から次々と出版されていましたし、当ブログでも何冊か取り上げてきました。
さらに2018年には『腸と脳 体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』(原題 THE MIND-GUT CONNECTION)という、大変興味深い本の邦訳が紀伊国屋書店から出版されました。
二四時間三六五日、消化管と腸管神経系と脳は、つねに連絡を取り合っている。このコミュニケーションネットワークは、私たちの健康や快適な暮らしに、想像よりもはるかに大事な仕事を担っているのかもしれない。
と書かれているエムラン・メイヤー『腸と脳』は、腸と脳、腸内細菌の関係についての、まさに集大成といった内容です。
「脳腸相関」「腸脳相関」など、腸と脳の関わりがここ数年のあいだに注目されるようになりましたが、腸と脳、そして腸内細菌を含めた微生物の集まり(マイクロバイオータ)との関係について、胃腸病学者である著者のエムラン・メイヤー氏は、以下のように簡潔に述べています。
腸は、他のいかなる組織も凌駕し、脳にさえ匹敵する能力を持つ。専門用語では腸管神経系(ENS)と呼ばれる独自の神経系を備え、「第二の脳」と呼ばれることもある。この第二の脳は、脊髄にも匹敵する五〇〇〇万から一億の神経細胞で構成される。
(エムラン・メイヤー『腸と脳』 高橋洋 訳 紀伊国屋書店 18頁)
腸と脳は、神経、ホルモン、炎症性分子などからなる、双方向の伝達経路を介して密接に結びついている。腸内で生成された豊かな感覚情報は脳に達し(内臓刺激)、機能の調節を指示するシグナルを腸に送り返す(内臓反応)。腸と脳のこの緊密な相互作用は、情動の生成や、最適な腸機能の維持に重要な役割を果たしている。
(同 19頁)
腸とマイクロバイオータと脳の緊密な情報交換は、生涯を通じて二四時間三六五日、寝ても覚めても行き交っている。この三者間のコミュニケーションは、基本的な消化作用を強調して行なうためだけのものではなく、感情、判断、社会化、食事の量など、私たちの経験のあらゆる側面にさまざまな影響を及ぼしている。ゆえに、注意深くこの会話に聞き入れば、私たちは最適な健康を手にすることができるはずだ。
(同 266頁)
また現代の食生活に関しては、たとえ都市生活者が腸内細菌の多様性を維持している狩猟採集民の食事を真似たところで、同じように代謝物が生成されないという指摘がなされていることは注目です。
私たちの宿すマイクロバイオータには適応力がある。しかし、地方の農民や狩猟採集民は、都市生活者が失ってしまったマイクロバイオータの能力を保持していることも確かである。彼らが実践している食習慣をたった今採用しても、都市生活者のマイクロバイオータは、植物性食物を効率的に発酵させるようにも、彼らの腸内と同じ程度に多くの有益な代謝物質を生成するようにもならないだろう。地方の農民や狩猟採集民が宿すいわゆる寛大なマイクロバイオータは、結腸がんや炎症性腸疾患への罹患を防ぎ、腸と脳のコミュニケーションに関与する、エネルギーに満ちた有益な分子、短鎖脂肪酸を豊富に生成する。
それに対し、産業化社会で暮らす人々が宿すマイクロバイオータは構成が「限定」され、果物や野菜などの植物性食物を大量に食べたとしても、それに含まれる複合炭水化物を、効率的に短鎖脂肪酸へ発酵させることができない。
(エムラン・メイヤー『腸と脳』 高橋洋 訳 紀伊国屋書店 222頁)
ところで腸を元気にするためには、食事だけではなく、適度な運動や瞑想、さらにはストレス対策やマイナス感情を溜め込まない、などといったメンタル面からのアプローチも必要になってきますが、「運動」に関してエムラン・メイヤー氏は、
エアロビック体操は、年齢に重ねることで大脳皮質が薄くなっていくのを食い止めるほか、認知機能の改善、ストレス反応の抑制など、脳の構造や機能に有益な効果を及ぼす。腸と腸内微生物と脳の緊密な相互作用を考慮すると、規則的な運動による脳の健康の増進は、まちがいなくマイクロバイオームの健康に資するはずだ。
としています。
さらにエムラン・メイヤー氏は、「瞑想」に関してはマインドフルネス瞑想法を取り上げ、
マインドフルネス・ストレス低減法は、内臓感覚に耳を澄ますことによって、ネガティブな思考や記憶を和らげようとするもので、ひいては脳腸相関の障害を緩和する。
マインドフルネス瞑想法は、一般的には「判断力を行使することなく、今この瞬間に注意を向けること」とされる。それには、「今この瞬間に集中し、それに対する注意を維持すること」「情動をコントロールする能力を向上させること」「自己認識を深めること」という、相互に関連する三つの技術をマスターしなければならない。通常は、身体が脳に送るシグナルの大半は気づかれない。マインドフルネス瞑想法の主な要素は、深い腹式呼吸に結びついた刺激、消化器系の状態などの身体刺激に対して、より深い気づきを得ることにある。健康、あるいは不健康な内臓反応に結びついた内臓感覚に対する気づきによって、効率良く情動をコントロールできるようになる。
と述べています。
『腸と脳』は、数ある腸内フローラ本のなかでも一家に一冊置いておきたいオススメ本。
最後に、エムラン・メイヤー氏はこの本のなかで、「マイクロバイオームの改善による健康増進の指針」として以下を挙げていますので、よろしければ参考にしてみてください。
・自然で有機的なマイクロバイオームを育成する
・動物性脂肪を控える
・腸内微生物の多様性を最大化する
・大量生産された食品や加工食品は避け、なるべく有機栽培で育てられたものを食べる
・発酵食品やプロバイオティクスを摂取する
・妊娠時には特に栄養とストレスに留意する
・食べ過ぎない
・断食をして腸内微生物を飢えさせる
・ストレスフルなとき、怒っているとき、悲しいときは食べるのを控える
・皆で食事を楽しむ(エムラン・メイヤー『腸と脳』 高橋洋 訳 紀伊国屋書店 294頁より抜粋)
この『腸と脳』は数ある腸内フローラ本のなかでも、「腸」や<内臓感覚>など、腸と脳の関わりに関心がある方は誰でも、一家に一冊置いておくと非常に有益であると感じさせてくれる、個人的にとってもオススメできる書籍です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます(^^♪
『腸内フローラ改善習慣で、腸を元気にする生き方 「腸内細菌のバランスを整える」とは目的ではなく「結果」だった。』
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