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日々の生活において、仕事や家事、育児や介護に追われ、やらなければならないことはたくさんあるのに、
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どういうわけか疲れやすい
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ストレスでイライラしやすい
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気分が落ち込みやすい。
といったことにお悩みではありませんか?
私自身、若い頃からずっとこのような症状に悩まされていたのですが、ここ数年の間に、これらのことには体内のエネルギーの不足が関係していることに気づいたのです。
たとえば疲れがなかなか取れないといった時に、食事による栄養の摂取や十分な睡眠といった特定の方法ばかりに気をとられ、全体(エネルギー)を見ることが出来ていなかったという点では、まさに「木を見て森を見ず」だったのです。
つまり、ここで何をお伝えしたいのかといえば、何らかの不調を解消したいという場合は、「部分」ではなく「全体」を見渡すことが大切であるということなのです。
ちなみに「エネルギー」とは、大ざっぱにいえば、
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物理的には「物体やシステムが仕事をする能力」
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生命的には「体を動かすための燃料・生命力・心理的な活力」
のことをいいます。
そしてこのエネルギーは宇宙や太陽からもたらされています。
分かりやすく言えば、生きとし生けるものはみな、宇宙や太陽からエネルギーを与えられることで生かされている(生きていられる)のですね。
ミトコンドリアとは何か?

そして、私たち「ヒト」におけるエネルギー産生には、「エネルギー産生工場」ともいわれる「ミトコンドリア」が関わっています。
この「ミトコンドリア」は、私たちの細胞内に存在しており、一般的に細胞小器官(オルガネラ)と呼ばれています。
ミトコンドリアは外側から見た場合、外膜、膜間腔、内膜(クリステを含む)、マトリックスという4つの部分から出来ていることが分かります。
またミトコンドリアの大きさは1~5ミクロン程度で、太さはおよそ0.5ミクロンだとされています。
日々の生活において、ミトコンドリアの存在を意識することはあまりないかもしれませんが、そのミトコンドリアは、私たちの細胞に100個から1000個程度存在していると言われています。
そのため、もし人間の細胞の数を60兆個だとするならば、私たちの体には1京にものぼるミトコンドリアが存在していることになります。
ちなみに、心筋細胞、脳神経細胞、骨格筋のうちの赤筋細胞といった、休むことなく活動し続けなければならない体の部位には、特に多くのミトコンドリアが存在しているといいます。
そして、ヒト全てのミトコンドリアの量は、驚くことに、ヒトの体重のおよそ10分の1にもなるとされています。
私たちの生命活動を支える「ATP」
ちなみに「ミトコンドリア」はエネルギー自体を産生しているわけではなく、合成しているのは「ATP」(アデノシン3リン酸)と呼ばれる化合物です。
この「ATP」がエネルギーの受け渡し、「エネルギー通貨」としての役割を果たしており、筋肉の収縮や神経活動など、私たちの基本的な生命活動を維持しているのです。
ちなみにATPは私たちが食事や呼吸を行うことでミトコンドリアによって作られますが、お金のように貯蓄することは出来ないため、1日に延べ50~100kgほどのATPが作られては消費されています。
つまりATPは、体内で必要に応じてエネルギーとして使われるのです(1)。
参考 ミトコンドリアによるATP合成の仕組み

ミトコンドリアは、私たちが摂取した糖や脂肪などの栄養素を酸素を使って分解し、その化学エネルギーをATPに変換します。このプロセスは、まるで工場で製品が作られるように、いくつかの段階を経て行われます。
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TCA回路(クエン酸回路)
まず、ミトコンドリアは細胞質から送られてきた栄養素の分解物を取り込み、TCA回路と呼ばれる化学反応のサイクルを回します。この段階で、エネルギーを持つ電子がトランスポーターに渡されます。 -
電子伝達系と酸化的リン酸化
次に、その電子はミトコンドリアの内膜に存在する呼吸鎖複合体という一連のタンパク質の流れを伝わっていきます。この流れのエネルギーを利用して、水素イオンが膜を越えて汲み出され、膜の内と外に濃度差が生まれます。 -
ATP合成
濃度が高まった水素イオンが、まるでダムの水が水車を回すようにATP合成酵素という特殊なタンパク質を通過します。この回転エネルギーによって、大量のATPが効率的に合成されるのです。この酸素を使ったATP合成は、酸素を使わない方法に比べて約20倍も効率が良いため、多細胞生物が複雑な生命活動を維持する上で不可欠な役割を担っています。
すなわち、ミトコンドリアを活性化することが、体のエネルギーの容量を増やし、そしてそのことがエネルギッシュで元気な毎日を送れるようになることへとつながっていくのです。
このことに関して、モリー・マルーフ医学博士は、『脳と身体を最適化せよ!』(矢島麻里子 訳)のなかで、
ミトコンドリアは細胞の発電所の役割を果たす細胞内器官であり、電荷を蓄えるバッテリーだ。人生を輝かせ続けることができるかどうかは、ミトコンドリアがいかにうまくエネルギーをつくり、蓄え、使えるかにかかっている。
十分なエネルギーがなければ、身体はやるべき仕事ができない。人生を活気づけることができない。スパークの強さとエネルギー産生能力が、あなたの体調を左右するのだ。
と述べています。
しかしその一方で、
エネルギーが十分でないとき、私たちはその不調を感じることができる。
脳が最適に機能せず、身体が効率よく動かず、人生がより困難で負担に感じられ、満足感を得られない。
まだ病気ではなくても、エネルギー産生不足が続けば、そのうち病気になるのはほぼ間違いない。エネルギーは寿命(命を長さ)と健康寿命(健康でいられる期間)の両方を決定づける主要な基本要素なのだ。
長生きをして、命が尽きるまで人生を楽しみたいなら、エネルギー容量を増やすことに力を注ぐべきだ。
とも述べています。

