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食事や睡眠など、普段の生活習慣を見直して、認知症予防対策を始めてみませんか?
先日、アルツハイマー病の原因「アミロイドβ」はなぜ蓄積してしまうのかということについて述べましたが、今回は、脳に「ゴミ」が溜めないことがアルツハイマー病予防になるということについてです。
先日の記事では、アミロイドβは、デール・ブレデセン医師が言うように、炎症や様々な有害物質の脅威から脳を守った結果、蓄積してしまうのだと述べました。
おさらいですが、デール・ブレデセン医師は、「アルツハイマー病は、脳が次の3つの代謝と毒物の脅威から身を守ろうとするときに起きる」として、以下を挙げています。
脅威1 炎症(感染、食事またはそのほかの原因による)
脅威2 補助的な栄養素、ホルモン、その他脳の栄養となる分子の低下や不足
脅威3 金属や生物毒素(カビなどの微生物が産生する毒物)などの有害物質
(デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』 山口茜 訳 54頁)
そして、もし、アミロイドβが炎症や有害物質といった脅威から脳を守るために蓄積してしまうのだとしたら、アルツハイマー病予防のために大切なのは、やはり、脅威となるような物質が脳に入り込まないような生活習慣であると言えるのです。
認知機能の低下は、主に脳に対する3つの基本的な脅威の問題だ。炎症、脳を活性化する栄養素・ホルモン・その他認知機能を補助する分子の不足、そして毒物への暴露[薬品などの化学物質、放射線、毒素、細菌などにさらされること、またはさらすこと]。アルツハイマー病と呼ばれるのは、これら3つの脅威に対する脳の防御反応だ。
そして脅威のうち2つ、炎症と認知機能を補助する分子の欠乏は、代謝と密接につながっている。代謝とは、今度は、食事の働き、活動水準、遺伝子、ストレスへの曝露とその対応だ。
食事、活動、ストレスは、心血管の健康と望ましい健康状態の別の側面にも影響を及ぼすため、脳の健康は全体的な健康と密接に関係する。アルツハイマー病リスクを上昇させる条件―前糖尿病や肥満からビタミンD欠乏やすわりがちの生活スタイルまでーの非常に多くが、何をどのくらい食べて運動したかという結果なのも不思議ではない。
ここでよい知らせがある。炎症、脳の補助物質の不足、毒性物質への感受性を引き起こす要因はごまんとあり、だからこそ認知機能が低下する原因になる。だが、すべて特定できるし、対処可能だー早ければ早いほどいい。
(デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』 山口茜 訳 ソシム 79頁)
脳内に「ゴミ」が溜まるリスクを減らしていくことが、結果的に認知症やアルツハイマー病の予防につながる。
アルツハイマー病予防のためには生活習慣が大切であるということについて、たとえば薬学博士の西道隆臣氏は、
「私たちが日々、生活を営んでいると必ずゴミが出るのと同じように、休みなく働く私たちの脳の細胞ではゴミが出ています」
「脳細胞の内外がゴミで埋め尽くされれば、その細胞はゴミの毒にやられて死滅してしまいます」
としていますが、食事や運動、睡眠や瞑想といった生活習慣によって脳内に「ゴミ」が溜まるリスクを減らしていくことが、結果的に認知症やアルツハイマー病の予防につながると考えられるのです。
私たちが日々、生活を営んでいると必ずゴミが出るのと同じように、休みなく働く私たちの脳の細胞ではゴミが出ています。暮らしのゴミでは自治体などによる回収・リサイクルが行われているように、脳にもゴミの処理システムがあります。脳細胞が出すゴミはタンパク質の一種ですが、脳内で分泌される酵素によって分解され、血液中に流されていくのです。
ところが、脳のゴミがたまってしまうことがあります。ある要因によって、ゴミを分解する酵素が減ってしまったりその働きが弱くなったり、いわばゴミ処理システムが間に合わない状態になることがあるのです。すると脳細胞の中はゴミがたまっていき、やがてゴミに埋もれていきます。
(中略)脳細胞の内外がゴミで埋め尽くされれば、その細胞はゴミの毒にやられて死滅してしまいます。そして隣の細胞でも、そのまた隣でもいったように、細胞死が連鎖します。すると細胞死が起きた部位が担っていた脳の機能が失われてしまう。そして認知症になる。これがアルツハイマー病です。
(西道隆臣『アルツハイマー病は治せる、予防できる』 集英社新書 11‐12頁)
