セルフ・コンパッションはなぜ「社会的孤立」による健康への悪影響をやわらげるのか?

セルフ・コンパッション

セルフ・コンパッションはなぜ「社会的孤立」による健康への悪影響をやわらげるのか?

ひとりでいることがつらい……そんな時は、自分自身を思いやる「セルフ・コンパッション」という種を自分の中にまいてみませんか?

ひとりでいることがつらい……そんな時は、自分自身を思いやる「セルフ・コンパッション」という種を自分の中にまいてみませんか?

 

私自身、余計なことをぐるぐると考えて苦しい思いをしてしまうのは、近くに誰か話し相手がいる時ではなく、たいてい「孤独」の時です。

独りになると、過去に起きたイヤな出来事の記憶を思い出し、恥ずかしい気持ちになったり、自己否定感や罪悪感、怒りなどに囚われたりすることがあるかもしれません。

また、他人と比較して、挫折感や敗北感を味わったり、仕事や恋愛でうまくいっている人に対して、ねたみや憎しみの気持ちをおぼえたりすることもあるかもしれません。

もちろん、独りでいることが悪いわけではなく、孤独といっても、あえて集団の中に身を置かないで、意図的に一人で過ごす「孤独」(solitude)には、自分自身の内面と向き合ったり、趣味に没頭して充実した自分時間を過ごせたりするというメリットがあります。

 

しかし、社会とのつながりが欠如し、客観的に他者との交流が乏しい状態を指す「社会的孤立」(social isolation)と呼ばれる状況に長期間置かれると、

  • 寿命の短縮

  • 心血管系疾患のリスク上昇

  • 免疫力の低下

  • 認知機能の低下と認知症発症のリスク上昇

  • うつ・自殺リスクの上昇

など、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるとされています。

 

社会的孤立とストレス反応の関係。

社会的孤立とストレス反応の関係。

ではなぜ社会的に孤立すると、様々な疾患のリスクが上昇するのでしょうか?

このことには、いわゆる「ストレス反応」が関係しているように思います。

この「ストレス反応」とは、私たちの体が、外部または内部の「ストレッサー(ストレスの原因)」に対して適応しようとする生理的・心理的な反応のことを指し、自律神経系のうちの交感神経が活性化し、「戦うか逃げるか(Fight or Flight)」の反応が起きます。

 

「ストレス反応」による主な変化

  • 心拍数・血圧の上昇

  • 呼吸が浅く早くなる

  • 筋肉の緊張

  • 消化機能の低下

  • アドレナリンやコルチゾールなどのホルモン分泌

 

つまり、頭では「独りでもへっちゃらだ」と思ったとしても、体はひとりでいる状態がずっと続くと、本能的に不安や危険を感じてしまう、つまりストレス状態に置かれてしまうのです。

特に事件や事故に巻き込まれたり、大きな自然災害などに遭遇したりした時は、「独りでは不安」と心理的ストレスを感じ、「誰でもいいからそばにいて」と思うことは多いのではないでしょうか?

またSNSを通じた知り合いがたくさんいたり、何らかのコミュニティの属していたりしたとしても、自分の話を親身になって聴いてくれるといった、本当に心を通わせられる人が一人もいなければ、孤独感や不安感がずっと続くことは十分考えられます。

 

ちなみにこの「孤独」と「ストレス反応」の関係について参考になるのは、精神科医のアンデシュ・ハンセン氏が書いた『ストレス脳』(久山葉子 訳)という一冊です。

アンデシュ・ハンセン氏は『ストレス脳』のなかで、

交感神経は「闘争か逃走か」に関わっていて、あなたが恐怖を感じたり、腹を立てたり、神経が昂ったりすると起動し、心拍数と血圧を上げ、血液を筋肉に送って行動を起こさせる。つまり攻撃に出るか尻尾を巻いて逃げさせるのだ。

とし、「孤独は交感神経を活発にする。落ち着きや消化ではなく、「闘争か逃走か」に関わるほうの自律神経をだ」と述べています。

 

『ストレス脳』

またアンデシュ・ハンセン氏は、

地球上にいた99・9%の時間、私たちは生き延びるためにお互いを必要としてきた。自然の脅威や災害を生き延びた人々――だからこそあなたや私の祖先なのだが――彼らは一緒に生き延びてきたのだ。

集団は生存を意味し、社会的な絆を大切にしたいという強い欲求をもっていれば命をつないでいけるオッズが高かった。脳はつまり集団に属すと幸福感という報酬を与えてくれるが、それはまったく自己中心的な理由によるもので、集団でいれば自分の命を守れる可能性が高いからというだけだ。

とし、そして、

独りでいると、脳はこれが誰にも助けてもらえない状態だと解釈し、危険に対して警戒しておかなくてはと考える。すると身体は軽度ではあるが長期的なストレスを抱えたままいつでも警報を鳴らせる状態、つまり交感神経が優位な状態で暮らし続けることになる。長期的なストレスは血圧を上昇させ、炎症の度合いを上げる。

としたうえで、

「孤独はつまり脳に警戒態勢の段階を引き上げさせ、周囲には脅威が溢れていると感じさせる」

とも述べています。

 

つまり集団から離れていることが危険であり脅威であると脳が認識すれば、ストレス反応が起き、そしてそのことが慢性的になると、心身に対して様々な悪影響を及ぼしてしまうと考えられるのです。

そしてそのことに対する処方箋としてオススメしたいのは、セルフ・コンパッションの実践なのです。

 

「つながり」と「安心感」は社会的孤立に対する処方箋。

そもそも人間は社会的な動物ですから、社会的孤立によって、人との交流やつながりが断たれ、不安な(すなわち安心できない)状態、何だかイライラするといった精神的なストレスが続いてしまうのであれば、そのことが心身の健康に対して悪影響を与えてしまうことは十分考えられるのです。

