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普段から頭の中にイライラやモヤモヤ、不安、怒りや憎しみ、ねたみなどネガティブな感情、たくさんのやっかいごと、すなわち「脳ストレス」を抱えてはいませんか?
メンタルヘルスケアのために、今回は、『脳からストレスを消す技術』(有田秀穂 著 サンマーク出版)を取り上げ、「脳」が感じる「ストレス」とは何かについて考えてみたいと思います。
心身の健康を維持するためには、毎日の生活で生じる<ストレス>との向き合い方や捉え方が大切になってきますが、『脳からストレスを消す技術』のなかで著者の有田秀穂氏は、
本当の意味での「ストレスに強い人」というのは、ストレスを打ち負かしていく人ではありません。襲い来るストレスを上手に受け流し、自分にとって適度なストレスにコントロールできる人のことなのです。
重要なのは、その方法を知っているかどうか、それだけです。
と述べています。
また、「心のストレスの正体は、「脳が神経伝達物質を通して感じるストレス」」であるとし、そのようなストレスのことを「脳ストレス」と呼んでいます。
脳ストレスの正体とは?
ではいわゆる「脳ストレス」が生じるのはどういう場合なのでしょうか?
有田氏によれば、
- 「快が得られなくなることによって生じるストレス」
- 「自分が相手のためにと思ってしていることが、正当に評価されないことによって生じるストレス」
の二つが、脳を発達させた人間ならではの特徴的なストレスだとしています。
このようなストレスは、実は人間が発達させた脳の前頭前野の部分に関係があり、有田氏は前頭前野の三つの働きを挙げています。
共感脳
前頭前野の中心部の働き。セロトニン神経が関わる。オーケストラの指揮者のように脳全体のバランスを整えて、「平常心」をもたらすという働きをする箇所。「それ自体が何か仕事をするわけではない」が、ドーパミン神経やノルアドレナリン神経の過度の興奮を抑え、「クールな覚醒」をもたらす。
学習脳
前頭前野の外側。ドーパミン神経が関わる。報酬を前提にして様々な努力をする。何か大きなことを達成した時にご褒美としての「快」をもたらされるが、反対にその報酬が与えられないと、強いストレスを感じることになる。
仕事脳
前頭前野の外側上方。ノルアドレナリン神経が関わる。車の運転のように同時に複数の仕事を行うワーキングメモリーと呼ばれる機能をもつ。内外からのストレスが強すぎると、生命の危機や不快な状態と戦う時に分泌されるノルアドレナリンが多く出すぎてしまい、そのために脳が過度の緊張に陥り、かえってワーキングメモリーが動かなくなってしまう。
セロトニンを増やすリズム運動は、「快」が与えられないストレスに効果的。
ちなみに脳へのストレス経路は、身体の場合とは違い、脳幹のほぼ真ん中に位置している縫線核という、セロトニン神経がある場所が関わっていることが分かったそうです。
そして身体的なストレスに対しては睡眠が最も有効ですが、報酬としての「快」が与えられないストレスには、リズム運動などでセロトニンを増やすトレーニングが効果的だとしています。
たとえば太鼓を叩いたりガムをかんだりすることは、特殊な例ですが、一定のリズムで行えば、立派なリズム運動になるのだとしています。
また、深い呼吸のリズムを意識した坐禅や瞑想を行うことも効果的だとしています。
しかしながら無理に長時間、激しい運動をしようとはせず、一日に最低五分、長くても三十分程度、その日の体調や天候などに合わせて、楽しく行うことが、毎日あきらめずにリズム運動を続けるコツだと述べています。
ちなみにセロトニン神経は「神経の構造を変えられる」限られた特殊な神経であり、セロトニン神経の働きは私達の心身にたくさんの影響を及ぼしているため、
「セロトニン神経が活性化していれば、頭がクリアになり、元気がみなぎり、心は安定し、ストレスや痛みに強く、姿勢や表情も引き締まる」
ので、いいことずくめだと有田氏は述べています。
脳ストレスを無くすために特に大切な「共感脳」。
「共感脳」「学習脳」「仕事脳」のうち、脳ストレスを無くすために有田氏が特に重要視しているのは「共感脳」です。
セロトニン神経がある共感脳は、セロトニンの分泌と関わっているのはもちろんのこと、他人との「共感」や「社会性」にも関係してくるため、「セロトニン神経」を鍛えることは、自分が他人から「正当に評価されないストレス」を受け流すことにつながってくるのだと言います。
またそれだけではなく、平常心をもたらす働きもあるため、「快が得られなくなることによって生じるストレス」にも強くなるのだとしています。
そして、他人に認められないことで生じるストレスに対しては、「相手への共感を高める癒し」、「共感脳を活性化させる「涙による癒し」が最も効果的」だと述べています。
お釈迦様が「慈悲」を説いた理由とは?
ところでこの『脳からストレスを消す技術』の最初と最後の部分では、私達が感じるストレスを「苦」として、他人に対する共感を「慈悲」として捉えたお釈迦さま (ブッダ)のことが語られていますが、確かにわたし達人間が抱えるようになった脳ストレス(心の苦しみ)の問題は、大昔にお釈迦さまが示された教えと重なってくるのです。
人生は「苦=ストレス」だと知ったお釈迦さまは、出家してさまざまな苦行を行っています。そして六年後、苦行で人は救われないとして苦行をやめ、菩提樹の木の下で静かに座禅をし、悟りに至ります。
(中略)どんなに頑張っても、人はストレスに打ち勝つことはできない。これが六年間苦行を積んだお釈迦さまの結論だったのです。
ただ、お釈迦さまのすばらしいところは、それだけでは決して終わらなかったことです。
実はこのとき、お釈迦さまはもう一つ、とても大切なことを悟ります。
それは、どんな「苦=ストレス」も永遠には続かないということでした。仏教でいう「諸行無常」ですね。すべてのものは変化し変わらぬものは何もない、というのは、ストレスにも当てはまるのです。
(『脳からストレスを消す技術』14‐16頁)
他者に認められないストレスは、とても大きなものです。
この苦しみを乗り越えるとき、ポイントとなるのは、現実を「ありのまま」に見るということです。
ありのままに見るとは、「自分」と「他者」を取り除いて、事実だけを見るということを指します。「自分がしてあげたのに」とか「あの人のためを思って」という思いが切り離されていれば、その判断がどのようなものでもストレスは発生しません。
そうして自分と切り離して見たときに初めて、人は相手の立場や思いに、心から「共感」することができるのだと思います。
本当の共感には「自分」も「他者」も存在しません。ただ、同じ感情を共有した状態、それが共感だからです。
お釈迦さまが言う「特定の人ではなくみんな等しく」、そして「他者と同じ苦しみを味わうとき」というのは、自他を取り払った純粋な共感を意味しているのです。
お釈迦さまは、こうした「共感」にたどり着いたとき、その思いは「人を癒さずにはいられない救済の思いになって働く」と言います。
共感脳を激しく振るわせたとき、なぜ心から癒されるかの答えがここにあるように思います。
(『脳からストレスを消す技術』214頁)
以上今回は、『脳からストレスを消す技術』(有田秀穂 著 サンマーク出版)を取り上げ、「脳」が感じる「ストレス」とは何かについて考えてみました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます(^^♪
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