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起業や創作など、新しいことに挑戦してみたけれど、結局のところ長続きしなかったという場合、もしかしたら特定の感情が不足しているのかもしれません。
今回は『なぜ「やる気」は長続きしないのか 心理学が教える感情と成功の意外な関係』(白揚社)を取り上げ、ビジネスや勉強、育児や介護など、途中で挫折せずに自分が取り組んでいることを長続きさせるためには、「感謝の気持ち」が大切であるということについて述べていこうと思います。
かつての私自身がそうでしたが、今日中に終わらせなければならない仕事や明日の試験のための勉強に集中しなければならないのに、海外ドラマの続きが気になったり、買ったばかりの新作ゲームをしたくてたまらなかったりして、なかなか目の前の仕事や勉強に集中できないというのは、よくあることかもしれません。
すなわち、仕事であれ勉強であれ、未来の成功よりも、目の前の報酬を優先させてしまうことが多いのです。
そして、私自身の経験ですが、そもそもやりたくないことをやっている場合、なかなかやる気が起きない・集中力が続かないということに対して、「意思」の力でどうにかしようとすると、結局うまくいかないことが多いのです。
しかし『なぜ「やる気」は長続きしないのか 心理学が教える感情と成功の意外な関係』(デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 白揚社 原題 Emotional Success)を読むと、やる気を長続きさせるための方策として、「感情」が有効であることが分かってきます。
仕事や練習に懸命に取り組んでいるときに、自分の快楽に対する欲求や困難なことに対するフラストレーションを押し殺していると、新たな誘惑に直面したときの意志の力が減退するばかりでなく、現在集中していること自体が(それが何であれ)学びづらくなってしまう。新しい事実を系統だてて覚えたり、古い事実を思い出したりする能力が損なわれてしまうのである。あなたの脳は感情を抑え込んでいるとき、それ以外のことはあまりうまくできなくなる。だから、意思の力を使えば机に座って意識を集中することはできるかもしれないが、成果はそれほど挙がらない可能性がある。
『なぜ「やる気」は長続きしないのか』 デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 73-74頁
ところが「感情」というと、(AIがもてはやされる昨今は特に)どうしても「理性」とは違って、不合理で信用できないものと見なされてしまうのではないでしょうか?
米国ノースイースタン大学の心理学者であるデイヴィッド・デステノ氏は、この『なぜ「やる気」は長続きしないのか』のなかで、「感情」というものについて、
何世紀にもわたって、哲学者、心理学者そして世間一般の人も、どのような決断を下そうか判断する際には、次の二つを競わせていた。「認知」――建前としては合理的かつ論理的で、人を導く役割を果たすと思われている心のメカニズム――と、「感情」――不合理で、気まぐれな要素とみなされ、招いてもいないのに姿を現すように思えるもの――である。そしてほとんどの場合、人間は感情を非難して、認識を称賛する傾向にあった。
としつつ、
「しかし、理性は常に善で、感情は悪といった一面的な考えは、現実を反映しているとはいえず、誤った選択につながりかねない」
としています。
さらに、
実際には感情は、優れた決断を下すためのもっとも強力で有効なメカニズムの一部である。そしてこのシステムは人間が発達させた最初のメカニズムでもある。感情的反応は、人間が未来の計画を立てるための認知能力――すなわち人間の脳の前頭葉に存在している能力――を人類が獲得する、はるか前から存在していた。
『なぜ「やる気」は長続きしないのか』 デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 19頁
と述べています。
長期的な成功のために必要な三つの感情とは?
しかしながら「感情は、優れた決断を下すためのもっとも強力で有効なメカニズムの一部である」とはいっても、社会生活のなかで重要な決断を迫られた際に、たとえば「怒り」や「憎しみ」といった感情によって決断を下すのは得策ではありません。
デイヴィッド・デステノ氏は本書のなかで、「長期的な成功に関していえば、そこで必要となる正しい感情」として、感謝(gratitude)、思いやり(compassion)、誇り(pride)の三つを挙げています。
長期的な成功に関していえば、そこで必要となる正しい感情として、次のものが挙げられる。すなわち、感謝(gratitude)、思いやり(compassion)、誇り(pride)である。このような感情は、幸福、悲しさ、怒り、恐怖などの感情とは違って、社会生活と本質的に結びついていて、社会をうまく機能させるための鍵になる。ようするに社会生活においては、よりすばらしい未来を手に入れるために、いまこの瞬間、進んで犠牲を受け入れる心構えをつねに持っておく必要があるのである。
『なぜ「やる気」は長続きしないのか』 デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 19頁
特に「感謝」については、「感謝ほど過去に重点が置かれた、受動的な性質の感情はないように思える」としつつも、
心理学の観点からいえば、感謝は過去ではなく、未来に関することなのだ。あとで見ていくように、ほかの人と協力する気持ちになっているとき、感謝は人の価値観を変えてしまう。感謝することによって、人間はこれから起こる出来事をよい方向に持っていこうとして、その瞬間、頑張ろうという気持ちにさせてくれる。これは受け身ではなく、極めて積極的な状態である。
と述べていることは注目に値します。
つまり、「感謝することによって、人間はこれから起こる出来事をよい方向に持っていこうとして、その瞬間、頑張ろうという気持ちにさせてくれる」という点から、「感謝」は「過去ではなく、未来に関すること」なのであるというのです。
このことは私自身、仕事などでつらいことがあっても、誰かが何かをしてくれたことに感謝の気持ちが生じたり、自分が行ったことが人から感謝されたりすれば、明日もまた続けていこうと思えてくることからも、よく分かります。
感謝の気持ちは、将来の計画を立てるにあたっても何の助けにならない感情のように思えるかもしれない。後悔の念は別にしたとしても、感謝ほど過去に重点が置かれた、受動的な性質の感情はないように思えるからだ。実際、感謝の気持ちを抱く理由を尋ねてみれば、ほとんどの人は、以前になんらかの方法で、自分一人ではなできなかった(あるいはできそうもなかった)ものを手に入れたり目標を達成したりするのを、誰かに助けてもらったときの話をするだろう。
『なぜ「やる気」は長続きしないのか』 デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 82頁
たしかに感謝には、過去の行動に対してお礼をいったり、自分の願望をつねに一人で叶えられるとは限らないことを認めたりといった側面がある。しかし、本当の目的はじつはそれとはまったく別なところにある。心理学の観点からいえば、感謝は過去ではなく、未来に関することなのだ。あとで見ていくように、ほかの人と協力する気持ちになっているとき、感謝は人の価値観を変えてしまう。感謝することによって、人間はこれから起こる出来事をよい方向に持っていこうとして、その瞬間、頑張ろうという気持ちにさせてくれる。これは受け身ではなく、極めて積極的な状態である。こうして、ほかのすべての感情と同様、感謝の気持ちは次に何をすべきかの決断に影響を及ぼす。
同
この記事のポイントは、やる気が長続きしない場合は、感情を封じ込めようとするのではなく、特に感謝(gratitude)、思いやり(compassion)、誇り(pride)といった感情に注目することが大事であるということです。
そしてそのことでビジネスであれ、プライベートのことであれ、結果的にうまくいく(成功する)可能性が高くなるということです。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