- 今すぐやらなければいけないことがあるのに、スマートフォンに表示される情報が気になって注意力が散漫になる。
- 忙しすぎる職場で時間に追われたり、同時に複数の仕事をこなさなければならなかったりすることにストレスを感じる。
- 相手の言動についイラっときたりカッとなったりして、衝動的に行動したことで結果的に最悪の事態を招いてしまう。
- スポーツであれ試験であれ車の運転であれ、予想していなかった想定外の状況が訪れると、不安や恐怖を覚えたりすることで、いつものパフォーマンスを発揮できない。
そしてそのことで、やがて思いもよらない不運が訪れ、今日という日がツイていない曇った一日になる……。
心理的なストレスを感じたり、注意力が散漫になったりすることで「不運」を味わうことは、私自身がこれまでに何度も経験してきたことですが、しかしこのような場合は、「たまたま運が悪かった」というよりも、一つ一つの出来事に対して冷静に判断し、適切な選択・行動を出来なかったという点において、メンタルの問題、別の言い方をすれば、脳の働かせ方の問題なのです。
すなわち、前々回述べた(精神科医アンデシュ・ハンセンのいう)「スマホ脳」であれ「ストレス脳」であれ、「運が悪い」を変えるためには、脳の働きに注目すべきであると私自身は考えます。
このような「運」と「脳」の関係について、心理学・神経科学を専門とするバーバラ・ブラッチュリー教授が、『運を味方にする 「偶然」の科学』(栗木さつき 訳)のなかで言及していることは特筆に値します。
私たちが行動するすべて、自分にできると思う行動のすべては、脳が活動しているからこそ可能になる。これまで考えてきたこと、これから考えるであろうこと、大切に思っていること、これまで胸に抱いてきたあらゆる期待、恐怖、希望といったものも、脳が機能していればこそ生じる。そしてまた、自分は運がいいとか悪いとかいう、奇妙で風変わりな感覚もまた、脳の機能のなせるわざなのだ。
(バーバラ・ブラッチュリー『運を味方にする 「偶然」の科学』 栗木さつき 訳 141頁)
またバーバラ・ブラッチュリー教授は同書のなかで、「注意」について、以下のように述べています。
「運がいい」こと、「運がいいと感じる」ことは、脳の注意システムがよく調整されていることを意味するのかもしれない。人生で幸運に恵まれているように見える人たちは、不運な人たちとは違う方法で、周囲の刺激に注意を払っているのかもしれない。
(同 203頁)
注意は認知のプロセスのひとつで、目標を達成するために私たちがほぼ継続しておこなっている一連の行為だ。世界のどこかに「注意を払っている」とき、私たちはひとつのことに集中し、ほかのことはすべて無視しようと尽力している。そして注意を払うたびに、有限の資源の一部を利用している。
ただし、注意を向ける先を漠然と分割することはできない。というのも、ある時点で資源を「使い果たす」からだ。よって現実に、電話で話しながら運転するのは危険だし、指を使ってメッセージを送るのはいっそう無謀な行為となる。どの作業もきちんとおこなえなくなるのだ――人間には複数のことを同時におこなえる注意力がもともとそなわっていないからだ。
(同 158頁)
そして「運」や「マインドフルネス」と関わる、「注意を払う」ということに関しては、「実行機能」をつかさどる、脳の前方にある「前頭葉」と呼ばれる部位が関与しているとしています。
前頭葉は脳の各領域からメッセージを受けとる。周囲の状況に関する感覚器官のすべての情報が、前頭葉に送られるのだ。前頭葉がこうした情報を必要とするのは、実行機能をつかさどっているからだ。
(同 151頁)
実行機能とは、注意、記憶、計画、抽象的思考、感情、動機づけ、適切な行動をとれば報酬を得られるといった感覚をコントロールしている。さらに、実行機能は行動を監視し、間違いを犯したり、社会的に受けいれられない(あるいは不適切な)行動をとったりすると、私たちにそう知らせる。すると、そうした行動は二度ととるまいと、私たちは衝動を抑えざるをえなくなる。
(同)
眼窩前頭皮質は、繰り返しすばやくくだすほかの複数の決断にも関わっている。たとえば、ある物とほかの物の価値を比較する、自分の行動の結果を追う、いまの状況のルールを記憶する、もう役に立たないルールから新たなよりよいルールへと切り替える、感覚系から伝えられた情報を記憶する、などだ。こうしたはたらきをまとめて実行機能と呼ぶ。
周囲の世界に対してどんな行動をとるかを導き、計画を立て、目標を達成するために行動を柔軟に調整するのは、すべて実行機能の指揮のもとにおこなわれる。
(同 230-231頁)
特に脳の背外側前頭前野は、「実行注意」という機能に関わっているとも述べています。
背外側前頭前野は実行注意という機能に関わっている。実行注意は自発的なものだ。実行注意をコントロールするからこそ、どこでどのように行動を起こすかを決めていく。実行注意を活用するのはたいてい目標を達成するためで、それはトップダウン方式でおこなわれる。反対に、ボトムアップ方式で向ける注意は、外界で起こった出来事や刺激がきっかけになる。
(同 158-159頁)
このあたりのことは少し難しいかもしれませんが、このように、たとえ「運が悪い」と感じさせるような逆境に立たされる前に、もしくは立たされても、いつものようにパフォーマンスを発揮できるようにするためには、「実行機能」をつかさどっている脳の前頭葉の働きが重要になってくるのです。
そして実行機能をきちんと働かせるためには、マインドフルネス瞑想の日々の実践が有効なのです。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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