contents
今回はトランス脂肪酸が体に悪い理由についてです。
最近、週刊誌などでもよく話題になっている「トランス脂肪酸」は、マーガリンやショートニング、お菓子などの加工食品、フライドポテトなどのファストフード、大手メーカーが製造しているパンなどに含まれているとされていますが、このトランス脂肪酸は大変体に悪いと言われており、体への影響も懸念されます。
では、トランス脂肪酸が体に悪い理由とは一体何なのでしょうか?
トランス脂肪酸は一般的に悪玉コレステロール(LDL)を増やし、代わりに善玉コレステロール(HDL)を減らすと言われています。またトランス脂肪酸が体内に残ると、活性酸素を多量に生み出すため、細胞の老化が促されたり、糖尿病やガンの原因になったりするとされています。
例えば脳科学専門医の山嶋哲盛氏はトランス脂肪酸が体に悪い理由に関して「細胞の働きが阻害されると、血管や脳に障害を起こしたり、さまざまな疾病の原因となります。トランス脂肪酸による代表的な健康被害が、血液中の悪玉コレステロールの増加や動脈硬化です」と述べています(参考 『サラダ油をやめれば認知症にならない』)。
ところでトランス脂肪酸が作られた原因とはそもそも、バターなどの乳製品が飽和脂肪酸と共にコレステロールが多く含まれているため、コレステロールを含まないうえ、多価不飽和脂肪酸に富んだ植物油を摂ったほうが良いという考えがあったからだそうです。そこでコレステロールの含有量が少ない植物油を固形にしたマーガリンが生み出されたのです。
しかし、植物油である多価不飽和脂肪酸は、常温では液体で、酸化しやすい油であるため、常温で固形状にして、しかも空気中に安定したものにするにはどうすればよいかが研究されるようになりました。その結果、多価不飽和脂肪酸に水素を添加するという方法が考えられたのです。
それによって、普通の飽和脂肪酸とよく似ており、少しいびつな脂肪酸である「トランス脂肪酸」と呼ばれるものが出来上がったのです。
トランス脂肪酸が体に悪い理由は、体や脳の細胞に悪影響を与えるから。
脂肪を研究している科学者は、油に水素添加することを「プラスチック化する」と述べているようです。これは冗談ではなく、実際にトランス脂肪酸はプラスチックと同じように、自然界では分解されない物質で、自然界には最初から存在しない物質なのだと言います。
アメリカの自然派運動家であり、自然食品店の経営者でもあるフレッド・ロウ氏は、常連客から聞いたマーガリンの怖さを聞いたのち、その怖さを証明しようとして、マーガリンを日の当たる窓際に2年半も放置していたそうなのですが、なんとそのマーガリンはいくら時間が経っても酸化もしないしカビも生えないし、虫もたからなかったそうです。
そしてロウ氏はそのマーガリンがプラスチックだと思ったのだと言います(参考 鶴見隆史『「酵素の謎」―なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 p202)。
プラスチックと同じであるトランス脂肪酸を体内に取り入れても代謝が出来ないため、その結果、人体に様々な悪影響を及ぼすことになります。体内に入ると、細胞膜は形成されますが、細胞内液への浸透性や細胞内の生化学構造が狂ってしまうことで、糖尿病やホルモン異常、肝臓障害といった様々な病気を発症するリスクが高まってしまいます。
また、細胞を攻撃して遺伝子を傷つける「活性酸素」も生じてきます。
トランス脂肪酸は脳にも悪影響を与える。
さらにトランス脂肪酸は脳にも悪影響を与えると言います。
その理由については、脳を構成する脂質としては不飽和脂肪酸のオメガ3(DHA、EPA、α‐リノレン酸)が欠かせませんが、そのオメガ3脂肪酸が不足している場合にはトランス脂肪酸が構成材料に使われることが考えられると、藤田紘一郎氏は述べています。それにより、「脳の細胞膜が不安定になり、脳の伝達機能が衰えてしまう」というのです。
また藤田氏によれば、イギリス・オックスフォード大学のピュリ医師らが、トランス脂肪酸が脳の活動に必要な酵素を破壊して、注意欠陥障害(ADD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などを引き起こす要因であると報告しているそうです。
トランス脂肪酸は体の健康のためには避けた方が賢明
そのほか体に悪い理由としては、最初に述べたように、トランス脂肪酸は動脈硬化などを引き起こす悪玉コレステロールを増やし、高血圧やがん、心臓疾患などの予防効果がある善玉コレステロールを減らすことが分かっていますので、出来ることなら摂らないほうが良いのですが、トランス脂肪酸の規制に関しては、世界の動向から見て、日本ではかなり遅れているのが現状です。
一方、カナダやデンマーク、中国や韓国などの国は、トランス脂肪酸の体に対する悪影響をきちんと把握し、含有量の規制や表示の義務付けなどの対応を行っています。