睡眠が脳に溜まったゴミをキレイにする。
そして「ゴミ」が溜まるリスクを減らしていくためには、毎日、十分な睡眠時間を確保することが必要です。
睡眠には、昼間壊れたタンパク質を老廃物として脳から除去するといった、清掃としての働きがあります。また睡眠は記憶の保存に重要な役割を果たしています。
したがって、認知症やアルツハイマー病を予防するためには、睡眠を軽視することなく、ぐっすりと眠れるよう睡眠の質を良くすることが大切です。
実際、睡眠不足や不眠に陥ることはアルツハイマー病と関連づけられています。
たとえば、神経科学者のダニエル・レヴィティン氏が、適切な睡眠をとるとアミロイド沈着物が脳外に排出されますが、睡眠不足に陥ると、アミロイド沈着物は除去されないと述べているように、慢性的な睡眠不足はアルツハイマー病につながっていくとされているのです。
アルツハイマー病は、ある種のタンパク質であるアミロイドが脳内に蓄積されて、ニューロンの間に集まって塊を形成し、それが細胞の機能を破壊することで発症します。修復効果のある適切な睡眠をとると、脳脊髄液の働きでこうしたアミロイド沈着物が脳外に排出されます。持続時間の短い、もしくは質の悪い睡眠で睡眠不足に陥ると、これらのアミロイド沈着物は除去されず、睡眠を司る脳の領域を選択的に攻撃しがちになります。その結果、睡眠がさらに困難になり、その結果、アミロイドの除去がさらに困難になります。眠りを奪い、記憶を消滅させる悪循環です。
(ダニエル・J・レヴィティン『サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方』 俵晶子 訳 アルク 319頁)
また、デール・ブレデセン医師は、『アルツハイマー病 真実と終焉』のなかで、「睡眠」について以下を挙げています。
1.脳の細胞構造を変化させ、洗浄可能にする。細胞外空間と呼ばれる、脳細胞の間の空間は、睡眠中に膨張し、より多くのカルシウムイオンとマグネシウムイオンが、そこを通って流れる。海岸線をすり磨く潮の流れのように、これはアミロイドを含む細胞破片を洗い流すと考えられている。
2.睡眠はまた、アミロイド形成の減少と関連している。
3.寝ている間は、ものを食べない。空腹はインスリン感受性を改善する。
4.睡眠中、脳細胞は自食作用を活性化する。損傷したミトコンドリアや、異常な折り畳み構造のタンパク質などの細胞部品をリサイクルする「自己摂食」プロセスが、細胞の健康状態を改善する。自食作用がなければ、細胞は機能不全の部品をため込んでしまう。これは使い古しの電池で、すべてのデバイスに電力を供給するようなものである。あなたの細胞には新鮮な電池と新しい部品が必要なので、眠る必要がある。
5.睡眠は修復の時間でもある。成長ホルモンは睡眠中に増加し、細胞を修復し、睡眠中に発生する多くの修復過程の中で、新しい脳細胞が産生される。
(デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』 山口茜 訳 209頁)
このように、細胞を修復し、脳のゴミを減らすためにも、十分な睡眠時間の確保は必要不可欠なのです。
本当に大事なことだけに集中することも大切。
今回は、認知症・アルツハイマー病予防のカギは、日常の「ゴミ」を減らすことであるということについて述べました。
「睡眠」以外にも、もし深刻な悩み事があったり、毎日忙しすぎることで精神的なストレスを感じたりしているのであれば、脳を守るために、あえて外の景色を眺めるなどしてぼんやりとする時間を作ったり、瞑想したりすることもオススメです。
また、「ゴミ」を少なくするということに関しては、現代社会の多すぎる情報に対して注意を払うことも必要になってくるように思います。
特に現代はIT技術の普及によって、様々な情報にパソコンやスマートフォンで簡単にアクセスできるようになった一方、商品のコマーシャルや芸能人のゴシップ、政治のフェイクニュースなど、生活するために本当に必要ではない情報が溢れています。
さらに、誰もが気軽に情報発信を出来る時代になったこともあり、世の中には「玉石混交」とも言うべき様々な情報が溢れていますが、インプットするのは、自分の人生にとって本当に重要な情報だけにし、自分がやりたいこと/興味があることに専念することも、脳に「ゴミ」を溜めないために有効だと思われます。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪
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