つまり、「ミトコンドリアは細胞の発電所の役割を果たす細胞内器官であり、電荷を蓄えるバッテリー」であるため、毎日ストレスや疲れを溜めることなく生き生きと生活したいのであれば、運動をはじめとした生活習慣によってミトコンドリアを活性化させて、エネルギー容量を増やすことが重要になってくるのです。
また、慢性疲労や慢性ストレスといった不調に悩まされている場合は、スマホでいえばバッテリーの残量が少ないのに、様々なタスクをこなそうとしていることに似ているため、エネルギーが欠乏している状態で何かを行うのではなく、きちんと充電する(休息する)ことが必要になってきます。
もしたくさんの仕事をこなしている最中に、疲れを感じたりストレスでイライラしたりするのであれば、そのことは、「あなたのエネルギーが不足している」「足りなくなってきている」というサインなのです。
すなわち、ここで何をお伝えしたいのかといえば、エネルギーをきちんと使えるようになり、心身の不調を解消していくためには、ミトコンドリアを最適化、すなわち、細胞内のミトコンドリアの機能を向上させ、エネルギー生産効率を高めることが大切であるということです。

このことに関して、モリー・マルーフ博士が、
「ミトコンドリアはこのエネルギーを蓄える「バッテリー」と、エネルギーを送りこむ「コンデンサー」の両方の役割を果たす」
とし(2)、
「私たちの身体は、細胞が生み出したエネルギーを使って働いている」
「細胞レベルでエネルギーを失えば、生活レベルでもエネルギーを失ってしまうのだ」
と述べていることは傾聴に値します(3)。
次回の記事、
「なぜいつも疲れてしまうの? ミトコンドリアと慢性疲労の関係とは?」
へと続きます。
注釈
1 ニック・レーン『生命、エネルギー、進化』 斉藤隆央 訳 みすず書房
生物が生きるのには、途方もない量のエネルギーが必要となる。あらゆる生体細胞が用いるエネルギー「通貨」はATPという分子で、ATPはアデノシン三リン酸を略したものだ(しかし名前の話は別にいい)。ATPはスロットマシンのコインの役目を果たす。マシンを一度回すエネルギーを与えるが、直後に動きを止めるのだ。ATPの場合、「マシン」は一般にタンパク質である。
ATPは、ある安定した状態から別の状態へ変化するエネルギーを与える。スイッチを上から下に倒すように。タンパク質では、スイッチはある安定した立体構造から別の立体構造に変化させる。スイッチを元に戻すには、またATPが要る。スロットマシンをもう一度回すのに、コインをまた投入するのとまったく同じだ。細胞をタンパク質のマシンでいっぱいの巨大なカジノと見なし、どのマシンもこのようにATPのコインで動くのだとしよう。1個の細胞は、毎秒およそ1000万個のATP分子を消費している! その数は息をのむばかりだ。
(73頁)
2 『脳と身体を最適化せよ! 「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』 モリー・マルーフ 著 矢島麻里子 訳 ダイヤモンド社
ずっとさかのぼれば、元々エネルギーは太陽からもたらされている。植物は太陽光を取り込み、細胞内にエネルギーとして蓄える。動物は植物を食べ、動物の体内にあるミトコンドリアが植物の中のエネルギーを糧に動物のエネルギーをつくり出す。
私たちが動物や植物を食べると、そこに蓄えられていたエネルギーの体内のミトコンドリアが取り込んで、エネルギーをつくる。
エネルギー産生自体は、水力発電ダムの貯水池の水をゆっくりとくみ上げる太陽光発電ポンプに似ている。エネルギーが必要になると、ダムが解放されて水が流れ出し、タービンが回転してエネルギーを生み出すのだ。
ミトコンドリアの場合、エネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)の形でつくられる。ATPはミトコンドリアによって産生、貯蔵、消費される細胞内のエネルギー通貨だ。
ミトコンドリアはこのエネルギーを蓄える「バッテリー」と、エネルギーを送りこむ「コンデンサー」の両方の役割を果たす。(64頁)
3 前掲書
私たちの身体は、細胞が生み出したエネルギーを使って働いている。それは細胞レベル(細胞からの老廃物の除去など)でもそれ以上のレベル(体格の形成や筋肉の使用など)でも同じだ。
私たちは細胞でできているため、私たちの行動すべてが、目で見て認識できるマクロレベル(家を掃除する、庭の芝刈りをする、脳を使って仕事する、セックスする、走る、話すなど、つまりは生活全般)だけでなく、エネルギーがつくられている細胞レベルでも起きている。
そのため、ミトコンドリアがエネルギーをつくるために必要なものをすべて受け取らなかったときに、私たちはそれに気づく。
細胞レベルでエネルギーを失えば、生活レベルでもエネルギーを失ってしまうのだ!(65頁)
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。


























