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今回はうつを治していくための糖質制限について述べていきたいと思います。
近年、糖質制限はダイエットや生活習慣病の予防などに有効であるとして流行るようになりましたが、では、うつを治していくためには、どのような糖質制限が有効なのでしょうか?
まず、うつを良くするための「糖質制限」とは、ごはんやパンなどに含まれる炭水化物を極端に減らすことではないと考えられます。
なぜなら、炭水化物のうちの糖質は、脳や身体の大切なエネルギー源であるため、脳や身体が必要としている分は、ブドウ糖としてしっかりと摂っていかなければならないように思われるからです。
つまり、「糖質制限」とはいっても、砂糖などの糖類(ブドウ糖・果糖)を悪者にしてはいけないのです。
では、うつを治していくための糖質制限とはどのようなものでしょうか?
まずうつの症状をやわらげるための糖質制限として重要になってくるのは、加工食品に含まれている「果糖ブドウ糖液糖」(異性化糖)など急激に血糖値を上げる人工甘味料や白砂糖などを減らすことです。
「うつ」を考える時、血糖値を急激に上げる糖質が問題になってくる理由とは?
もちろん、「うつ」になる理由を全て人工甘味料や白砂糖のせいにするわけではありませんが、なぜ「うつ」の症状の改善を考える時、特に「白砂糖」など、血糖値を急激に上げる糖質が問題になってくるのでしょうか?
その答えは、白砂糖はインスリンの過剰な分泌によって血糖値を乱高下させ(インスリン・スパイク)、不安定にさせるからです。
このことに関しては、薬学博士の生田哲氏の著作で詳しく述べられていますので、引用してみます。
血糖値をうまくコントロールできない状況、言い換えれば、血糖値の上がり下がりが激しい状況を血糖代謝異常(低血糖症)と呼んでいる。血糖代謝異常のおもな症状は、朝起きられない、強い疲労感、気分の落ち込み(うつ症状)、気分のコントロールがきかない、集中力の欠如、物忘れがひどい、イライラ、突然の怒り(キレる)、めまい、ふらつき、悪夢、夢遊病、眠っている間に話す、不安、恐れ、震えなどである。
(生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』p120)
砂糖や砂糖のように高度に精製されたカーボは、脳内の伝達物質に働きかけるばかりでなく、血糖に大きな影響をおよぼします。甘いものを食べると伝達物質レベ ルと血糖がいっしょに上がり、一時的な陶酔感や快感が得られますが、つぎに、両方とも下がります。こうして気分が落ち込み、元気がなくなります。これがうつです。
(生田哲『砂糖をやめればうつにならない』p103)
「低血糖」がうつを引き起こす?
また生田哲氏は『砂糖をやめればうつにならない』のなかで、「低血糖は、マイナス感情、短期、不安、恐れ、うつを引き起こします」と述べています。
実はこの低血糖が「うつ」を引き起こす一つの原因であるという見解については、栄養療法の専門家として有名な溝口徹氏も、『「うつ」は食べ物が原因だった!』のなかで似たようなことを述べているのは、興味深い点です。
ただし、低血糖症というのは、血糖値が低くなることだけが問題になるのではない。上がったり下がったりを繰り返したり、低い値で推移していくという状態もある。インスリンの分泌が正常なかたちから著しく逸脱する人もいるなど、人によってあらわれ方はさまざまだが、一日を通して、安定した血糖値を維持することが困難になることによって、身体や心に起こってくるさまざまな症状が、問題になる病気なのである。
(溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』p111~112)
血糖値の安定が維持できないと、当然、脳に送られるブドウ糖も安定しない。脳にとっては一大事だ。そこで、血糖値が上がればインスリンが放出されるように、血糖値が下がりすぎれば、それに対応してさまざまなホルモンが動く。血糖値が下げるホルモンはインスリン一種類しかないが、上げるホルモンは多数存在していて、それらがさかんに働き出すわけだ。
(溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』p112)
どういったホルモンが優位に出てくるかで、あらわれる症状は違うが、集中力がなくなったり、イライラや不安感が増したり、人によっては眠気をもよおしたり、手のしびれや動悸、頭痛を感じたり、筋肉がこわばったり……など、まさにうつと診断される症状が起こってくるのである。これが低血糖症である。
(溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』p112~113)
血糖値を安定させるような糖質の摂り方がうつをやわらげる。
このように、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖などの血糖値を急激にあげる糖質が、なぜいけないのかといえば、先程も述べたように、インスリン・スパイクと呼ばれる現象によって血糖値が乱高下することにより、精神的に不安定な状態をひき起こすからなのです。
そのため、うつの症状を少しでもやわらげるために大切になってくるのは、血糖値を安定させるような糖質の摂り方だと考えられます。
特にコンビニエンスストアやスーパーマーケットで売られているお菓子やアイスクリーム、清涼飲料水といった加工食品の多くには、大量の白砂糖や、異性化糖が何気なく使われています。
つまり、何気なくどの程度の糖質が含まれているか分からない加工食品を漫然と摂り続けていると、糖質の摂取量と血糖値のコントロールが難しくなるのです。
したがって、美味しいからといって、ついつい加工食品を食べ過ぎてしまっている方は、心・メンタルの健康維持という意味合いにおいては注意したほうが良さそうです。
また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)などの糖質を摂り過ぎることは、脳に炎症を引き起こしてダメージを与えるとも言われています。そしてこの糖質の摂り過ぎや、ほかにもタンパク質の一種である「グルテン」によって引き起こされた炎症が、うつ病の原因のひとつだと指摘する専門家もいます(参考 デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』)。
自分の出来る範囲でゆるやかな糖質制限を。
もちろん、「白砂糖」や果糖ブドウ糖液糖など、血糖値を上げやすい糖質の摂り過ぎが、うつの症状の根本原因であるとは言い切れません。
しかし、普段からそのような糖質を摂り過ぎであり、糖質制限に関心があるという方は、少しずつ自分の出来る範囲でゆるやかな糖質制限を行ってみることをオススメします。
ちなみに、甘い物が好きでやめられないという方は、血糖値を上げにくい低GIの甘味料として、
- アカシアはちみつ(GI値30~40)
- オリゴ糖(GI値10)
- ココナッツシュガー(GI値35)
- アガベシロップ(GI値21)
などを利用してみるのも良いと思います(もちろん、GI値が低いからといって、ついつい摂り過ぎてしまうことには、注意が必要です)。
特に、糖質制限に限らず毎日の食事においてハチミツをうまく利用することは、うつの予防対策にオススメです。
また、前回の記事で述べましたが、うつの症状をやわらげていくためには、腸と脳は神経系でつながっているため、糖質制限ばかりを行うのではなく、腸内環境に気をつけることも大切になってきます。
そのほか、ビタミンB群やビタミンC、ミネラル、アミノ酸等の栄養素も、不足しないようにしっかりと摂ることも、うつを改善していくためには必要だと思われます。
以上、ここまでうつを治していくための糖質制限について述べてきましたが、果糖ブドウ糖液糖や白砂糖など、血糖値を上げやすい糖質の摂り過ぎが気になる方は、うつを少しでも良くしていくために、そのような糖質を避けるゆるやかな糖質制限を自分の出来る範囲で実践してみてください。
繰り返しますが、糖質制限で重要なのは、糖質をゼロにすることではなく、血糖値の上昇をゆるやかにするために、糖質の摂り方に気をつけるということです。
(なお、うつをやわらげていくための食事や、うつを予防するための食事、糖質を選ぶ糖質制限に関しては、リンク先の記事をご参照ください。)
うつの予防対策には、食事・運動・瞑想といった生活習慣が大切です。