当ブログでは令和の時代の健康と幸福について書いていますが、今回は心身を蝕む「キラーストレス」が怖いのは本当であるということについてです。
以前の記事で、ストレスは細胞内のミトコンドリアを弱らせる原因になるということや、腸内環境悪化の原因になるというについて述べましたが、その「ストレス」のうち、特に気をつけなければならないのは、「キラーストレス」です。
このキラーストレスという言葉は、NHKの特集番組で広く知られるようになりましたが、キラーストレスとは分かりやすく言えば、様々なストレスが慢性的に続いたり、重なったりすることで多くの病気をもたらし、下手をすれば命の危険にまで及んでしまう本当に怖いストレスのことなのです。
もちろん、ストレス自体は生きていくうえで避けられないものですし、程よいストレスは、自分を成長させたり、免疫系を鍛えたりするために必要です。しかし、やはりストレスは多すぎると、自律神経のバランスを崩し、がんやうつ、認知症など、様々な病気や老化の原因にもなってしまうのです。
また心理的ストレスが続くことは、体内での慢性炎症やリーキーガット症候群、長寿遺伝子であるテロメアの短縮などを引き起こす原因にもなると考えられています。
以下、NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』(NHK出版新書)からの引用です。
ストレスを甘くみてはいけないのだ。ストレスはある条件が重なると、命を奪う病の原因へと形を変えていく。私たち取材班はこのストレスを「キラーストレス」と名づけ、その正体を追うことにした。
(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p25)
いまから数万年前。私たちの祖先がもっぱら狩猟で生きていた頃、周囲には、多くの点適が潜んでいた。どう猛な動物にいつ襲われるか分からない。万一、出会ってしまったときはどうするか。命がけで闘うか、もしくは必死で逃げるしかない。このような追いつめられた場面で威力を発揮したのが、「ストレス反応」だ。
(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p27)
人間の体は危険に遭遇したとき、心拍数が増え、血圧が上がるようにできている。また、肝臓から糖が放出されて血糖値が上昇すれば、エネルギー源が全身に供給される。闘う姿勢、逃げる態勢の双方が、瞬時に準備されるのである。
このように、ストレス反応とは、私たちの祖先が「命をつなぐために進化させた大切な体の機能」だったのだ。
(同 p27~28)
現代社会に生きるわれわれが、天敵に出会って命を脅かされるような事態に直面することはまれだ。ジャングルにでも出かけない限り、猛獣に襲われることはまずない。
一方、現代では、精神的な重圧によって、扁桃体が反応するような事態が引き起こされてしまうのである。これこそ、私たち現代人を悩ませているストレス反応の正体なのだ。
(同p37)
「我慢するストレス」で心のストレス反応が強くなる。
ところで、現代社会を生き抜くためのストレス対策のポイントは、「闘争か逃走か」という、現代にまで残っている「ストレス反応」とどう向き合っていくか、ということだと思われます。
特にNHKスペシャル取材班による『キラーストレス 心と体をどう守るか』を読むと、血圧の上昇など「体」のストレス反応が強くなる「頑張るストレス」よりも、「心」のストレス反応が強くなる「我慢するストレス」が、心の病との関係において問題になってくるのが分かります。
心の病との関連で関心を集めているストレスホルモンが「コルチゾール」だ。
コルチゾールは、副腎から分泌されると、血流にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たす。役割を終えると脳にたどり着いて、脳に吸収される。これが、正常なストレス反応の流れである。
ところが、主に「我慢するストレス」状態が長い期間にわたって続き、ストレスが積み重なっていくと、コルチゾールがとめどなく分泌され続けるようになってしまう。こうなると、状況が一変する。コルチゾールが脳にあふれて、その一部をむしばんでいくのだ。まさに、ストレス反応が暴走して、ありふれたストレスが「キラーストレス」と化してしまうのである。
(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p48~49)
マインドフルネス瞑想でキラーストレス対策。
このような我慢するストレスは、下手をすると「キラーストレス」と化してしまい、うつの症状をはじめとした様々な病気を引き起こす原因になるというのですが、NHKの番組やNHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』では、そのストレスとの向き合い方として、「マインドフルネス瞑想」や「コーピング」が紹介されていました。
また書籍のほうでは、ストレス対策のための生活習慣や食習慣なども取り上げられています。
以上ここまで、心身を蝕むキラーストレスが怖いのは本当なわけについて述べてきましたが、目に見えない「ストレス」に対しては、頑張り過ぎない、無理しすぎない、ということはもちろんのこと、必要以上に怖れるのではなく、それぞれがどのように向き合っていくのかが大切であるように感じます。
なぜなら「ストレス」に対する感じ方や距離のとり方は、人それぞれ違ってくるからです。
特定の出来事に対して、楽観的に捉えることが出来る人もいれば、悲観的に考えてしまう人もいます。例えば、上司に理不尽に叱られた際、そのお叱りが自分を成長させてくれると捉えることも出来れば、単に自分を完全否定されたと思って落ち込むことも出来ます。
つまり、「ストレス」とされるものをどう捉えるかは、その人の「心」の持ち方次第なのであり、より重要なのは、物事に対する認知の仕方をどう変えていくか、なのです。
そして、その「心」の持ち方のトレーニングやキラーストレス対策として、この記事でお勧めしたいのは「マインドフルネス瞑想」の実践です。
- 「背すじを伸ばして、両肩を結ぶ線がまっすぐになるように座る」
- 「呼吸をあるがままに感じる」
- 「わいてくる雑念や感情にとらわれない」
- 「体全体で呼吸する」
- 「体の外にまで注意のフォーカスを広げていく」
- 「瞑想を終了する」
(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p185~187より抜粋)
なお、「マインドフルネス瞑想の方法」について関心がある方は、こちらの記事をご参照ください。