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現代人は仕事のストレスで常に交感神経が優位になり、心身のバランスを崩しやすいと言われています。しかしだからといって、ただ何となく休めばいいというわけではありません。身体が最もよく機能するのは、交感神経と副交感神経が共に高いレベルで活動している状態なのです。
そういうわけで今回の記事では、背骨を伸ばし、肩の力を抜くというシンプルな動作から、自律神経を調律し、理想的な「集中とリラックスの両立」を実現する方法をお伝えします。
瞑想は集中とリラックスが両立している。
先日の記事で、瞑想は自己肯定感や集中力や観察力を養うのに最適であるということについて述べましたが、ヨガ指導者であるケン・ハラクマ氏が瞑想について以下のように述べていることは、瞑想を実践していくにあたって大変参考になります。
瞑想は向こうからやってくる。ヨガでは、こういう言い方をよくします。自分が主体的に瞑想しようと思っているうちは、マインドが動いて頭で考えてしまっている証拠。最初は、「瞑想するぞ」「雑念を払うぞ」と構えてしまうかもしれませんが、あなたは、吸うときと吐くときの感覚をただ味わっていたり、雑念と思われる事柄が自分の意識に向かってくる様を観察していればいいのです。
ケン・ハラクマ『ヨガライフ 体と心が目覚める生き方』 162頁
また「瞑想の定義とは、気持ちがリラックスしていて、意識は覚醒していることです。この状態が保てるなら、瞑想するのは、朝でも夜でもかまいません」とも述べています。

では、「気持ちがリラックスしていて、意識は覚醒していること」とは一体どういうことでしょうか?
ヨーガ・瞑想指導者の綿本彰氏も著作のなかで、「瞑想とは「相反する二極の脳の状態が両立した状態」」であるとし、以下のように述べています。
瞑想とは「集中と緊張が同居している状態」ではなく、「大らかさと眠気が共存している状態」でもありません。集中しているけれど大らか、大らかだけれども集中している状態なのです。この相反する二極のメンタルを同時に育むことが、瞑想の要となります。
綿本彰『一瞬で自己肯定を上げる瞑想法』 19頁
さらに「集中状態は背骨の伸びに表れ、大らかさは首や肩まわりの脱力に表れます」とも述べています。
ケン・ハラクマ氏や綿本彰氏が瞑想について述べようとしていることは「集中しているけれどリラックスしている(リラックスしているけれど集中している)」、もしくは「緊張しているけれどゆるんでいる(ゆるんでいるけれど緊張している)」状態に近いのだと推察されます。
また仏典にある、お釈迦様がソーナという比丘に、(琴の)弦は締めすぎても緩めすぎても、いい音は出ない、程よく締められてこそいい音が出る、と厳しい修行のやりすぎを諫(いさ)めたという、極端を避ける「中道(ちゅうどう)」の精神を伝えたエピソードが思い出されます。
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弦を強く締めすぎると(過度な集中・緊張)・・・弦は切れてしまい、美しい音は出ません。瞑想においては「雑念を払わなければ!」「悟らなければ!」という執念になり、心に余裕がなくなります。
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弦を緩めすぎると(過度なリラックス・怠惰)・・・音は鳴りません。瞑想においては、単なる居眠りや妄想に耽る状態(昏沈)になり、意識の覚醒が失われます。
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ちょうど良い加減に張ると(中道)・・・はじめて素晴らしい音を奏でることができます。

自律神経のバランスから見る瞑想
すなわち大切なのは、緊張しすぎるのではなく、かといってリラックスしすぎるのでもないということです。このことを自律神経の観点から見ると、次のように整理できます。
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意識の覚醒(集中)
適度な交感神経の働き。これがあるからこそ、私たちは「今・ここ」に意識を留め、眠りに落ちることなく自分を観察できます。 -
気持ちのリラックス(大らかさ)
豊かな副交感神経の働き。これがあるからこそ、筋肉の緊張が解け、血管が拡張し、脳が「安全である」と認識して深い休息に入れます。
ちなみに「ゾーン」や「フロー」と呼ばれる状態は、この交感神経と副交感神経のバランスが高いレベルで保たれている状態だとされています。
現代人が陥りやすい「バランスの崩れ」
なお現代社会においては、弦を締めすぎるか(交感神経 ≒ アクセル)、あるいは疲れ果てて弦をゆるめすぎるか(副交感神経 ≒ ブレーキ)、そのどちらかに振れがちであると考えられます。
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弦がキツすぎる状態
常に「何かをしなければ」という焦りや怒り、劣等感に苛まれているとき。これはマインドが暴走し、自律神経が戦闘モードで固定されています。 -
弦がユルユルの状態
何のやる気も起きず、ただ漫然と時間を過ごす時。意識がぼんやりして、自分を客観視する「覚醒」が失われています。
他の記事で、現代人はストレスによって交感神経が優位になりがちであるため、呼吸やヨガのアーサナによって副交感神経を働かせることを強調してきましたが、かといって副交感神経ばかりを活性化させれば良いというわけではないのです。
自律神経の専門家として知られている順天堂大学教授の小林弘幸氏が、『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』のなかで、
「体がもっともよい状態で機能するのは、実は、交感神経も副交感神経も両方高いレベルで活動している状態のとき」
と述べているように、自律神経は一方に偏ることなく、両方が適度に働くことが大切になってきます。

すなわち、ヨガ初心者の方が瞑想する際、最初は以下の三つを意識することが肝要になってきます。
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安楽座などで下半身の土台を安定させたら、背骨をスッと気持ちよく伸ばす。
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こめかみの辺りや首、肩など上半身の力を程よく抜く。
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自然なリズムでゆっくりと呼吸し、あるがままを観察する。
そして瞑想中に、「あ、今、弦を締めすぎているな(力んでいる)」、「緩みすぎて音が鳴っていないな(ぼんやりしている)」と気づくこと自体が、すでにマインドフルな実践になっているのです。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪


























