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認知症やアルツハイマー病に関しては、40代から日頃の生活習慣に気をつけ予防していくことが何よりも大切です。
今回は、アルツハイマー病の原因「アミロイドβ」はなぜ蓄積してしまうのかということについてです。
厚労省は2025年には、高齢者の20%に当たる約700万人が認知症になると推計していますが、そもそも「認知症」とは何でしょうか?
「認知症」とは病名ではなく「状態」であり、原因には、脳の病気、外傷、感染症、薬剤の影響など、様々なものが挙げられます。
つまり「いったん正常に発達した脳の神経細胞が、外傷や感染症、血管障害などさまざまな病気や原因によって損なわれ、障害を受けたときに起こるもの」なのです(注1)。
その認知症には、脳血管性認知症やレビー小体型認知症などがありますが、日本における認知症のうちの6~7割を占めるのが、アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー病)であるといわれています。
アルツハイマー病とは、二十世紀の初めに、ドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー博士によって発見、報告された、「脳が委縮し、老人班と神経原線維変化という病変が起きている認知症であり、やがて症状が進行し、最終的には死に至る」ものであるとされています(注2)。
アルツハイマー型認知症では、脳の神経細胞の外側にアミロイドβというたんぱく質が沈着した、老人斑というシミのような異常構造が多く見られます。老人班ができたあとで、神経細胞のなかに異常な繊維が蓄積する神経原線維変化と呼ばれる病理変化が見られ、神経細胞が死んでいきます。アミロイドβの蓄積が始まってから十~十五年以上かけて、認知症はゆっくり進行するといわれます。ただし、アミロイドβが蓄積しても、認知症が発症しないこともあります。
(長谷川和夫『ボクはやっと認知症のことがわかった』 47頁)
アルツハイマー病の原因「アミロイドβ」とは何か?
アルツハイマー病の原因はまだはっきりと解明されていませんが、一般的には、「アミロイドβ」というタンパク質が凝集することで老人斑が形成され、神経細胞が死んでいくことが問題であるとされています。
アミロイドβは、もともと正常な脳にあるタンパク質です。水溶性なので、代謝が正常に行われているときは古くなれば分解され、脳脊髄液から血液の中へ出ていって排泄されます。
ところが、まだ解明されていない何らかの理由で、作り出される量が増えたり、性質が変異して不溶性となり凝集しやすくなったりして、分解されにくくなります。すると神経細胞の周辺にとぐろを巻くように沈着し、塊となってシミのようなものを作ります。これを「老人斑」と呼んでいます。これらの段階で神経毒として働いてしまい、ネットワークを阻害し、神経細胞を死なせてしまうのです。
(新井平伊『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』 184‐185頁)
ちなみに「アミロイドβの蓄積が引き金になってさまざまな病理的変化が起き、神経細胞死が起きて認知症に至ると考える」説は、「アミロイドカスケード仮説」と呼ばれています(注3)。
ではなぜアミロイドβが蓄積してしまうのかといえば、薬学博士の西道隆臣氏によれば、アミロイドβの産生と分解のバランスが崩れてしまうからだと言います。
だれの脳でもアミロイドβは産生され、分解されています。その産生速度と分解速度のバランスが保たれていれば、一定量のアミロイドβが脳にあっても、蓄積することはありません。(中略)
アミロイドβが蓄積するか否かは産生と分解のバランスで決まる。つまり、分解系は産生系と対をなしてアミロイドβの量を決めているわけです。仮に分解系の活性が半分に減り、働きが鈍ると、産生系が2倍の速度になるのと同じくらいアミロイドβの蓄積を進めることになります。
(西道隆臣『アルツハイマー病は治せる、予防できる』 172‐174頁)
そして、「不要物であるアミロイドβの産生と分解のバランスが崩れ、アミロイドβがたまってしまうと、アミロイドカスケード仮説で説明されるようにアルツハイマー病の病理の流れが起きます」としています。
アミロイドβはなぜ出来てしまうのか?
また、アミロイドβがなぜ蓄積してしまうのかということに関しては、医師のデール・ブレデセン氏が、『アルツハイマー病 真実と終焉』のなかで以下のように述べていることは注目に値します。
アミロイドは、強力な病原体戦闘兵士だが、最終的に過剰になり、アミロイド自身が保護するために集められた、まさにそのシナプスと脳細胞を殺す。
だからこそ、認知機能の低下を防いで回復させるには、潜在的な炎症に対処し、免疫システムの病原体破壊力を最適化し、こうした病原体と何年も闘って生じる慢性炎症を減らさなくてはならない。
(デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』 山口茜 訳 81頁)
さらにデール・ブレデセン氏は、「アルツハイマー病は、脳が次の3つの代謝と毒物の脅威から身を守ろうとするときに起きる」として、以下を挙げています。
脅威1 炎症(感染、食事またはそのほかの原因による)
脅威2 補助的な栄養素、ホルモン、その他脳の栄養となる分子の低下や不足
脅威3 金属や生物毒素(カビなどの微生物が産生する毒物)などの有害物質
(デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』 山口茜 訳 54頁)
このことに関しては、自然療法医のブルース・ファイフ氏も、「アルツハイマー病患者の脳内に見られるアミロイドβは、誤りでも、たまたまそこにある何かの残骸でもなく、防護の手段としてそこにある。体の免疫系の産物なのだ」と述べています(注4)。
すなわちアミロイドβは、様々な有害物質の脅威から脳を守った結果、蓄積してしまうのであり、デール・ブレデセン氏が言うように、「問題となるのは、こうした脅威が慢性的で多数あり、執拗に続き、極めて強い場合」なのです。
今回は、アルツハイマー型認知症のアミロイドβはなぜ出来てしまうのかということについて述べてみました。
認知症やアルツハイマー病を早いうちから予防していくためには、アミロイドβが蓄積しないようにするための、食生活や運動、睡眠や瞑想といった、日々の生活習慣がやはり大切であるように思います。
注釈
注1 『ボクはやっと認知症のことがわかった』 長谷川和夫 著 KADOKAWA
注2 『アルツハイマー病は治せる、予防できる』 西道隆臣 著 集英社新書
注3 前掲書
アルツハイマー病の最上流にあるのはアミロイドβだと考えられます。これはアミロイドカスケード仮説によるものです。アミロイドβの蓄積が引き金になってさまざまな病理的変化が起き、神経細胞死が起きて認知症に至ると考えるこの説は、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子の特定を経て、世界中の多くの研究者が支持するまでになりました。(129‐130頁)
注4 『ココナッツオイルで今すぐアルツハイマー病をストップさせよう!』 ブルース・ファイフ 著 三木直子 訳 WAVE出版
お忙しい中ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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