そのため日本では、「マーガリン」や「ショートニング」、「サラダ油」などの原材料を使用することで、身の回りの多くの食品にトランス脂肪酸が当たり前のように含まれているのが現状です。
例えば、ハンバーガーやフライドポテトなどのファーストフード、クッキーやスナック菓子といったお菓子、ケーキやプリンなどのデザート、インスタントラーメンやカレールウといった加工食品などです。
ちなみに『病気にならない生き方』の著者であり、胃腸内視鏡外科医である新谷弘実氏は、トランス脂肪酸が含まれた食品は、よく噛んで唾液と混ぜることである程度中和出来ると言われているが、全てが中和出来るわけではない、としています。また、「マーガリンほど体に悪い油はない」と述べています。
したがって、いつまでも健康を維持し、からだを本当に気づかうならば、人体に悪影響を与えるトランス脂肪酸が含まれている食品の過剰摂取は、なるべく避けたほうが賢明だと言えるのです。
『ココナッツオイル健康法』のなかのトランス脂肪酸についての記述
また、著述家で自然療法医のブルース・ファイフ氏による『ココナッツオイル健康法』のなかにも、トランス脂肪酸が体に与える悪影響や身体に悪い理由などが詳しく書かれています。以下、長いですが引用してみます。
(略)トランス脂肪酸はいわば私たちの細胞を固まらせ、機能できなくしてしまう。トランス脂肪酸を食べれば食べるほど、組織は破壊され、やがては組織や臓器全体に深刻な影響が出る。そして病気になる。
(中略)
トランス脂肪酸は、ほかのどんな食用油脂よりも循環器系疾患の発症に影響する、と考える研究者は多い。トランス脂肪酸がアテローム性動脈硬化や心臓病の原因になり得ることは、今では研究で明らかになっている。たとえば動物実験では、トランス脂肪酸を含んだ餌を与えられた豚は、それ以外の脂肪を餌で与えられた豚と比べてアテローム性動脈硬化症が多く発生した。(ブルース・ファイフ『ココナッツオイル健康法』 三木直子訳 p65~66)
トランス脂肪酸は、現代的なテクノロジーが作り出したもので、人間の体にとっては異物である。健康のために必要な天然の脂肪酸とは異なり、私たちの体はトランス脂肪酸を有効に使うことができない。(中略)トランス脂肪酸は、いわば私たちの細胞を固まらせ、機能できなくしてしまう。トランス脂肪酸を食べれば食べるほど、細胞は破壊され、やがては組織や臓器全体に深刻な影響が出る。そして病気になる。
(ブルース・ファイフ『ココナッツオイル健康法』 三木直子訳 p65)
トランス脂肪酸は、ほかのどんな食用油脂よりも循環器系疾患の発症に影響する、と考える研究者は多い。トランス脂肪酸がアテローム性動脈硬化や心臓病の原因になり得ることは、今では研究で明らかになっている。たとえば動物実験では、トランス脂肪酸を含んだ餌を与えられた豚は、それ以外の脂肪を餌で与えられ た豚と比べてアテローム性動脈硬化症が多く発生した。
(同 p66)
トランス脂肪酸が影響を及ぼすのは循環器系だけではない。メアリー・G・エニグ博士によれば、サルの餌にトランス脂肪酸を混ぜて与えると、トランス脂肪酸を与えなかった場合と比べて、赤血球がインスリンとうまく結合せず、糖尿病との関連性が示唆された。ほかにもトランス脂肪酸は数々の健康への悪影響と関連づけられており、その中には、ガン、心臓病、多発性硬化症、憩室炎、糖尿病合併症、その他の変性疾患が含まれる。
水素添加油はテクノロジーの産物であり、おそらく、現在一般的に使用されている食品添加物の中でも最も有害なものである。マーガリン、ショートニング、水素添加及び部分水素添加油を食べれば、あなたはトランス脂肪酸を食べていることになる。(同 p67~68)
体の健康を維持していくためには、油の摂り方に気をつけてみることが大切
以上ここまで、トランス脂肪酸が体に悪いワケについて書いてきましたが、ブルース・ファイフ氏も述べているように、トランス脂肪酸は体に対して様々な悪影響を与えてしまうようです。そのため、からだの健康を維持していくためには、トランス脂肪酸や酸化した油、サラダ油や食品添加物の植物油脂を避けるなど、普段の食事において油の摂り方に気をつけておくことが重要だと思われます。
なお、ブルース・ファイフ氏は、1990年初頭から、アメリカでは体の健康に良いとされるココナッツオイルやパームオイルなどの代わりに、水素添加油(トランス脂肪酸が含まれた油)が、アメリカ大豆協会のネガティブ・キャンペーンによって広まったという歴史的背景について、『ココナッツオイル健康法』のなかで詳しく説明してくれています。
(ちなみにブルース・ファイフ氏の『ココナッツオイル健康法』は、アメリカだけに限らず、人のからだの健康よりも企業や団体の利益ばかりを優先しようとする社会の体質の怖ろしさについて深く考えさせられる一冊です。)