そのため、反対に、もし「つながり」と「安心感」を自分の中に作り出すことが出来れば、そのことが社会的孤立に対する処方箋になる可能性が生じてくるのです。

もし「つながり」と「安心感」を自分の中に作り出すことが出来れば、そのことが社会的孤立に対する処方箋になる可能性が生じてくる

「私たちの脳と体には、世話をする能力も、世話をしてもらう能力も、生得的に備わっている」

私たちの脳は、実に、自他をケアするよう設計されているのである

とするクリスティン・ネフ博士は、すべての哺乳類は、「ケアする者とその子との間に強い情緒的絆を生む一連の行動をいう」、「愛着(アタッチメント)システム」を備えて生まれてくると『セルフ・コンパッション』のなかで述べています。

『セルフ・コンパッション [新訳版] 』 クリスティン・ネフ 著 浅田仁子 訳 金剛出版

『セルフ・コンパッション [新訳版] 』 クリスティン・ネフ 著 浅田仁子 訳 金剛出版

心理学者ジョン・ボウルビィの主張から、「子供は、気が動転したり、恐怖を感じたりしたとき、親に慰めてもらい、支えになってもらうと、親を信頼する」ようになり、「親を「安全な基地」として利用できるようになっていく」といいます。

しかし一方で「親が必ずしも支えになるわけではなかったり、子どもを冷たくあしらったり拒絶したりすると、子どもは、いわゆる「不安定なアタッチメントの絆」を形成」し、「この世界が実は安全ではなく、親には頼れないということを学び取る」とクリスティン・ネフ博士はいうのです。

そして、「親に対して安定したアタッチメントの絆を形成している場合、子どもは、自分が愛されるに値する存在だと感じる」のですが、「親に対して不安定なアタッチメントの絆を形成している場合、子どもは、自分には価値がなく、愛してもらえない存在だと感じがちであり、他者は信頼できないと思う傾向がある」としています。

さらに、

「不安定なアタッチメントの絆を形成している人のほうが、安定したアタッチメントの絆を形成している人よりも、セルフ・コンパッションのレベルが低いということが、私たちの研究によって明らかになっている」

とも述べています(1)。

 

なお、心理学におけるアタッチメント(Attachment)とは、特定の他者との情緒的な結びつきや愛着関係を指します。

特に、乳幼児と養育者(通常は母親)との関係性を中心に研究されてきましたが、成人期にも人間関係の基盤となる重要な概念であるとされています(アタッチメント理論は、ジョン・ボウルビィによって提唱され、後にメアリー・エインスワースによって実証的に発展)。

 

心理学におけるアタッチメントの基本的な考え方

  • 人間は生得的に愛着を形成する欲求を持っている。

  • 幼少期に形成されたアタッチメントのパターンは、その後の対人関係や自己認識に影響を与える。

 

ここで何をお伝えしたいのかといえば、アタッチメントが安定していると成長した後に、たとえ安全基地である親と離れても安心していられるのですが、親の養育の仕方が不適切でアタッチメントが不安定であると、大人になってもどこか不安感がつきまとうということです(かくいう私自身がそうでした)。

発達性トラウマも関わる「不適切養育」については以前の記事で取り上げた花丘ちぐさ氏の著作に詳しいですが、そういった「私は親に優しくされなかった」という思いと孤独感と自己否定感を心のどこかに抱え、そのことに苛まれているという方に「つながり」と「安心感」を育むための、セルフ・コンパッションの日々の実践をお勧めしたいのです。

 

ちなみにセルフコンパッションとは、困難や失敗の中にある自分に対して、思いやりと優しさを持って接する姿勢のことです。批判するのではなく、理解し、支える。これは「自己憐憫」や「甘やかし」とは異なります。

クリスティン・ネフ博士の研究によれば、セルフコンパッションは3つの要素から成り立っています。

  1. 自分への優しさ(Self-Kindness)
  2. 共通の人間性の理解(Common Humanity)
  3. マインドフルネス(Mindfulness)

 

これらがバランスよく働くことで、自己否定から自己受容へと心がシフトします。

たとえば失敗したとき、「私は何てダメなんだ」と自責するのではなく、「失敗するのは人間として自然なこと。誰にでもある」と受け止め、「今つらいけど、自分を支えよう」と声をかける。

それがセルフコンパッションなのです。

 

注釈
1 『セルフ・コンパッション [新訳版] 』 クリスティン・ネフ 著 浅田仁子 訳 金剛出版

親に対して安定したアタッチメントの絆を形成している場合、子どもは、自分が愛されるに値する存在だと感じる。そして、一般的に、健全で幸せな大人になり、慰めと支えを他者に頼ることができると信じて、安心している。一方、親に対して不安定なアタッチメントの絆を形成している場合、子どもは、自分には価値がなく、愛してもらえない存在だと感じがちであり、他者は信頼できないと思う傾向がある。この状態は、広範囲に浸透していく不安感を生み出すため、長期の感情的苦悩の原因となったり、その後の人生で、親密で安定した人間関係を構築する能力に影響を与えたりする可能性がある。

したがって、不安定なアタッチメントの絆を形成している人のほうが、安定したアタッチメントの絆を形成している人よりも、セルフ・コンパッションのレベルが低いということが、私たちの研究によって明らかになっているが、これはなんら驚くことではないだろう。

(45頁)

 

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます😊

 

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(なお、健康についてはそれぞれ個人差があり、誰にとっても100%正しい情報というのは考えにくいため、当ブログの記事内容については参考程度に止めておいていただければ幸いです)。

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